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生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


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第10話:聖都の迎撃準備と、最後の教皇

第10話をお読みいただき、ありがとうございます!


大国アルカディア帝国が滅び、世界はいよいよ最後の宗教的権威――「聖教会」を残すのみとなりました。

追い詰められた教皇レオンハルトは、神の名のもとに偽勇者とセレスティアを「最大の異端・悪魔」として仕立て上げ、全軍を挙げての迎撃を企てます。

人間の最後の悪あがきが始まる、第10話をお楽しみください。

大国アルカディア帝国の首都が崩壊し、宮殿ごと最高権力が消え去ったという報せは、大陸全土を完全なパニックと沈黙の底へと突き落とした。

ダマシテ王国の滅亡、商業都市ラヴェンナの消滅、そして帝国の壊滅。

人間のエゴによって築き上げられた強大な国家や都市は、次々と「最初の偽勇者」の手によって根元から粉砕されていった。もはや、この世界において通常の軍事力で彼らを止めることのできる存在など、どこにも残されていなかった。


そんな中、人類に残された最後の牙城であり、すべての信仰と欺瞞の中心地である『聖都バチリカ』。

その聖堂の最奥、黄金に輝く祭壇の前に、最高指導者である教皇レオンハルトが立っていた。


彼の老いた顔には、かつての威厳や余裕は微塵も残されておらず、全身を冷や汗と狂気にまみれさせていた。

「――馬鹿な……! アルカディア帝国が、わずか半日足らずで全滅だと……!? 神の加護を受けた聖戦士たちや、数多の魔導士たちは一体何をしていたのだ……!」


執務室に駆け込んできた側近の枢機卿は、青ざめた顔で震えながら報告した。

「もはや軍事力での対抗は不可能です……! あの偽勇者は軍隊ではありません。人間の力でどうにかなる存在を超越した、『動く天災』です……! このままでは聖都も、我々も奴らに蹂躙されます……!」


レオンハルトは歯を食いしばり、床に杖を激しく叩きつけた。

彼が恐れているのは、命が奪われることだけではない。これまで「神の教え」と「聖教会の権威」を盾にして築き上げてきた莫大な利権、そして民衆を騙し続けてきたすべての嘘が暴かれ、自分たちの醜い足元が崩れ去ることそのものだった。


「許さん……許すものか……!」

レオンハルトの瞳に、濁った狂気の光が宿る。

「我々は神の代弁者だぞ! 人類を正しい道へ導く最高峰の聖職者なのだ! あんな異端の化け物と、それに魂を売った裏切り者の小娘などに、この聖都を汚されてたまるものか!」


「で、では……教皇聖下、どうなさるおつもりで……?」

「最後の手段だ」


レオンハルトは冷徹に、そして歪んだ笑みを浮かべて言った。

「全土の教会に神託を下せ。あれらの者は神に背いた『世界最大の悪魔』であり、人類を滅ぼそうとする邪神の使徒であると。聖都に眠るすべての神聖宝具を解放し、全騎士団と狂信者たちを防衛線に集結させろ」


「しかし、それでは民衆が……!」

「民衆がどうなろう知ったことか! 我らがここで生き残り、権力を維持しさえすれば、いくらでも歴史の物語は書き換えられるわ!」


最後まで、彼らは自分のことしか考えていなかった。

世界がどうなろうと、自分たちの地位と欺瞞が守られればそれでいい。その身勝手なエゴの極みが、最後の聖戦という名の茶番劇を生み出そうとしていた。


その頃、聖都へと続く白亜の街道を、三つの影が静かに歩いていた。

全身に呪いの鎖を纏った偽勇者、すべてを失った元ミステ王国の王女セレスティア、そして彼女に手を引かれた幼い少女ルリエルである。


吹き抜ける風には、どこか宗教的な香油の匂いと、微かな鉄の臭いが混じり合っていた。

セレスティアは足元の石畳を踏み締めながら、前方にそびえ立つ壮麗な聖都の城壁を見上げた。


「あそこが……最後の場所ね」

セレスティアの声音には、一切の迷いがなかった。

「すべての欺瞞の総本山。私たちが受けてきた苦しみも、世界をこんな風に歪ませた原因も、すべてはあの教会の連中が作り出した嘘の積み重ねが生んだものよ」


――そうだ

偽勇者の低い声が、脳内に響く。

――あいつらは『神の救済』を謳いながら、その裏で幾千もの命を生贄にし、自らの権力を貪ってきた。人間の最も深いところにある腐敗の根源は、あの中にある


「お姉ちゃん……あの街に入るの?」

ルリエルが少し怯えた様子で、セレスティアの衣をキュッと引っ張った。

セレスティアはしゃがみ込み、ルリエルの小さな頭を優しく撫でながら微笑んだ。


「大丈夫よ、ルリエル。もう誰も私たちを傷つけたり、嘘で縛ったりすることはできないわ。私たちがこれからするのは、この世界に巣食う最後の嘘を、きれいに洗い流すことだから」


少女の瞳に宿る光は、かつての怯えた王女のものではなく、すべての因果にピリオドを打つ「審判者」のそれだった。


聖都の城壁の上では、教会の神聖宝具を掲げた数千人の騎士や狂信者たちが、震えながらも待ち構えていた。彼らは自分たちの正義を疑わず、恐怖を隠すために声を張り上げている。

しかし、その足元はすでに砂上の楼閣よりも脆く崩れかけていた。


すべてのエゴが収束する最終決戦の地へ向けて、終焉の足音は静かに、しかし確実に歩みを進めていくのだった。

第10話までお読みいただき、ありがとうございます!


大国が滅び、最後に残った「聖教会」の教皇レオンハルトが最後のあがきとして全戦力を集結させる展開を描かせていただきました。

物語はいよいよ後半戦、すべての欺瞞の総本山を舞台にしたクライマックスへと突入します!


それでは、第11話でお会いしましょう!

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