18.戦力補強
「うおぉぉっ!」
お兄様が襲い掛かってくる魔物を次々と殴り飛ばす。どの魔物も一撃で仕留めることが出来て、村周辺の魔物の駆除は進んでいった。
だけど、数が多い。こんなにも潜んでいたなんて驚きだ。
「ギャーッ!」
「グギャーッ!」
「ギギーッ!」
「うわっ!? まだ、来るのか!? く、くっそー! やってやる!」
数の多さに、魔物を倒しているお兄様も引き気味だ。それでも、やる気を絞り出して魔物を次々と倒していく。
その様子を見ながら、思案する。このままだと、お兄様が持たない。そうなれば、私が出ればいいのだが、私が出たとしても、次々と魔物が現れるからキリがない。
たった二人の戦力では、村の安全を確保するには無理がある。
「うーん、何か手はないかな……。このままだと、こっちがへばっちゃう……」
『確かに……ずっと戦うのは大変だよ。人数が足りなすぎる……』
「じゃあ、村人を戦えるように鍛える? それだと、村の発展が遅れるんだよね……」
百人程度しかいない村だ。その中から、戦える人を作ろうと思えば、人手が足りなくなって村の発展が遅れる。そうなれば、村を発展させて人を呼び込むのが遅れ、ミリアたんの信仰が集まるのが遅れてしまう。
どうする? このまま、お兄様と私だけで魔物の駆除を進めるべきか。それとも、人手を増やすべきか。どちらとも、欠点はある。出来れば、欠点のない選択肢を選びたいところだけど……。
「そうだ、魔物を手なずければ」
駆除対象の魔物を味方につけて、魔物が魔物を駆除する方法にもっていければ欠点はなくなる。うん、この方法はいけると思う。
「じゃあ、知能の高い魔物は……。この中じゃ、狼系の魔物が知能が高かったかな?」
狼系の魔物は群れで行動し、その群れを率いるボスがいる。みんなボスの言うことなら聞いているから、そのボスに自分がなればいいのではないのだろうか?
そうすれば、その群れは私の思うがまま。指示をすれば従ってくれる兵士そのもの。
「よし、狼系の魔物を従わせよう! と、なれば、私がボスの姿にならないといけないね! ミリアたん、力を貸して!」
『話がまとまった? なら、力を解放するよ』
ミリアたんに向かって祈ると、ミリアたんが光りを放つ。その光りが私に放たれると、私の体が光る。この力を使って、狼のボスの姿に!
イメージをすると、体が変わっていく。ふわり、と光が広がる。次の瞬間――ぐにゃり、と自分の体の輪郭が歪む。
「……っ!」
骨が軋むような、不思議な感覚。痛みはないけれど、体の中を何かが組み替えられていくような違和感が広がる。
腕が伸びる。指が縮み、鋭い爪へと変わっていく。背骨がしなり、姿勢が自然と前傾になると、視界の高さがぐん、と上がった。
さらに――ぶわっ、と灰色の毛並みが全身を覆っていく。
「おぉ……っ」
思わず声が漏れた。けれど、その声は少し低く、響くような音に変わっている。振り返ると、長く大きな尾がゆらりと揺れた。
四肢はしなやかで力強く、地面を踏みしめるたびにしっかりとした手応えが伝わってくる。体はお兄様にも負けないほど大きくなり、森の木々と並んでも見劣りしないほどの巨体だ。
『わぁ……! ちゃんと狼のボスっぽい!』
「うん……これは、かなりいい感じかも」
自分の体を見下ろしながら、そう呟く。これならば、きっと狼の魔物が従ってくれるに違いない。
「シア、凄いな! 狼になっちゃったぞ!」
「お兄様、作戦変更。狼の魔物を従わせるよ」
「分かった! 手伝うぞ!」
これで準備は整った。私たちはその姿で森の中を駆けていった。
◇
「うりゃぁぁ!」
「ガウッ!」
お兄様が拳で群れのボスを叩くと、私が止めに喉笛を噛み切る。すると、群れのボスは力尽きてその場に倒れた。
「ウゥッ!」
「グゥッ!」
「ウゥッ!」
すると、周囲にいた狼の魔物がしっぽを丸めて怯え始めた。それもそうだ、簡単にボスが倒されたのだから。
この様子なら、従わせるのは可能かな?
『ボスは私たちが倒した! よって、お前たちは私の物になる!』
『……ど、どうする気だ。俺たちを食う気か?』
『私の言うことをちゃんと聞いたら、殺さずに生かしてやる。どう? 言うことを聞く?』
『ボスを倒した奴の言うことだ、ちゃんと聞く』
よし、どうやらちゃんと従ってくれるようだ。これならば、村の警護に使えそう。
『これから、お前たちには村の人間を守る仕事を与える。村の周りに蔓延っている魔物を駆除する役目だ』
『そ、そんなのでいいのか? だったら、受けよう』
『だが、この数では心もとない。だから、この群れをもっと大きくする』
その言葉に狼たちは驚いて、喜ぶように声を上げた。
『群れが大きくなるのは歓迎だ。仲間が増えるのは、群れが強くなるということ』
『じゃあ、他の群れの所に案内する。もちろん、新しいボスが群れのボスを倒してくれるんだよな?』
『もちろん、私に任せて!』
そういうと、狼たちはいきり立つように遠吠えを上げた。よし、この群れのボスになったから、ちゃんと言うことを聞いてくれる。
『シアさん、どうなったの?』
「この狼たちは言うことを聞いてくれることになったよ。そして、この群れを大きくするために、他の群れのボスを倒すことにした」
「そういうことか! だったら、俺も手伝うぜ!」
「じゃあ、行こう!」
私が歩き出すと、その後ろからミリアたんとお兄様がついてくる。そして、その後ろからは新しい下僕なった狼たちが付き従ってくれる。
この調子で戦力を蓄えるぞ!




