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生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


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シーズン2・第6話:旧・王都の跡地、そして最後の試練

シーズン2・第6話をお読みいただき、ありがとうございます!


旅の終着点である「旧・王都の跡地」へ到着したセレスティア一行。

そこに待ち受けていたのは、かつての欺瞞とエゴが凝縮された最後の試練でした。

物語のクライマックスへ向かう第6話をお楽しみください。

荒涼とした荒野の向こう側に、かつて大陸の繁栄の中心であった『旧・王都』の残骸が見えてきた。

三百年前、最初の偽勇者によってすべてが灰燼に帰し、その後の世界でも幾度となく政争と裏切りの舞台となってきたその場所は、今や崩れかけた石壁と錆びた鉄くずが散らばるだけの、まるで巨大な墓標のようになっていた。


空を覆っていた紫色の雲は、この旧・王都の真上でドス黒い渦を巻いている。

そこから漏れ出る澱みは、かつてないほど濃厚で、周囲の草木を瞬く間に枯れ果てさせるほどの呪いを放っていた。


「ここが……すべてが始まった場所、そして終わった場所……」

馬車を降りたセレスティアは、冷たい風に銀の髪を揺らしながら、かつて王城があった中心街の跡地を見据えた。

彼女の脳裏には、ダマシテ王国に騙され、生贄として祭壇に縛られた日の記憶が鮮やかに蘇る。しかし、そこにあるのは恐怖ではなく、すべての因果を自分の手で終わらせるという静かな決意だった。


「おい、お嬢。空気がピリピリしやがるぜ」

ライルは愛用の剣の柄に手をかけたまま、周囲の瓦礫の山を警戒した。

「地下の地下、一番深くまで通じる大穴から、あの化け物の気配がドロドロと湧き上がってきている。……生半可な覚悟じゃ、足を踏み入れた瞬間に心を食い潰されちまうぞ」


「うん……私も、お姉ちゃんと一緒に行く!」

ルリエルは小さな拳をぎゅっと握りしめ、セレスティアの隣にしっかりと並んだ。その瞳に迷いは微塵もない。


セレスティアは二人の顔を順番に見渡し、心からの誇らしさと温かさを感じながら頷いた。

「ええ、行きましょう。ここで私たちが怯えれば、また世界はかつての醜い過ちを繰り返してしまう。……すべての因果の決着をつけに行きましょう」


かつての王城の地下深くへと続く大階段は、崩落しかけており、足を踏み入れるたびにガラガラと小石が底知れぬ暗闇へと落ちていく。

降りるにつれて、周囲の壁面にはかつてこの国を支配していた王族や貴族たちの『声』が、幻聴のように響き渡り始めた。


――「なぜ我が国が犠牲にならねばならんのだ……他国を売り払え……!」

――「自分たちさえ生き残れば、他の者たちがどうなろう知ったことではない……!」

――「生贄を差し出せ! それが王族の義務であり、世界の救済なのだから……!」


それはかつて為政者たちが吐き捨てた、醜い保身とエゴの残響だった。

人間の心の奥底に巣食う「他者を踏み台にする弱さ」が、音の波となって侵入者の精神を揺さぶる。


「くっ……! 嫌な声だな、頭の中に直接響いてきやがる……!」

ライルが頭を押さえ、苦い顔で歯を食いしばった。

「他人の犠牲を正当化する汚ねえ言い訳ばかりだ。聞いてるだけで吐き気がするぜ」


「惑わされないで、ライル、ルリエル!」

セレスティアは強い意志を込め、手元の杖をキッと構えた。

「それは過去の亡霊たちの戯言よ。自分たちの罪から目を背け、他人を盾にすることしかできなかった愚者たちの、ただの断末魔に過ぎないわ!」


セレスティアの声に凛とした魔力が宿り、周囲に響いていた醜い幻聴を綺麗にかき消していく。

その足取りでさらに階段を下りた最深部――かつて「最初の偽勇者」が降臨した、あの禁忌の祭壇の間へとたどり着いた。


そこに広がっていたのは、想像を絶する光景だった。

かつての血塗られた魔法陣の中心から、黒く濁った巨大な澱みの繭が脈打つように膨らみ、天井の岩盤を突き破る勢いでうねっていた。その繭の中から、無数の影がぐにゃりと這い出し、一つの巨大な人型へと融合していく。


それはかつてのどの怪物よりもおぞましく、しかしどこか懐かしい――人間の業そのものの姿をした、『澱みの王の本体』だった。


――クク……ハハハハハッ……! よくぞ来た、滅びの王女よ……!


澱みの王が地響きのような声で笑う。

――お前がどれほど世界を変えようと、人々が生き続ける限り、我々は何度でも蘇る! 疑心暗鬼になり、他者を蹴落とし、己の利益のために誰かを犠牲にする……その人間の本質が変わらない限り、我々が滅びることはないのだ……!


その言葉は、ある種の絶対的な真理のように空間を支配した。

人間である以上、弱さやエゴから完全に逃れることなどできるのか?


しかし、セレスティアはその問いを恐れることなく、一歩前に進み出た。

彼女の背後には、信頼できる仲間と、未来を生きる少女がいる。


「確かに、人間は完璧じゃないわ」

セレスティアは静かに、しかし力強く宣言した。

「いつだって間違えるし、弱い心に負けそうになる。でもね……だからこそ、私たちは過ちを認め、何度でもやり直す強さを手に入れたのよ!」


セレスティアの掲げた杖から、これまでにないほど眩い、新世界の夜空のような純白の光が放たれた。

すべての因果を清算し、新しい未来を切り開くための最終決戦が、いよいよ幕を開ける。

シーズン2・第6話をお読みいただき、ありがとうございます!


ついに旧・王都の跡地、すべての因果の起点にたどり着いたセレスティアたち。

人間の業の深さを象徴する「澱みの王」の本体との最終決戦がいよいよ始まります!


それでは、第7話でお会いしましょう!

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