↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/29

シーズン2・第1話:平穏の裏に潜む亀裂

皆様、お待たせいたしました!

多くの反響をいただきました『生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった』、待望の**シーズン2**が開幕です!


前作で古い世界とすべてのエゴがリセットされ、セレスティアたちがささやかな「名前のない村」で穏やかな日常を取り戻してから数年――。

平和な新世界に隠された「新たな歪み」と、運命の歯車が再び動き出す第1話をお楽しみください!

かつての世界が崩壊し、偽勇者によってすべての欺瞞とエゴが焼き尽くされてから数年の月日が流れた。

かつて荒れ果てていた大地は豊かな緑を取り戻し、セレスティアたちが暮らす「名前のない村」は、多くの旅人や生存者たちが集まる温かなコミュニティとしてすっかり定着していた。


朝の光が村の木造りの家々を優しく照らし出す。

広場からは、焼き立てのパンの香ばしい匂いと、子供たちの元気な笑い声が響いていた。


「お姉ちゃん、おはよう! 今日の朝のパン、すごくうまく焼けたんだよ!」

エプロン姿のルリエルが、少し背が伸びた誇らしげな笑みを浮かべながら、大皿に乗った焼きたてのパンをテーブルに運んできた。その姿は、かつて過酷な運命に怯えていた少女の面影をすっかり忘れさせるほど、明るく健やかだった。


「おはよう、ルリエル。すごいじゃない、とっても美味しそうね」

セレスティアは優しく微笑み、愛おしそうに妹の頭をなでた。

身分も、王族という肩書も、かつての理不尽な搾取も、ここには何もない。ただ自分で汗を流し、仲間と助け合って生きる日常。それがどれほど尊いものであるかを、セレスティアは毎朝のティーカップから立ち上る湯気を見るたびに実感していた。


だが、その平和な日常の裏側で、世界の「理(ことわり)」にわずかな歪みが生じ始めていることに、この時はまだ誰も気づいていなかった――。


村から遠く離れた、大陸の南端。

かつて古い世界において「世界の底」と呼ばれた深い渓谷の底に、奇妙な異変が起きていた。


ずうううう……ん……。


地底深くから、低く重い地響きが響き渡る。

それはかつてのアンデッド軍団の足音とも違う、もっとドロドロとした、世界のバグのような不気味な魔力の奔流だった。古い世界が滅び去った際、完全に消え去ったはずの「負の感情の残滓(ざんし)」が、長い年月をかけて澱(おり)のように溜まり、一つの形をなし始めていたのだ。


「……クク……。まだだ……まだ、人間の醜い欲が足りぬ……」


闇の底から響く、しゃがれた声。

それはかつて偽勇者に滅ぼされた旧世界の為政者たちが抱いていた執念、保身、他者を蹴落としてでも生き残ろうとする『エゴの残骸』が、意思を持って集合体と化したもの――『澱みの王』だった。


古い世界は一度リセットされた。しかし、人間という生き物が生きている限り、いつの時代も「楽をして得をしたい」「他者を犠牲にしてでも自分が安全でいたい」という欲望の芽は完全に枯れ果てるわけではない。

新しく始まった平和な世界の中で、人々が少しずつ油断し、再び利己的な小さな嘘や我欲を芽生えさせ始めたとき、その「澱み」が養分となって目を覚ましてしまったのだ。


「あのときのエゴの連鎖は、まだ終わってはいない……。再び世界を覆い尽くし、あの小娘と、すべての偽りの平穏を叩き潰してやる……!」


地底の闇がドス黒く脈打ち、不気味な紫色の光が夜空へ向かって噴き上がった。


その異変に最初に気づいたのは、村の外れで畑の手入れをしていた旅人崩れのライルだった。


「ん……?」

ライルはふと手を止め、南の空を見上げた。

青いはずの水平線の向こうに、ほんのりと不気味な紫色の雲が立ち込めているのが見えた。風に乗って、かつて嗅いだことのあるような、腐敗と欲望の入り混じった嫌な匂いが微かに鼻腔をかすめる。


「おい、まさか……あんなものが、また復活するってのか……?」

ライルの顔から血の気が引いた。

古い世界が滅び、ようやく手に入れたこの平和な日常が、再び脅かされようとしている。その直感が、彼の背筋に冷たい汗を走らせた。


その直後、村の中央で朝食を楽しんでいたセレスティアもまた、スプーンを持つ手をピタリと止めた。

彼女の瞳に、かすかな動揺と、そして冷徹な覚悟の色が宿る。


「お姉ちゃん……?」

ルリエルが不安そうにセレスティアの袖を引いた。


「……大丈夫よ、ルリエル」

セレスティアは立ち上がり、南の空をまっすぐに見据えた。その声は穏やかでありながら、芯の強い決意に満ちていた。

「せっかく私たちが手に入れたこの世界を、誰にも邪魔させはしないわ」


かつての因果応報を乗り越えたセレスティアたちの前に、今度は「人間の心の闇」から生まれた新たな脅威が迫り来る。

終わったはずのカウントダウンが、静かに、しかし確実に再び動き出し始めていた。

シーズン2・第1話をお読みいただき、ありがとうございます!


平和な日常を取り戻したセレスティアたちでしたが、人間の心の闇から新たな脅威「澱みの王」が目覚め始める……という、不穏な幕開けを描かせていただきました。

ここからシーズン2がどのように展開していくのか、全20話で濃密に描き切ります!


それでは、第2話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。