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生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


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シーズン2・第5話:地下神殿の激突と、断ち切るべき因果

シーズン2・第5話をお読みいただき、ありがとうございます!


地下神殿でついに「澱みの王」と対峙したセレスティア一行。

人間の持つ尽きせぬ我欲から生まれた厄災に対し、彼らがどのように立ち向かうのかを描いた緊迫の第5話をお楽しみください。

黒く濁った水面から立ち上る紫色の魔力は、広場の天井を這い回り、蛇のようにうねりながらセレスティアたちを威嚇していた。

『澱みの王』――それは個人の怨念ではない。幾千もの為政者たちが抱き、隠し、正当化してきた「他者を踏み台にして生き延びたい」という醜いエゴの集合体だった。


――愚かな! 泥水をすすり、怯えながら生きるだけの分際で、我々を否定するというのか! 人間とは本来、己の利益のために他者を蹴落とす生き物だ! それこそが真理ではないか!


澱みの王の叫びと共に、幾本もの黒い触手が地面を抉りながら一斉に突き出した。


「ふざけやがって……!」

ライルが鋭く飛び退き、愛用の剣に纏わせた魔力でその触手を鮮やかに両断した。しかし、切り落とされた端から澱みは黒い泥のように再結合し、再び不気味にうねり声をあげる。

「物理的な攻撃じゃ手ごたえが薄いな! こいつ、実体なんてあってないようなもんだぜ!」


「ええ、分かっているわ!」

セレスティアはルリエルを安全な柱の陰にかばいつつ、手元の杖を強く地面に突き立てた。彼女の瞳には、かつての王国で味わった絶望の色など微塵もなく、ただ冷徹なまでの理知的な光が宿っていた。

「この澱みの正体は、私たちが持つ『欲望への甘え』よ。自分だけは特別だという驕り、他人の犠牲の上に胡坐をかく油断……それがこの化け物を形作っている!」


――ならば、その甘えを捨てられるのか? お前たちとて、いつの日か再び誰かを傷つけ、己の幸福を守ろうとするはずだ! 人間である以上、その業から逃れることなどできん!


澱みの王の言葉は、人間の歴史そのものが持つ呪いのようだった。

かつてダマシテ王国がミステ王国を裏切ったときも、帝国が無実の小国から生贄を強奪したときも、その根底にあったのは「自分たちの安全と利益を守りたい」という逃れられない弱さだった。


だが――。


「……確かに、人間は弱い生き物かもしれないわ」

セレスティアは一歩前へ踏み出し、怯えることなく澱みの王を真正面から見据えた。

「いつだって間違えるし、楽な道に流されそうになる。油断すれば、また同じ過ちを繰り返すかもしれない。……だからこそ!」


彼女の体に、古い世界の終焉をくぐり抜けた者だけが持つ、圧倒的なまでの気高い魔力が満ちていく。

「私たちは、その弱さと向き合うことを覚えたのよ。二度と誰かを身勝手な犠牲にしないために、自分たちの足で立ち、助け合い、過ちを正し続ける――それが、あの終わりの世界から私たちが学んだ答えだわ!」


セレスティアの言葉に共鳴するかのように、手元の杖から眩い純白の聖光が弾けた。

それはかつての破壊の黒い炎とは違う、すべての澱みを浄化し、正しく秩序を整えるための光だった。


――グアアアアアッ……!? この光は……!?


澱みの王の黒い巨体が、聖光を浴びて激しく泡立ち、苦悶の叫びをあげる。

「いいぞ、お嬢! その調子だ!」

ライルがすかさず隙を突き、渾身の力を込めた一撃を澱みの王の中心核めがけて叩き込んだ。


激しい閃光と轟音が地下神殿を揺るがし、やがて視界が静寂に包まれたとき、そこにあった黒い泥のうねりは嘘のように消え去っていた。

天井の隙間から差し込む朝の光が、かつての暗い神殿を優しく照らし出している。


「……ふう、なんとか片付いたか?」

ライルは肩で息をしながら剣を鞘に納め、額の汗を拭った。

神殿の空気を重く湿らせていた不気味な気配はすっかり消え失せ、かつての冷涼で静かな遺跡の空気が戻っていた。


セレスティアはゆっくりと息を吐き出し、緊張を解いた。

「ええ……これで一時的な澱みの増殖は抑えられたわ。でも、根本的な解決にはなっていない。人間の心が弱さを抱え続ける限り、いつかまた同じような芽が生まれるかもしれない」


セレスティアの足元に、ルリエルがトコトコと駆け寄ってきた。

「お姉ちゃん、すごい……! かっこよかったよ!」

ルリエルは心配そうにセレスティアの手を取り、満面の笑みを向けた。セレスティアはその小さな頭を優しく撫で、穏やかな笑みを返した。


「ありがとう、ルリエル。……さあ、これで終わりじゃないわ。旧・王都の跡地へ向かい、すべての元凶である根源を断ち切りに行きましょう」


地下神殿を後にした一行は、再び馬車に乗り込み、本当の決戦の地である大陸の中央――かつての王都の跡地へ向けて、力強く車輪を走らせ始めたのだった。

シーズン2・第5話をお読みいただき、ありがとうございます!


地下神殿での「澱みの王」との激突と、人間の弱さと向き合いながら進むセレスティアたちの強さを描かせていただきました。

いよいよ物語は、すべての因果が収束する「旧・王都の跡地」での最終局面へと近づいていきます!


それでは、第6話でお会いしましょう!

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