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生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


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外伝第3話:小さな灯火と、繋がる未来

外伝第3話をお読みいただき、ありがとうございます!


旅人のライルとの出会いを経て、セレスティアとルリエルの穏やかな生活に少しずつ変化が訪れます。

かつて国や教会に縛られていた人々が、それぞれの足で歩き出し、新しい絆を紡ぎ始める姿を描く第3話をお楽しみください。

旅人ライルが去ってから数週間が過ぎた頃、セたちの木の家の周辺は、少しずつ賑やかさを増していた。

ライルが他の街や集落の生存者たちに「あの荒野の向こうに、花に囲まれた優しい家がある」と伝えたのか、ポツポツと新しい旅人や家族連れがこの場所に立ち寄るようになったのだ。


誰もが最初は警戒心を抱き、怯えた目をしていた。

それも無理はない。彼らは皆、かつての王国や帝国、そして聖教会といった巨大な組織の身勝手なエゴに翻弄され、家や家族、すべてを奪われて生き延びてきた者たちだったからだ。


「お姉ちゃん、今日もお客さんが来るみたい!」

ルリエルが嬉しそうに家の窓から外を指差した。

見れば、少し離れた草原の小道に、二人の女性と小さな子供を連れた一家族がトボトボと歩いてくるのが見えた。彼らは皆、長旅で疲れ果てており、衣服はボロボロだった。


セレスティアはすぐに手を洗い、温かいスープの大鍋に火をかけた。

「ええ、迎える準備をしましょう。ここはもう、誰かに怯えなきゃいけない場所じゃないんだから」


近づいてきた家族に、セレスティアとルリエルは笑顔で声をかけた。

「こんにちは。疲れたでしょう、よかったら中に入って温かいお茶でも飲んでいって」


突然の親切に、母親の顔に浮かんだのは戸惑いと、そして堰を切ったような涙だった。

「あ……ありがとうございます……! 私たち、行く当てもなくて……あの、何か税金や、お国の徴用兵のようなものを払わなきゃいけないんじゃ……」


その言葉を聞いて、セレスティアは穏やかに首を横に振った。

「もう、この世界に国なんてないわ。税金も、誰かの命令もないの。ここは、ただ自分のために生きていい場所よ」


その言葉に、家族は崩れ落ちるようにその場で安心の涙を流した。

かつての社会では、人は常に「何かのために」生きることを強要されていた。国のために戦い、教会の権威のために身を捧げ、誰かのエゴの犠牲になることが「当たり前」とされていた世界。

しかし、そのすべてが消え去ったいま、人々は初めて「自分のために生きる権利」を取り戻しつつあった。


夕暮れ時、セレスティアたちの家の周りには、いつの間にか十人ほどの旅人や生存者たちが集まるようになっていた。

大きなたき火が焚かれ、その周囲で人々が共にスープを分け合い、他愛のない世間話を交わしている。


「いやあ、まさかこんな風に安心して夜を迎えられる日が来るなんて思わなかったな」

以前出会った旅人のライルが、たき火の炎を見つめながらぽつりと言った。

「昔はさ、明日にはどこかの貴族がふらっとやってきて、『お前の畑は今日から王国のものだ』なんて言われるんじゃないかって、いつもびくびくしてたよ」


「本当よね」

別の女性がうなずき、微笑んだ。

「今は誰も命令しない代わりに、自分で食べる分は自分で作らなきゃいけないけど……不思議と、あの頃よりもずっと心が軽いの。この土を踏みしめて生きているって実感がちゃんとあるから」


その会話を少し離れた場所から聞きながら、セレスティアは小さく息をついた。

彼女は、かつて自分が王族として育てられたこと、そしてその特権とエゴのために他国を売り渡し、すべてを滅ぼす引き金を引いてしまったことの重みを、今でも忘れたわけではない。


けれど、いま目の前で広がっている光景は、誰かの犠牲の上に成り立っているものではなかった。

人々が自らの意思で手を携え、助け合いながら、まっさらな大地の上に新しい日常を紡いでいる。


「お姉ちゃん、何考えてるの?」

いつの間にか隣にやってきたルリエルが、セレスティアの袖をクイクイと引っ張った。

セレスティアは優しい笑みを浮かべ、ルリエルの頭をなでた。

「ううん、少しね。この世界が、とても綺麗になったなって思って」


「うん! 私、ここ大好き。みんな優しいし、お花もいっぱいあるし!」

ルリエルは満面の笑みを浮かべ、たき火の周りで楽しそうに笑い合う人々の輪へと駆けていった。


かつての欺瞞とエゴにまみれた世界は終わりを告げた。

その灰の中から、名もなき人々が自らの手で築き上げる、小さくも温かな灯火が、新しい世界の夜空の下で静かに、しかし力強く揺らめいていたのだった。

外伝第3話をお読みいただき、ありがとうございます!


セレスティアたちの家を中心に、世界各地の生存者たちが集まり、小さなコミュニティや温かな繋がりが芽生え始めるエピソードを描かせていただきました。

かつての過酷な搾取の社会から離れ、人々が「自分の足で生きる」喜びを噛り締める姿が伝われば幸いです。


残すところあと2話、引き続き丁寧にお届けしてまいります!

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