16.豊かになった弊害
「なぁ、シア。どこに行くんだ?」
「これから、村人に祈りを捧げるように言ってくるの」
「祈りなら、毎日しているんじゃないか?」
「足りなくなったんだよ」
「へー」
私が屋敷から出ようとした時、お兄様に見つかってしまった。暇だったのか、そのまま私に着いてきてしまった。
まぁ、邪魔をしなければ、着いてくることは問題ではない。お兄様も大事な戦力だ。戦力は一人でも多い方がいい。
そうして移動をしていると、畑仕事をしている村人を見つけた。でも、何人も集まって深刻な顔をしている。
「ねぇ、どうしたの?」
「あっ、シア様とセント様じゃないですか。お散歩ですか?」
「ううん、みんなに協力して欲しいことがあって来たんだけど……どうしたの?」
「それが……畑を荒らされましてね」
どうやら、問題が起きていたようだ。畑を見てみると、確かに無理やり掘られたり、育っている途中の作物が折られたりしている。
「どうして、こんなことに?」
「多分ですが、ここに食べ物があると分かった魔物が来ているんじゃないかと思うんです」
「……そっか。もう、周辺にいる魔物には感づかれちゃったか」
農作物が育っていくといずれこんな問題が出てくると思っていた。何もなかった荒地に食べ物が育つと、周辺にいる魔物がそれに気づき、強奪しに来る。
ただ強奪すれば食べるものが手に入るのだから、簡単に畑に入ってしまうのだろう。だが、それだとこっちが困る。
「それで、どうしようかと悩んでいたところなんです。どうすれば、いいですかね?」
「それよりも、信仰ぅモゴモゴォッ」
『ちょっ、シアさん!』
口を開こうとすると、ミリアたんに口を塞がれた。そして、村人に離れるように引っ張られる。
「ど、どうしたのミリアたん。今、とても重要な話を」
『今、信仰の話をしようと思っていたでしょ』
「そりゃあ、それが大事だから」
『今はそんなことよりも、村人の困りごとを解決するのが先決だよ』
「私にはミリアたんの方が先決だよ!」
『もう、シアさん! それはダメ!』
あっ……ミリアたんに怒られた……。
「ご、ごめん……。私が悪かったよ……。許して……」
『わ、分かってくれればいいんだよ。とにかく、今の状態じゃ信仰は集まらないと思うよ。困り事があった時に祈られても、そっちに気取られちゃうから』
そ、そうか……。今の状態で祈りを捧げても、信仰が集まらないのか。だったら、やることは一つだ。
「じゃあ、私がこの困りごとを解決させればいいんだね」
『そういうことだよ。でも、シアさんが解決出来る? 相手は魔物だよ?』
「大丈夫。ミリアたんの力は魔物にも対応可能だから」
『そ、そうなの? あんまり、パッと思い浮かばないけど……』
イメージするだけで好きな形に変えられる。自分の体も筋肉隆々に変えられたし、もっと他のことが出来そうだ。
異世界ならではの魔法が使えるようになったり、現代の最新鋭の武器が使えるようになったり。イメージ次第で色んな物に変えられるんじゃないかな?
それだけ、ミリアたんの力は万能だということだ。やっぱり、ミリアたんは凄い! 可愛くて尊くて素晴らしい神様!
「なー、なー! 俺も行っていいか?」
「お兄様は危ないのでダメ」
「それを言ったらシアだって危ないじゃないか。ここは兄として妹も守らないとな!」
「どうやって、守ってくれるの?」
「それはもちろん、ミリア様の力を使って!」
……ん? お兄様にその素質があるということ?
「本当に出来るの?」
「出来る! シアの真似をすることにした!」
「ほう……私の推し活は誰にも真似できないはずだけど?」
「大丈夫! イメージが出来たから! 今度こそは、巨人になってみせるんだからな!」
ここまで大きく出るとは、相当な自信があるみたいだ。まぁ、ミリアたんを強く信仰するのは歓迎すべきことだ。
「めちゃくちゃ、ミリア様を讃えるから、みておけよ! きっと、シアよりも上手に出来るぞ!」
「……まぁ、今まで以上に強く信仰してくれるならいいよ。だけど、ガチ恋だけはいけない。許されない。した瞬間、抹殺する」
「ガチ恋ってなんだ? 良く分からないけれど、シアが嫌ならガチ恋はしない!」
「約束だよ。破ったらお仕置きだからね。命賭けれる?」
「約束は守る! 命も賭けれる!」
……まぁ、そこまでいうんなら信用してもいいかな。とにかく、ガチ恋勢は生み出さないようにしないと。
「じゃあ、村を囲んでいる森を調査にしいこう」
「おう!」
『気を付けてくださいね』
ミリアたんの気遣いが骨身に染みる! ここは、問題を解決して、早く信仰が集まるようにしなければ!




