↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/17

第8話:二度目の過ちと、断罪の足音

第8話をお読みいただき、ありがとうございます!


帝国が再び強行する禁忌の儀式と、それに犠牲にされる新たな少女。

そして、すべての因果を断ち切るために帝都の中心へと歩みを進める偽勇者とセレスティア。

人間の身勝手なエゴが最高潮に達する中、破滅の幕が上がります。


それでは、第8話をお楽しみください。

帝国の宮殿の地下深くに設けられた『禁忌の祭壇の間』。

そこは、ダマシテ王国の悲劇が起きた場所と酷似していた。床一面には血塗られた魔法陣が描かれ、数多の魔導士たちが汗を流しながら詠唱の声を張り上げている。


冷たい石の床の上には、一人の少女が縛り付けられていた。

名をルリエル。帝国が別の小国から強制的に連行してきた、わずか十歳の王族の血筋を持つ少女だった。彼女の瞳には恐怖と涙が溢れ、震える声で助けを求めている。


「やめて……! 私は何もしていない……! どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないの……っ!」


その泣き叫ぶ声を聞きながら、皇帝グラハムは顔を引きつらせ、しかし我が身可愛さに冷徹に目を背けた。

彼の傍らに立つ最高魔導士長は、冷や汗を流しながら杖を高く掲げている。


「陛下、魔力回路の接続が完了しました! これより二度目の勇者召喚の儀式を強行します! この生贄の純血な魔力があれば、今度こそ完璧な救世主が降臨するはずです!」


「そうだ……! 我々を救うためだ、泣くがいい! お前の命の代わりに、この大帝国と世界が救われるのだからな!」

グラハムは自らの恐怖を押し隠すように叫び、魔導士たちに合図を送った。


空間が激しく歪み、地下全体が轟音を立てて揺れる。

魔法陣から眩い光が噴き上がり、新たな「勇者」が降臨しようとするその瞬間――。


――ガシャアアアアアンッ!!


宮殿の重厚な鉄の扉が、凄まじい衝撃とともに内側から粉々に吹き飛んだ。

天井の石造りがひび割れ、圧倒的なまでの殺気と呪いの瘴気が祭壇の間へと雪崩れ込んでくる。歓声を上げようとしていた魔導士たちの喉が、恐怖でピタリと詰まった。


「な、なんだ……!? 何が起きた!?」

グラハムが青ざめながら叫んだ。


砂煙の晴れた入口に立っていたのは、全身に呪いの鎖を纏った漆黒の偽勇者と、その背後に静かに従う少女――セレスティア・ミステだった。


セレスティアは、祭壇の冷たい床に縛り付けられているルリエルを見て、小さく目を伏せた。

あの時、自分も同じように縛られ、ダマシテ王国の人間たちに冷酷な目を向けられていた。あの恐怖と絶望が、痛いほどによく分かる。


「また……同じことをしているわ」

セレスティアの呟きには、怒りよりも深い冷徹な呆れが満ちていた。

「自分たちが生き残るために、何の罪もない子供を生贄にし、平然と犠牲を強いる。あの時と、何も変わっていない」


――人間とは、そういう生き物だ

偽勇者の低い声が、脳内に響く。

――何度過ちを繰り返そうとも、己のエゴを優先し、他者を踏み潰すことをやめない。だからこそ、救う価値などないのだ


「ええ、本当にそうよ」

セレスティアは真っ直ぐに前を見据えた。

「だから、ここで終わりにして。この世界から、こんな醜い仕組みをすべて消し去ってちょうだい」


偽勇者がゆっくりと一歩を踏み出した。

その足音が響くたび、帝国の最高魔導士たちが恐怖のあまり杖を取り落とし、次々と床に倒れ伏していく。


「ま、待て……! 待ってくれ……っ!」

グラハム皇帝は玉座から転げ落ちるように後ずさり、血走った目で叫んだ。

「我々は帝国だ! 人類の秩序を司る最高峰なのだぞ! お前を召喚したのはダマシテであって、我々ではない……! だから、見逃してくれ……財宝も、権力も、望むものは何でも与える……!」


その往生際の悪い姿は、ダマシテ王国のガルド王と一ミリも変わらなかった。危機に陥った途端に高潔さを投げ捨て、命乞いをし、他人に責任を押し付ける。


――見苦しいな


偽勇者が冷徹に呟いた。

次の瞬間、漆黒の刃が閃き、帝国軍の精鋭騎士たちが構えていた剣ごと、その身体が綺麗に両断された。鮮血が祭壇の聖なる床を真っ赤に染め上げる。


セレスティアは怯えることなく、祭壇の端で縛られているルリエルのもとへ歩み寄り、その手で拘束の魔力を断ち切った。

「もう大丈夫よ。……もう、誰もあなたを生贄になんてさせないから」

セレスティアが優しく微笑むと、ルリエルは怯えながらも彼女の衣にしがみついた。


帝国の栄華と、身勝手なエゴの象徴である祭壇は、今まさに、すべての因果を清算する「断罪の場」へと変わろうとしていた。

第8話までお読みいただき、ありがとうございます!


帝国が再び強行した儀式の現場に、偽勇者とセレスティアがついに踏み込む展開となりました。

恐怖に怯えながらも命乞いをする皇帝の姿と、かつての自分を重ねるセレスティアの対比が物語をよりドラマチックに彩ります。


それでは、第9話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。