シーズン2外伝・最終話:新しい朝の光のなかで
外伝・最終話をお読みいただき、ありがとうございます!
長きにわたる本編、そして外伝を通じて描いてきた「生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった」。
そのすべての旅路の着地点となる、外伝の最終話をお届けします。
誰もが自分の足で歩き出す、新しい世界の結末をぜひ見届けてください!
オルテア村の空が、ゆっくりと茜色から柔らかな朝焼けの青へと移り変わっていく。
かつてアンデッドのうめき声と、終わりなき絶望に支配されていた世界は今、鳥たちのさえずりと、薪がパチパチと燃える音だけで満たされていた。
村の中心にある広場では、今日もいつもと変わらない朝が始まっていた。
元・帝国の騎士も、ダマシテ王国の元・官吏も、そして旅の途中で流れてきた名もなき人々も、身分や過去の罪の重さなど関係なく、それぞれの鍬を手に取り、自分たちの手で耕す畑へと歩み出していく。
「おーい、ルリエル! 朝ごはんのパンが焼けたぞー!」
大きな木造の建物の前で、エプロン姿の青年が声を上げると、ルリエルが元気よく手を挙げて駆け寄ってきた。
「はーい! 今行くね!」
ルリエルは笑顔を弾けさせながら、焼きたてのパンの入ったバスケットを受け取り、みんなの待つテーブルへと運んでいく。その足取りには、かつて怯えていた少女の面影は微塵もなく、ただ未来を生きる希望だけが満ちていた。
少し離れた小高い丘の上から、その光景を静かに見下ろしている人物がいた。
セレスティア・ミステだった。
彼女は風に揺れる銀の髪を軽く押さえながら、手元に置かれた愛用の杖に視線を落とした。もう長い間、その杖を戦闘のために振るうことはない。ただ、村の子供たちと歩くときの支えとして、あるいは畑の土をならすときの相棒として、それは静かに寄り添っているだけだった。
「相変わらず、いい眺めだな」
コツコツと足音を響かせながら、ライルがいつものように肩に剣を担ぎつつ歩いてきた。彼はセレスティアの隣に並び、朝日に照らされるオルテア村の全景を見渡した。
「昔の王都じゃ、朝から貴族どもが『税金を払え』『労働を強化しろ』って怒鳴り散らしてたもんだが……ここには、そんな窮屈な音は一つもしねえ。あるのは、自分たちが食べる分の作物を育てる音だけだ」
「ええ、そうね」
セレスティアは穏やかに微笑み、小さくうなずいた。
「私たちはあのとき、身勝手なエゴで世界を裏切り、誰もが誰かを犠牲にし合う最悪の選択の果てに、すべてを一度ゼロにしてしまった。あの過ちや、失われた命の重さが消えることは一生ないわ」
その声には、過去を正当化するような響きは一切なかった。自分が犯した罪も、世界が味わった絶望も、セレスティアはすべてを受け入れた上で、今を生きている。
「でもね、ライル」
セレスティアは真っ直ぐに前を向いた。
「あの終わりの日の向こう側で、人々は気づいたの。誰かの犠牲の上に成り立つ平穏なんて、最初から幻だったってことに。私たちは今、誰かに強いられるのではなく、自分の足で立ち、自分の意志で手を繋いでいる。……これが、あの世界が最後に教えてくれた答えなのだと思うの」
ライルはしばらく黙ってその横顔を見つめていたが、やがてフッと満足そうに鼻を鳴らした。
「まったくだ。……さて、お説教はこれくらいにしておこうか。村の連中が、そろそろ今日の作業を始める頃だぜ。お嬢も行くんだろ?」
「ええ、もちろんよ」
セレスティアは杖を手に取り、しっかりと大地を踏みしめて立ち上がった。
「行きましょう、私たちの新しい明日へ」
二人が丘を下り、村の仲間たちが待つ広場へと歩き出す。
背中を押す朝の光はどこまでも温かく、その足元には、誰にも踏みにじられることのない確かな軌跡が続いていた。
身勝手なエゴが世界を滅ぼしたあとに残されたのは、決して絶望の灰だけではなかった。
それは、自分たちの手でゼロから紡ぎ出す、最高に自由で美しい、新しい世界の始まりだった。
「生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった」
本編、そして全5話にわたる外伝を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
身勝手なエゴと裏切りがすべてを滅ぼした世界で、生き残った者たちが過去の罪に向き合い、自分たちの手で新しい日常を築き上げていく姿を描かせていただきました。
ダークな絶望から始まり、最後にはささやかな再生と希望に行き着く物語となりましたが、楽しんでいただけましたでしょうか?
それでは、また別の物語でお会いしましょう! 本当にありがとうございました!




