↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/17

第7話:帝都への道程と、深まる共犯関係

第7話をお読みいただき、ありがとうございます!


帝国が次の生贄集めに奔走する一方、偽勇者とセレスティアはいよいよ世界の中心である「帝都」へと近づいていきます。

罪深き為政者たちがどのような終焉を迎えるのか、そして二人の間に芽生えた奇妙な共犯関係の深まりを描きます。


それでは、第7話をお楽しみください。

巨大商業都市ラヴェンナが地図から消え去ったという事実箱、もはや隠し通せるものではなかった。

大陸全土に走った衝撃は、人々の心から最後の理性を剥ぎ取り、代わりに剥き出しの恐怖と狂気を植え付けた。


大国アルカディア帝国の首都『グランド・アルカディア』。

普段であれば、純白の城壁と黄金に輝く尖塔が並び、帝国全土から集まった富と権力が交錯する華やかなる中心地――しかし、今の帝都は異常なまでの殺伐とした空気に包まれていた。


大通りには帝国軍の兵士たちが大量に動員され、市民たちの通行が厳しく制限されている。

「――お前たち、聞いているのか! 南方諸国から『生贄』となる王族を乗せた馬車がまもなく到着する! 儀式の準備を急げ! わずかでも遅れれば、貴様らの首はないと思え!」


鎧を纏った騎士たちが怒鳴り声を上げ、怯える民衆を容赦なく追い立てる。

帝国は、商業都市を滅ぼした「最初の偽勇者」の接近に怯え、自らの身を守るために、またしても別の小国から王族の血筋を強制的に拉致し、二度目の「勇者召喚」を強行しようとしていたのだ。ダマシテ王国が犯した過ちの反省など微塵もなく、ただ「自分たちが助かるためなら、他者を犠牲にしても構わない」というエゴを、より大規模な国家の権力をもって実行に移そうとしていただけだった。


宮殿の最奥、黄金の玉座の間。

皇帝グラハムは冷や汗を拭いながら、最高魔導士たちに詰め寄っていた。


「ま、間に合うのだな……!? あの化け物がこの帝都にたどり着く前に、新たな勇者の召喚を完了できるのだな!?」

「はっ……! 前回のダマシテ王国の失敗データを分析し、今回はより純度の高い生贄を用意いたしました。今度こそ、真の救世主が現れ、あの偽勇者を討ち滅ぼすでしょう」


魔導士の言葉に、グラハムは必死にしがみつくようにうなずいた。

「そうだ……我々は悪くない。人類を守るために、必要な犠牲を払っているだけなのだ……!」


自分たちの罪を正当化し、恐怖をごまかすための美しい言葉を並べ立てる。その醜悪な営みが、いかに世界を呪いに満たしてきたか、彼らは最後まで気づくことができなかった。


その頃、帝都へと続く街道の丘の上から、二つの影がその街並みを静かに見下ろしていた。

偽勇者と、ミステ王国の王女セレスティアである。


冷たい風が、二人の衣服を揺らす。

セレスティアは眼下に広がる巨大な帝都の尖塔群を見つめ、どこか冷ややかな笑みを浮かべた。足元の靴はとうにボロボロになり、過酷な旅の疲労が彼女の小さな体に蓄積しているはずだったが、その瞳には不思議なほど淀みがなかった。


「……見えるわね。あそこに、次の犠牲者を乗せた馬車が入っていくのが」


セレスティアの視線の先には、帝国軍の厳重な護衛に囲まれた一台の馬車が、帝都の門をくぐっていく姿があった。

馬車に乗せられているのは、どこかの小国の、自分と同じように罪なき運命を背負わされた王族の子供に違いない。ダマシテ王国が自分の国を裏切ったように、今度は帝国が別の国を踏み台にし、同じ過ちを繰り返そうとしている。


「本当に、懲りない人たちね」

セレスティアは呟いた。その声には怒りすらない。ただ、あまりの愚かさに対する呆れと、冷徹な達観があった。


――人間とはそういうものだ。学習せず、救いがたいまでに身勝手な生き物だからこそ、滅びる運命にある


偽勇者の低い声が、セレスティアの脳内に優しく――あるいは冷酷に響いた。

この旅を始めた当初、セレスティアにとってこの男は「世界を壊すためのただの凶器」でしかなかった。しかし、共に荒野を歩き、人間の醜悪なエゴの数々を目の当たりにするうちに、二人の間には奇妙なまでの連帯感と、絶対的な信頼(あるいは共犯関係)が生まれていた。


「ねえ」

セレスティアはふと、隣に立つ漆黒の鎧を見上げた。

「私をあの時、あの地下祭壇で見逃したこと……後悔していない?」


偽勇者は微動だにせず、真っ黒な瞳で少女を見据えた。

――なぜ後悔する必要がある。お前は私と同じだ。この世界の欺瞞を呪い、その終焉を望む者なのだから


「……そうね。私はもう、かつての私じゃない」

セレスティアは自分の両手を見つめた。王族としての誇りや、国を守るという理想は、あの裏切りの日にすべて焼き尽くされた。今ここにあるのは、この腐り切った世界に対する静かなる復讐心だけだ。


「行きましょう」

少女は歩き出した。その足取りに迷いは一切ない。

「あの街の連中に、自分たちが積み重ねてきたエゴの代償を教えてあげましょう。この世界が二度と、誰も騙したり裏切ったりできなくなるように、すべてを終わらせるために」


帝国の宮殿で、新たな生贄を使った禁忌の儀式が始まろうとしているその時、すべてを裁くための厄災と、すべてを失った少女は、最後の舞台へと足を踏み入れたのだった。

第7話までお読みいただき、ありがとうございます!


帝都に到着した帝国が、再び別の国から生贄を拉致して儀式を進めようとする救いなき姿と、偽勇者とセレスティアの絆がより深まっていく様子を描かせていただきました。

いよいよ物語は、帝国を舞台にした最大の断劇(クライマックスの序章)へと突入します。


それでは、第8話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。