表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生者失格~異世界転生したらもう死んでたんだが~  作者: ぐうたらするめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/20

第15話「勇者が剣を向ける日」

教会の審議は紛糾していた。


 リリアが奔走して蘇生派の神官を集め、レオンが勇者として意見書を提出し、ネクロミアが学術的な分析レポートを教会に送った。


 だが浄化派も強硬だった。


「特異点の存続は世界の脅威だ。境界の不安定化は事実であり、浄化による即座の脅威排除こそが最善策である」


「いや、浄化した場合のリスクが不明だ。特異点を消した場合、境界がどう反応するか予測できない。蘇生による生者側への移行が確実な方法だ」


 蘇生派と浄化派が真っ二つに割れている。票はほぼ互角。


 そんな膠着状態の中、事件は起きた。


---


 教会の巡察部隊が、町の周辺で大規模なアンデッドの群れを発見した。


 数は百体以上。通常では考えられない規模。すべて冥境から溢れ出た存在だと推定された。


「グラドゥスの仕業ですね」


 リリアが報告書を握りしめていた。


「屍王が覚醒に近づくにつれ、冥境から押し出される死者が増えている。境界の劣化が加速しています」


「俺のせいか」


「あなたの存在が原因の一端であることは否定できません。ですが、グラドゥスが意図的に死者を送り込んでいる可能性もあります」


「意図的に?」


「教会を浄化に追い込むため。『このままでは危険だ、特異点を消せ』と思わせるために、わざと被害を拡大させている可能性があります」


「姑息な死者の王だな」


---


 アンデッドの群れは、冒険者ギルドと教会の合同討伐隊によって対処された。レオンが先頭に立ち、三時間で鎮圧。さすがSSR勇者だ。


 だが、この事件は教会の審議に大きな影響を与えた。


 浄化派が勢いづいた。


---


「ポジオ」


 レオンが、夕暮れの墓地に来た。


 その顔はいつもより厳しい。手は聖剣の柄にかかっている。


「レオン。どうした」


「教会が決定を出した。蘇生審議の保留だ。保留というのは事実上の先送り。そして先送りされれば、90日の期限に間に合わない。期限を過ぎれば浄化が自動執行される」


「…………」


「つまり、教会は蘇生を選ばなかった」


「じゃあ、俺は……」


「待て。俺はまだ諦めていない。だが、一つ確認しなければならないことがある」


 レオンの目が鋭くなった。


「ポジオ。今夜、グラドゥスの声は聞こえたか」


「…………聞こえた」


「何と言っていた」


「『生者が汝を拒むなら、我の元に来い』と」


「…………」


「俺は断った。毎回断ってる」


「わかっている。だが、お前の霊核が不安定になっているのは事実だ。グラドゥスの呼びかけに応じなくても、霊核が限界を超えて崩壊すれば、お前はグラドゥスの器として取り込まれる」


「それは……」


「ポジオ。俺はお前を信じたい。だが、勇者として聞く」


 レオンが聖剣を抜いた。


 白銀の刃が、夕日を反射して輝く。


「お前が死者の側に堕ちた時、俺がお前を討つことを——許してくれるか」


「…………」


 聖剣が、俺に向けられている。


 斬るためではない。覚悟を確認するために。


「……許すよ、レオン」


「……!」


「俺がバケモノになったら、遠慮なくやってくれ。ただし」


「ただし?」


「俺はバケモノにならない。絶対にならない。お前にそんなことさせるかよ」


 レオンが聖剣を下ろした。


「……ああ。頼むぞ」


「そっちこそ。約束だからな、レオン。俺が蘇生した後、一緒に飯食いに行くんだぞ」


「飯?」


「前世では友達と飯食うのが好きだったんだ。こっちに来てから、飯を食える仲間と飯を食いに行けてない。胃がないから」


「……蘇生したら、か」


「ああ。蘇生したら、お前と酒場でメシを食う。それが俺の目標に追加された」


「ハーレムはどうしたんだ」


「ハーレムは長期目標。メシは短期目標」


「……なるほど。わかった。約束しよう」


 レオンが手を差し出した。俺はそれを握った。冷たい手と温かい手が重なった。


---


 リリアがそれを遠くから見ていた。


 俺が小屋に戻ると、リリアはいつもの無表情で待っていた。


「何を話していたんですか」


「覚悟の確認。あと、メシの約束」


「……そうですか」


「リリア。教会が蘇生を保留にしたって聞いた」


「……はい。私の力不足です」


「お前のせいじゃない」


「でも、私がもっと早く動いていれば。もっと上手く根回ししていれば」


「リリア」


「…………」


「お前は十分やった。ここまで俺が生きてるのは——生きてないけど——存在してるのは、お前のおかげだ」


「…………ポジオ」


「俺はまだ諦めない。蘇生の方法は必ずある。教会が認めなくても、俺たちで道を作る」


 リリアは少し黙った後、小さく頷いた。


「……はい。道を作りましょう」


---


 残り20日。


 教会は蘇生を保留にした。


 屍王は覚醒に近づいている。


 時間は残り少ない。


 だが俺は、まだ前を向いている。


 向いてる方向がモテであることに変わりはないが。


---


第15話「勇者が剣を向ける日」 ― 了


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ