↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/17

第11話:聖都の威容と、偽りの聖戦

第11話をお読みいただき、ありがとうございます!


すべての欺瞞と利権の総本山である「聖都バチリカ」に、ついに偽勇者とセレスティアたちが到達しました。

神のの名を語り、恐怖をごまかす教皇と狂信者たちの前に、すべての因果を終わらせる厄災が姿を現します。

最後の聖戦の幕開けとなる第11話、ぜひお楽しみください。

白亜の城壁と、天を突くようにそびえ立つ無数の黄金の尖塔。

大陸全土の信仰を集める聖教会の総本山『聖都バチリカ』は、外側の世界がどれほどアンデッドの群れや崩壊の恐怖に満ちていようとも、変わらぬ絢爛豪華な美しさを保っていた。


しかし、その城壁の上や大通りには、いつもの穏やかな巡礼者たちの姿はなかった。

代わりに立っていたのは、教会の命によってかき集められた数千人の神殿騎士たち、そして教皇の言葉に狂信的に操られた武装した信徒たちだった。彼らは手にした神聖宝具や銀の剣を震わせながら、城壁の門の向こうに現れるはずの「恐怖の化け物」を待ち構えていた。


城壁の最上階、大聖堂のバルコニーから下界を見下ろす男がいた。

最高指導者である教皇レオンハルトである。


彼は純白の聖衣をまとい、黄金の杖を強く握りしめていた。その顔には、老いてなお消えない権力への執着と、迫り来る死への恐怖を塗り隠すための狂気が張り付いている。


「――愚かなる異端者どもめ……!」


レオンハルトはかすれた声で、しかし周囲の神官たちに聞こえるように叫んだ。

「神聖なる聖都を汚し、人類の秩序を破壊しようとするあの悪魔どもを、一歩たりとも通してはならん! あれらは神の恩寵に背いた罪人であり、世界を滅ぼす邪神の使徒だ! 我らが正義の刃をもって、奴らを地獄へと送るのだ!」


その言葉に、城壁に陣取る騎士たちが声を合わせて気勢を上げた。

だが、その声の端々には、直前に滅び去ったダマシテ王国や大帝国アルカディアの「崩壊の噂」を聞き及んでいるがゆえの、拭い難い恐怖と動揺が混じり合っていた。彼らは本当に神のためではなく、「自分たちの信じてきた特権と安全が奪われること」への恐怖から武器を握っていたのだ。


その頃、聖都の巨大な正門の前に、三つの影が静かに歩み寄っていた。

全身に呪いの鎖を纏った漆黒の偽勇者、すべてを失った元ミステ王国の王女セレスティア、そして彼女の手をしっかりと握りしめる幼い少女ルリエル。


冷たい風が、聖都の香油の匂いと、微かな血の気配を運んでくる。

セレスティアは足を止め、目前にそびえ立つ壮麗な聖都の扉を見上げた。その瞳には、かつての王国で抱いていたような畏敬の念など微塵もなく、ただ冷ややかな軽蔑の色だけがあった。


「ここが……最後の場所ね」

セレスティアの呟きは、静かな夜空に吸い込まれるように消えていった。

「すべての嘘を生み出し、すべての裏と表を神の名の下に隠し続けてきた、腐敗の総本山」


――そうだ

偽勇者の低い声が、脳内に響く。

――あいつらは『慈悲』を説きながら、その裏で幾千もの無辜の命を生贄にし、自らの椅子を守り続けてきた。人間が作り上げた欺瞞の歴史の、最後の砦だ


城壁の上から、教会の神官長が拡声の魔導具を使って怒声を張り上げた。

「そこまでだ、異端の者共! 貴様らの罪深き魂は、すでに神に見放されている! 今すぐひざまずき、その首を差し出せば、魂の救済だけは約束してやろう!」


その傲慢な言葉を聞いた瞬間、セレスティアは小さく鼻で笑った。

「救済、だって……?」

彼女は冷ややかな視線を城壁の上へと向け、はっきりと聞き返した。

「自分たちの保身のために私たちを騙し、国を売り、子供たちを生贄に捧げ続けておきながら……どの口がそんな台詞を吐けるのよ!」


少女の澄んだ声は、魔導具を使わずとも聖都の隅々まで響き渡った。

城壁の上にいる騎士や信徒たちの間に、ざわめきが走る。彼らの多くは、ダマシテ王国や帝国がどのような手口で裏切り、生贄を強要したのかという不都合な真実を、教会によって隠蔽されていた。しかし、その内情を突きつけるような少女の言葉は、彼らの心の奥底にあった罪悪感や疑念を容赦なく抉り出した。


「お、恐れ多くも聖都の教えに泥を塗る異端の言葉だ! 構うな、者ども、撃てええーーっ!」


動揺を隠すように、神官長が半狂乱になって叫んだ。

その合図とともに、城壁の上の無数の魔導士たちが一斉に杖を振り下ろし、神聖宝具の光を帯びた数千もの魔法の矢が、雨霰と降り注いだ。


空を埋め尽くす光の弾幕。それは通常の人間であれば一瞬で消し炭になるほどの圧倒的な物量だった。

しかし、偽勇者は一歩も動かなかった。


男がゆっくりと右手を掲げた瞬間、空間そのものがねじ曲がり、すべての光の矢は到達する直前にどす黒い呪いの炎に飲み込まれ、きれいな灰となって消え去った。


「な……馬鹿な……!? 神聖宝具の力が、一瞬で消し飛んだだと……!?」

城壁の上で、神官たちが顔面を真っ青にして絶叫した。


――終わりの時だ


偽勇者の低い呟きとともに、大地が大きく揺れ動いた。

聖都の堅固な城壁に無数の亀裂が走り、かつてどれほど神聖視された白亜の石造りも、人々の身勝手なエゴと欺瞞の歴史と共に、音を立てて崩れ落ちていく。


すべての嘘と利権を裁くための最終決戦が、いよいよその激しい幕を開けたのだった。

第11話までお読みいただき、ありがとうございます!


すべての欺瞞が詰まった聖都バチリカに到着した偽勇者たちと、最後のあがきを見せる聖教会の衝突を描かせていただきました。

神の名を騙る者たちがどのような末路を迎えるのか、そして物語はいよいよクライマックスへと向かいます!


それでは、第12話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。