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生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


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シーズン3・第1話:平穏の終わりの始まり、あるいは遺されたもの

皆様、こんにちは!

多くの反響と温かい応援をいただき、ついに「生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった」の【シーズン3(最終章)】の連載を開始いたします!


平穏を取り戻したオルテア村に訪れる新たな影と、かつての「最初の偽勇者」が残した最後の遺産。すべての因果に決着をつける、シリーズ最後の戦いが今始まります。

最後まで全力で駆け抜けますので、どうぞよろしくお願いいたします!


それでは、シーズン3・第1話をお楽しみください。

オルテア村に新しい季節が巡り、畑の緑は一層色濃くなっていた。

かつての王国や教会の威光が消え去り、人々が自分の足で土を耕し、ささやかな日常を分かち合うようになってから、どれほどの月日が流ただろうか。セレスティアは広場のベンチに座り、楽しそうに笑い声を上げて駆け回るルリエルと、村の子供たちの姿を穏やかな瞳で見守っていた。


もはやこの世界に、かつての「国」や「身分」の垣根はない。

元・帝国の騎士も、ダマシテ王国の元・官吏も、そしてミステ王国の生存者も、皆が同じ釜のスープをすすり、明日の収穫を楽しみに生きている。


「……平和になったもんだな、本当によ」

少し離れた切り株に腰掛け、愛用の剣のメンテナンスをしていたライルが、ふっと息をつきながら言った。その声には、かつての荒々しさはすっかり影を潜め、どこか満たされた響きがあった。


「ええ、本当に……」

セレスティアもうなずき、胸の奥で静かに息を整えた。

すべてが終わり、あの絶望の夜からどれだけ時間が経とうとも、彼女の心には一つの記憶が鮮明に焼き付いていた。それは、すべてを滅ぼした「最初の偽勇者」の姿、そして彼が消え去る間際に残した、あの黒く沈んだ瞳の色だった。


彼はあのとき、ただ世界を呪って消えたわけではなかった。

人間のエゴが作り出した欺瞞の構造そのものを根絶やしにした彼は、最後に何かをこの世界の深部に残していった。それは希望か、それともさらなる試練か――それを確かめる者はこれまで誰もいなかった。


しかし、その平穏の均衡は、ある日突然、音もなく破られることとなる。


その異変に最初に気づいたのは、村の外縁で見張り番をしていた元・帝国の騎士だった。

午後の穏やかな日差しが差し込む中、彼は突如として遠方の地平線の彼方から湧き上がった、奇妙な大気の揺らぎに目を留めた。


「ん……? あれは……砂嵐か?」

最初は、季節外れの風かと思った。しかし、違った。

地平線の向こう、かつて大国アルカディア帝国の宮殿が存在していた廃墟の方向から、どこか重苦しく、それでいて冷徹な魔力の波が、波紋のようにじわじわと押し寄せてきていたのだ。


その魔力の色は、かつて世界を終わらせた「あの日の黒い光」と酷似していた。


「おい……! みんな、ちょっと手を止めてくれ!」

男の焦った叫び声が、オルテア村の広場に響き渡った。

楽しげな空気が一瞬で凍りつき、ライルは反射的に剣の柄に手を掛け、セレスティアはスッと立ち上がった。ルリエルが不安そうにセレスティアの衣の裾をギュッと掴む。


「どうしたの、こんな大声を出して」

ライルが険しい顔つきで近づくと、元・帝国の騎士は青ざめた顔で地平線の方向を指差した。

「あそこを見てくれ……! 帝国の廃墟の方角から、信じられない規模の魔力がこっちに向かって拡大している……! あれは……間違いなく、あのときの『澱み』だ……!」


セレスティアは風に乗って流れてきたかすかな微風に鼻をひくつかせ、そしてハッと息を呑んだ。

間違いない。それは、人間の心の奥底にあるエゴや執着を吸い上げ、再び世界をゼロに戻そうとする「終わりの予兆」だった。


「そんな……」

ルリエルが怯えた声で呟いた。

「せっかく、みんなで仲良くなれたのに……また、あの怖いのが来るの……?」


セレスティアはルリエルの頭にそっと手を置き、優しく、しかし確固たる強い意志を込めた瞳でその背中を包み込んだ。

「大丈夫よ、ルリエル。私たちはもう、あのときの怯えていただけの子供じゃないわ」


セレスティアは視線を前方に向け、かつての旅の相棒であるライルを見た。ライルはフッと不敵な笑みを浮かべ、愛用の剣をしっかりと引き抜いた。

「だな。せっかく手に入れた自分たちの日常を、今度こそ誰にも奪わせるわけにはいかねえよ」


すべての因果にピリオドを打つための、シリーズ最後にして最大の戦い――。

『生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった』シーズン3、最終章の幕が今、静かに切って落とされた。

シーズン3・第1話をお読みいただき、ありがとうございます!


いよいよ物語の最終章となる「シーズン3」が開幕いたしました。

平穏を手に入れたオルテア村に忍び寄る新たな影と、かつての偽勇者が残した最後の試練。ここから全20話にわたる最後の戦いが展開されていきます。


それでは、第2話でお会いしましょう!

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