第13話:最高聖堂の断罪と、崩れゆく神話
第13話をお読みいただき、ありがとうございます!
最高聖堂の最奥で追い詰められた教皇レオンハルトの最期と、聖教会の崩壊。
人間たちが神の名の下に隠し続けてきたすべての欺瞞が暴かれ、いよいよ世界は最後の終焉へ向けて動き出します。
それでは、第13話をお楽しみください。
最高聖堂の冷たい石床の上で、教皇レオンハルトは純白の聖衣を泥にまみれさせ、情けない這いつくばり方で後退りしていた。
彼の誇ってきた神聖な威厳も、莫大な利権を裏で操ってきた教会の権威も、今やただのボロ布同然だった。目の前に立つ漆黒の偽勇者と、冷ややかな瞳で見下ろす少女セレスティアの姿は、彼にとって逃れられない死神そのものに見えていた。
「ま、待て……! 話せば分かる……!」
レオンハルトは震える声を絞り出し、命乞いを始めた。
「私を殺せば、この世界から『導き手』がいなくなる……! アンデッドの群れに立ち向かうための信仰心の支えが消え、人類は完全に野蛮な闇に飲み込まれるのだ……! それでもいいのか……っ!」
その往生際の悪い、あまりにも見苦しい弁解を聞きながら、セレスティアは小さく息をついた。
「導き手、ですか?」
少女の澄んだ声は、冷え切った聖堂の中にどこまでも透き通って響いた。
「あなたたちが今までしてきた『導き』というのが、弱者を騙し、国を売り、子供たちを生贄の祭壇に放り込むことだったのなら……そんなもの、最初から存在しない方がましよ」
「ひっ……!」
「自分たちの保身と欲のために神の名を騙り、都合の悪い真実はすべて『異端の罪』として塗り潰してきた。あなたたちが作り上げた『聖戦』の歴史の裏で、どれだけの無辜の命が踏みにじられてきたと思っているの?」
セレスティアの言葉には、怒号のような感情はなかった。ただ、あまりにも重く、逃げ場のない真実の重みが、レオンハルトの精神をズタズタに引き裂いていた。
彼はこれまでの人生において、数え切れないほどの人間を「神の御心」という名目で切り捨て、利用し、笑ってきた。しかし、いざ自分がその「審判」を受ける立場になったとき、返す言葉など一言も持ち合わせていなかったのだ。
――終わりの時だ。お前の吐く言葉に、もはや聞く価値すらない
偽勇者の低い声が、脳の髄まで響き渡った。
次の瞬間、空間を切り裂くような漆黒の刃が閃いた。
レオンハルトの絶叫は、途中でピタリと途切れた。
教皇の首は、黄金の飾りのついた杖の残骸と共に床へと転がり落ち、その口からは二度と「神の言葉」が紡がれることはなかった。
大陸全土を支配し、人々の信仰と恐怖をコントロールし続けた聖教会は、こうして完全にその幕を閉じたのだった。
最高聖堂の外では、聖都バチリカの崩壊が完了しつつあった。
黄金の尖塔はすべてへし折れ、白亜の壁は崩れ落ち、かつての美しき信仰の都はただのガレキの山へと変わっていた。
崩れゆく聖堂の石段の上で、セレスティアは遠くの空を眺めていた。
その傍らには、彼女の手をしっかりと握る幼い少女ルリエルが寄り添っている。
「お姉ちゃん……これで、全部終わったの?」
ルリエルが不安そうに見上げながら尋ねると、セレスティアは優しく微笑み、その頭をなでた。
「ううん、まだよ。人間たちが作り上げた嘘と欺瞞の仕組みはこれで壊せたけれど……この世界の本当の終わりは、まだこれからよ」
セレスティアが視線を向けたその先――聖都の城壁の遥か外側。
そこには、人間たちが自分たちの内輪揉めや権力争いに夢中になっている間に、手の付けられないほど膨れ上がった『アンデッド軍団』の群れが、地平線を埋め尽くすようにうごめいていた。
ダマシテ王国が滅び、大帝国が崩壊し、聖教会が消え去った。
為政者たちが保身のために積み上げてきたすべてのエゴは、結果として自分たちを守る盾をすべて自らの手で破壊し、世界の終焉を早めるだけの結果に終わった。
――行くぞ
偽勇者の低い声が響く。
男は振り返ることなく、アンデッドの群れが待ち受ける荒野の方角へと歩き出した。
すべてを失った少女と、すべてを終わらせるための偽勇者。
人類のエゴが招いた因果応報の果てに、世界が静かに幕を閉じようとする終末の旅路は、いよいよ最後のクライマックスへと突入していくのだった。
第13話までお読みいただき、ありがとうございます!
教皇レオンハルトの断罪と、聖教会の完全崩壊を描かせていただきました。
人間が作り上げた欺瞞の歴史がすべて清算された今、残されたのは「アンデッド軍団」との最後の対峙のみ……物語はいよいよクライマックスの第4部へ突入します!
それでは、第14話でお会いしましょう!




