10未来への道
それから私たちは友人になった。私はオクレールくんを見つける訓練をしている。オクレールくんを見つけるのは難しい。けれど、不可能ではなかった。
「暑くなりましたね……」
「ああ。暑いな」
暑いのは苦手だ。汗をかきやすい。
「あ、そうそう。私の兄にね、今回の顛末を手紙で話したんです。そうしたら、オクレールくんに会いたいって。……だめ、ですか?」
私たちはよく行動を共にするから、自然と共有する話も多い。私の話題にはよく兄の話が出るから、オクレールくんは私の兄がどういう人柄か知っているだろう。
怖い人ではないはずなのに、オクレールくんは真っ青になっていたから不思議だ。
兄が実は重度のシスコンで、どんな報復をされるのか、オクレールくんはドキドキしていたことを知るのは、ずっと後の話である。
「あ、ああ。問題…ない」
「そうですか!良かったです」
私は息をついて笑い、ひとつ提案をした。
「それでですね?オクレールくんが兄と友人になったら、スクローさんが二人なんですよ。ややこしいでしょう?だから、私をベルって呼んでください」
「は、………あ゛!?」
やっぱり変なことを提案してしまったのかと落ち込めば、オクレールはあわてて取り成してくれる。
「あーいや、嫌な訳じゃなくてだな?ああもう面倒だ。―――ベル。これでいいか」
名前を読んでくれた。これで、親友への道を、一歩踏み出した!
それにしてもオクレールは顔が真っ赤だ。暑いのかとも思ったが、彼はこんなに暑いのに先ほどから汗をかいていない。
「………。冷たい!」
手を伸ばしてむき出しの腕に触れる。思わぬ冷たさに、私はそれに張り付いた。
「なんですか!これ?魔法?涼しい!」
「ちょっ、離れろよ!あ、当たる」
当たる?私は首を傾げたが、考えるのを放置した。こんなに暑いんだ。涼むのが最優先だから。
そのうちに、目的地のアスタリスク先生の研究室にたどり着いた。
「こんにちは」
部屋に招き入れられれば、空気の冷たさに歓喜する。アスタリスク先生も魔法を使っているらしい。
夏でも暖かい薬草茶をいただきながら、のんびりしていたら、唐突にドアを開けられた。
「失礼します!ここに存在値を低くできる人がいると聞いたんですけど、ご指導をおねが………ってベルリナ!?」
私は血を吐いた。胸が苦しくなってくる。
「お前!なんで!」
「俺だってベルリナと面と向かって話したいんだよ!それなら存在値を制御するしかないだろ。だから!」
それが聞こえるのを最後に、私は意識を失ったのだった。
私に平凡な生活は難しいらしい。
登場人物解説
ベルリナ・スクロー
主人公、榛色の目茶髪 結構美人
ジャック・オクレール
黒みがかった青い目黒髪 影の薄いイケメン
アスタリスク・エニア
翠の目金髪 優しげな美形
ルスレー
金髪茶眼 きらきらしいイケメン
ルイーズ・サクストン
年齢不詳のお姉さん
ありがとうございました