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生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


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シーズン2・第7話:最後の決戦、エゴの連鎖を断つ光

シーズン2・第7話をお読みいただき、ありがとうございます!


旧・王都の最深部で繰り広げられる「澱みの王」との最終決戦。

人間の尽きせぬエゴと、それに立ち向かうセレスティアたちの強い意志が激突する、クライマックス直前の第7話をお楽しください。

旧・王都の最深部、かつて禁忌の儀式が行われた血塗られた祭壇の間は、澱みの王が放つ圧倒的な黒い瘴気によって激しく歪んでいた。

天井の岩盤がひび割れ、そこから漏れ出る紫色の光が、空間全体をまるでおぞましい異界のように染め上げている。


――愚かな! いくら綺麗事を並べ立てようとも、人間の本質は変わらん! 救いを求め、恐怖に駆られれば、いつか必ず他者を踏み台にする! それこそが歴史の証明だ!


澱みの王が絶叫すると同時に、無数の黒い触手が津波のようにセレスティアたちへ襲いかかった。それは物理的な攻撃ではなく、かつて為政者たちが抱いた疑心暗鬼と自己保身の呪詛そのものだった。


「させるかよ……っ!」

ライルが凄まじい気合と共に愛用の剣を振るい、纏わせた魔力で押し寄せる触手を次々と叩き切っていく。しかし、切り払っても切り払っても、底なしの悪意のように次から次へと澱みが這い上がってくる。

「くそっ、キリがねえな……! こいつ、人間の歴史が続く限り無限にパワーが湧きやがるぜ!」


「ライル、ルリエル、下がって!」

セレスティアは一歩も引かず、最前線に立って杖を大きく掲げた。

彼女の身体から溢れ出す純白の魔力は、澱みの王の黒い瘴気と激しくぶつかり合い、周囲の空気を沸騰させるように震わせている。


「確かに、歴史は過ちの連続だったわ」

セレスティアの声は、轟音の響く祭壇の間で不思議なほどはっきりと全員の耳に届いた。

「ダマシテ王国が私たちを裏切ったことも、帝国が恐怖に駆られて無実の少女を生贄にしようとしたことも……すべて、人間が自分の弱さから目を背けた結果よ。いつだって、誰かを犠牲にすることでしか自分の足場を保てなかった」


――ならば、それを認めるがいい! お前たちもまた、その連鎖の一部なのだから……!


「違うわ!」

セレスティアは力強く首を横に振った。その瞳には、かつての絶望を乗り越えた者だけが持つ、眩いほどの意志の光が宿っていた。

「私たちは、その過ちを知っている。だからこそ、もう二度と同じ道を歩まないと決めたの。誰かの犠牲の上に成り立つ平和なんていらない。たとえ弱くても、手を取り合って、自分の足で一歩ずつ歩む強さを――私たちはあの終わりの世界から学んだのよ!」


その瞬間、セレスティアの胸元から、かつての旅路で育んできた絆の温かな光が弾けた。

それは彼女だけの力ではない。ライルが共に背負ってきた信頼であり、ルリエルが未来へ向けて抱いた希望であり、そしてかつて世界を滅ぼした偽勇者が最後に残してくれた「自由への意志」の結晶だった。


「お姉ちゃん……!」

ルリエルが両手を合わせ、祈るように叫んだ。

「負けないで……! みんなで、新しい明日へ行くんだから!」


「おう、いっちょ派手に決めてやれ、お嬢!」

ライルが満身創痍の笑みを浮かべ、最後の魔力をセレスティアの背中へと送り込んだ。


セレスティアの掲げた杖が、太陽のように眩い純白の光に包まれた。

それは破壊の光ではなく、世界を長年縛り続けてきたすべての「業」と「呪い」を根底から洗い流す、究極の浄化の光だった。


――グ……アアアアアッ……!? 馬鹿な……こんな人間の光ごときに、我々のエゴが……消えていく……!?


澱みの王の巨大な巨体が、純白の光を浴びて激しく泡立ち、崩壊を始めた。

これまで何百年もの間、人間の歴史の影に巣食い、幾度となく世界を破滅へと導いてきた負の感情の集合体が、音を立てて霧散していく。


黒い雲が晴れ、旧・王都の崩れた天井の隙間から、どこまでも澄み切った青空と、温かな光が差し込んできた。

それは、過去の呪縛が完全に断ち切られた瞬間だった。


静寂が戻った祭壇の間で、セレスティアはゆっくりと杖を下ろし、小さく息を吐き出した。

その顔には、長年の戦いに終止符を打った安堵と、未来へ向けた清々しい笑みが浮かんでいた。


「……終わったのね」


ライルが剣を床に突き立て、その場にどっかりと座り込んだ。

「はぁ……マジで命がいくつあっても足りねえぜ。だが……悪くない景色だな」

ルリエルはセレスティアの足元に駆け寄り、その服の裾をギュッと掴みながら満面の笑みを向けた。

「お姉ちゃん、勝ったね! もう、怖いものなんて何もないんだね!」


「ええ、もう何もないわ」

セレスティアはルリエルを優しく抱きしめ、それから顔を上げて差し込む光を見上げた。

過去のエゴに囚われた古い世界は完全に終わりを告げ、今度こそ、誰もが自分の足で歩み出すことのできる新しい時代の幕が、静かに開こうとしていた。

シーズン2・第7話をお読みいただき、ありがとうございます!


ついに「澱みの王」との最終決戦が決着し、人間の業の連鎖を断ち切ったセレスティアたち。

物語はいよいよ次回の最終話(シーズン2・第8話)へと向かいます!


それでは、次回・最終話でお会いしましょう!

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