↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/38

シーズン2外伝・第4話:再会の広場と、それぞれの明日

外伝・第4話をお読みいただき、ありがとうございます!


かつての敵や見知らぬ旅人たちが少しずつ心を通わせ、平穏を取り戻しつつあるオルテア村。

そこに、かつての戦いを共にした仲間たちがそれぞれの旅路を経て再び集結します。

絆の再会と、これからの未来を描く第4話をお楽しみください。

オルテア村の朝は、いつも穏やかな光に包まれている。

かつて荒れ果てていた畑には瑞々しい作物が育ち、村のあちこちから子供たちの無邪気な笑い声が響く。もはや、この場所にアンデッドの脅威におののいていた日々や、権力者たちのエゴに怯えていた影など微塵も感じられない。


その日の昼下がり、村の入口へと続く一本道に、一台の古い馬車がゆっくりと近づいてきた。

御者台で手綱を握っているのは、かつて世界の各地を巡り、数々の情報をもたらしてくれた旅の商人だった。馬車が村の広場の前で止まると、荷台の幌がめくりあがり、見覚えのある顔がひょっこりと顔を出した。


「やあ、みなさん! 元気にやっていたかい?」


明るく快活な声を上げて飛び降りてきたのは、かつてセレスティアたちの過酷な旅の途中で出会い、物資の調達や裏稼業の知識で助けてくれた情報屋の青年だった。その傍らには、かつて王国の魔導士でありながら、古い呪縛から逃れて独自の探求を続けていた老魔導士の姿もあった。


「……! あなたたちは……!」

広場の近くで作業をしていたルリエルがパッと顔を輝かせ、トコトコと駆け寄っていった。

「おじさんたち、どうしてここに!?」


「いやなに、近くの街まで商売のついでにさ。このオルテア村で『元・敵同士の連中が仲良く畑を耕している平和な村がある』って妙な噂を聞きつけてね。まさかそれが君たちのいる村だとは思わなかったから、気になって顔を出したのさ」

情報屋の青年はニカッと笑い、懐からルリエルへ小さなお土産のキャンディを差し出した。ルリエルは「わあ、ありがとう!」と満面の笑みで受け取った。


セレスティアとライルも、作業の手を止めて広場へと歩み寄ってきた。

「よく来てくれたわね。元気そうで何よりだわ」

セレスティアが穏やかな笑みを浮かべると、老魔導士は杖をつきながら深く頷いた。

「ほっほっほ、お嬢さん、一段と良い顔をするようになったな。あの忌まわしい『澱みの王』を打ち破ってからというもの、この世界の空気はすっかり軽くなった。老いぼれのわしにとっても、余生を過ごすには最高の時代になったわい」


「まったくな」

ライルは情報屋の肩を軽く叩き、豪快に笑った。

「昔はどこに行っても『税金だ』『生贄だ』『お上の命令だ』って窮屈な思いばっかりさせられたもんだが、今じゃ自分の獲物は自分で釣るか、畑で育てるしかないからな。気楽でいいさ」


かつての世界では、立場が違えば刃を向け合い、利用し合うだけの関係だった者たち。

しかし、世界の構造が根本から変わり、誰もが「一人の人間」として生きるようになった今では、損得勘定抜きでこうして笑い合える仲間になっていた。


夕暮れ時が近づくと、村の広場にはいつものように大きな焚き火が焚かれ、臨時の大宴会が始まった。

元・帝国の近衛騎士や、ダマシテ王国の元・官吏といった「かつての加害者たち」も、旅の商人や村の住民たちと一緒になって大鍋のスープをかき込み、今日の収穫について楽しそうに語り合っている。そこには、過去の身分や罪の重さを引きずって怯えていた者の姿はなく、ただ新しい明日を生きる人々の温かな輪だけがあった。


少し離れた木陰のベンチから、その光景を眺めながら、セレスティアは小さく息をついた。

「……ねえ、ライル」

「ん? どうしたんだ、お嬢」

「私たちがあのとき、誰かの犠牲の上に生き延びる道を選ばなくて、本当に本当によかったわね」


ライルは少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐにフッと穏やかな笑みを浮かべ、愛用の剣の柄にそっと手を置いた。

「ああ。もしあのとき、どっかの王様みたいに誰かをいけすに放り込んで自分だけ生き延びていたら……こんな風に、他愛のないことで笑い合える夜には絶対にたどり着けなかっただろうな」


セレスティアは夜空を見上げた。

暗闇の向こうには、どこまでも広がる満天の星空が輝いている。

かつて世界を滅ぼそうとした「終わりの夜」は確かに恐ろしく、すべてを奪い去っていった。しかし、その灰の中から這い上がった人々は、もう二度と過去のエゴの連鎖に囚われることはない。


「さあ、みんな! 料理が冷めちゃうわよ!」

セレスティアが明るく声を上げると、ルリエルや旅の仲間たちが「おっ、待ってました!」と楽しそうに歓声をあげて駆け寄ってきた。


身勝手なエゴと裏切りが世界を滅ぼした物語の果てに、人々が手に入れたのは、誰にも支配されない、自分たちの足で歩む「本当の自由」だった。

物語は、終わりではなく、静かで温かな新しい未来の始まりへと続いていく。

外伝・第4話をお読みいただき、ありがとうございます!


かつての旅の仲間たちがオルテア村に集結し、立場を超えて温かな交流を交わすエピソードを描かせていただきました。

いよいよ外伝も次回で最終話(第5話)となります!


それでは、外伝・最終話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。