12.最後は着る物
衣食住の食と住の問題は解決した。という訳で、最後の衣に着手する。
「シア。言われた通り、綿の種を取り寄せておいたよ」
「お父様、ありがとう! これで、服が作れる!」
「えっ? で、でも……綿を育てただけじゃ服にはならないわよ?」
「それも問題ない。ミリアたんの力を使えば、服の製造も出来る!」
「ミリア様の力ってそう言うことも出来るの!? でも、俺は体が大きくなるのがいいな!」
とうとう手に入った、綿の種。ミリアたんの力は無から有は生み出せない。だけど、物があれば何でも作り出せるということだ。
だから、服の材料させ手に入ってしまえば、ミリアたんの力を使って、自由に服を作り出すことが出来るということだ。
「早速、新しい畑を起こして、綿の種を植えなきゃ!」
「いやぁぁっ! シアがまたあんな化け物になるのは、嫌ぁぁぁっ!」
「俺も! 俺も、あれになりたい!」
「ま、まぁ……ほどほどにしてくれ……」
うん、家族の了承も得たし、村人を集めて畑をこしらえないと! 私はミリアたんを連れて、外へと出ていった。
◇
それから村人たちを集め、綿を育てるための畑を用意させた。荒れ果てた土地の前に整列させ、まずは全員でミリアたんへ祈りを捧げる。
その後で、作り変えてもらった身体で一気に耕す。鍬を振るうたび、土がぽんぽんと軽く跳ねる。昨日までまともに力も出せなかった人たちが、見違えるように動いていた。
ちゃんと強くなっている。ミリアたんの力は、きちんと届いている。けれど、やっぱり少し物足りない。
確かに強化はされているが、私の時と比べるとだいぶ控えめだ。せいぜい、少し元気になった程度に留まっている。
原因は分かりきっていた。信仰が、足りない。
にこにこと様子を眺めながら、内心で小さくため息をつく。どうにも祈りが甘い。気持ちの込め方が足りていない。
もっとこう、全部差し出すくらいの勢いでいかないといけないのに。ミリアたんは、そんなに難しいことを求めているわけじゃない。ほんの少し、心を預けるだけでいいのに。
そう、ほんの少しでいい。あの日の私みたいに。
全部を諦めて、死のうとしていたあの瞬間。ミリアたんが軽く手を差し伸べてくれただけで、あっさりとひっくり返った。
それまでの価値観も、絶望も、全部まとめて。だからこれは、特別でもなんでもない。やれば出来ることだ。
ただ、まだ知らないだけ。だから、教えてあげよう。ちゃんと分かるように。ちゃんと理解できるように。
ミリアたんがどれだけすごい存在なのか。信じることで、どれだけの力を得られるのか。優しく、丁寧に。逃げられないように。だって、それが一番の近道なのだから。
胸の奥が、じんわりと甘く熱を帯びる。やっぱり、これは特別だ。私とミリアたんの関係は、きっと最初から決まっていたもの。運命とか、そういうやつだ。
他の誰にも触れられない、汚せない、絶対のもの。ミリアたんは、私のもの。その事実に満足するように、小さく頷く。
だからこそ、この素晴らしさは広めないといけない。この力を、この結果を、この光景を。しっかりと、その目に焼き付けさせてあげる。
この身で、この力で。きちんと、分からせてあげるために。
◇
そして、私が一歳になる頃――種は成長し綿になった。ついでに植えた、染色に使う花も立派に育っている。
「おぉ! 本当に出来ている! これも、ミリア様のお陰!」
「あぁっ! ミリア様、ありがとうございます!」
「ミリア様のお陰で今日も生きていけます!」
みんなが畑を見てミリアたんに感謝を捧げる。うんうん、そうやって小さなことでもミリアたんに感謝を捧げるようになって本当に良かった。これも、私が地道にミリアたんの布教をしたお陰だ。
以前はまだ信仰が浅かったが、今ではそこそこ深く信仰出来るようになっていた。だけど、まだ足りないけどね。まぁ、それは今は置いておこう。
「じゃあ、これでみんなの服を作るね」
「とうとう、私たちも新しい服が着れるのね!」
「わくわくするな!」
「シア様、よろしくお願いします」
村人はとても嬉しそうな顔をしていた。これで、もっと信仰が集まってくれる。そう、確信出来るものだった。
「じゃあ、作るよ。ミリアたん、祈っても大丈夫?」
『うん、大丈夫だよ。少しは私も成長したから、強くても大丈夫!』
そうはいうけれど、全力でやるのは控えよう。ミリアたんの体が心配だから。
そうして、ミリアたんに向けて祈りを捧げる。ミリアたんの体が光り、その光りが私に向かって放たれる。
イメージするのは綿を糸に、糸を布に、糸を染色して布へ、そして最後に服に作り変える。しっかりとイメージが出来ると力を解放した。
「服になれ!」
すると、綿と花が光って一か所に集まる。光りはうにょうにょと動き続けていく。そうして、その光りが次々とひらひらした物が生み出されていった。
それから光りが収束すると、山のような綺麗な服が仕上がっていた。
「ほ、本当に服が出来たぞ!」
「流石、シア様だ!」
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
出来上がった服を見て村人は歓声を上げた。そして、服を手に取って嬉しそうな顔をした。
『シアさん、お疲れ様。凄いね、本当に服が出来上がったよ』
「これも全部、ミリアたんのお陰だよ。流石ミリアたん!」
『そ、そんな……私一人だとここまで出来ないよ。シアさんのお陰でもあるんだからね』
あぁっ! ミリアたんの謙虚な姿勢が心に刺さる! そう言うところが、好きなんだぁっ!
「こほん。みんな、新しい服が出来たのもミリアたんの素晴らしい力があったからだよ。だから、ミリアたんに感謝を示して」
「ありがとうございます、ミリア様!」
「あなた様がいなかったら、今頃飢えに寒さに震えていました!」
「普通の生活を営めるのはミリア様のお陰です!」
すると、ワッとミリアたんの周りに集まって讃え始めた。うんうん、大分ミリアたんに染まってくれた。お陰で、ミリアたんには信仰が集まっている。
豊かな生活になれば、信仰が集まる。これは間違いなかった。でも、思ったよりも深い信仰が集まらなかった。きっと、まだまだ足りないんだ。
信仰の深さも必要だし、もっと沢山の人が必要だ。それを集めるために、もっと騎士爵領を豊かにしなくては!
ミリアたんのため、もっと頑張るぞ!




