第41話「生き残り」
## 第41話「生き残り」
### 【あらすじ】
飯島部隊の崩壊。生き残った川田と真衣は、ロボットを無力化し、目標物を回収するが――
### 【本文】
真衣の運転する車が、都内の道路を走る。
川田たちは、ロボットを無力化した後、トラックから人工心臓のユニットが収められたダンボールを回収し、乗ってきた車両に積み込んだ。
大の大人が抱え込んでやっとの大きさのダンボール。予備を含めて二つの箱が車の後部座席を倒した上に積まれた。
その間も、ボロボロになったロボットが、不気味に川田たちの方を目掛けて蠢いていた。
トラックの荷台を開けるために使った銃弾で、真衣のハンドガンも弾切れを起こしていた。それを受け取っていた川田は、ゆっくりとダッシュボードから替えの弾倉を取り出し、リロードを行う。
車には、ダンボールが二つと、まだ名前を聞いていない真衣の護衛についていた隊員の遺体が載っている。
「…………何があったか、聞いてもいいですか」
「…………ごめんなさい」
「どうして謝るんですか……」
「私……川田さんがバンの方に行った後、見たんです。トラックからあのロボットが降りてきたのを――」
「…………」
「護衛の方が、伏せるように言ったので、そうしました。しばらく……銃撃戦があって――ただ、すぐに助手席からの銃声は、止まりました。多分……撃たれたんだと思います」
荷台に積まれた遺体は、頭部を撃ち抜かれていた。
そして……川田がその戦闘に気付いたとき、ロボットが武器を取り落としていたのは、若林隊員が自分の命と引き換えに作った状況だった。
「その後……川田さんの叫び声が聞こえて……思わず外の様子を見たんです。そしたら――」
「必死でした。川田さんが、殺されちゃうと思って――」
ハンドルを握る真衣の目には、涙。
地下基地で見た時のそれとは、種類の違う涙だった。
「道……わかりますか」
川田は、真衣の自責の言葉を遮るように言う。
「大体は……でも、最短距離で行くのは無理だと思います」
――あまりの出来事。
少なくとも、津田隊員と若林隊員は死んだ。
荷台にいる隊員も。
飯島は……生死すら確認できていない。
遺体を持ち帰れたのは、一人だけ。
――時間がなかった。
川田は、常に時間を確認していた。保護局を出るトラックの間隔は、それぞれ約十分程度。
それを過ぎれば、後続に追いつかれる可能性が高かった。
そこには、当然別のロボットが乗っている。トラックを停めてから、すでに八分は経過していた。これ以上の戦闘が不可能な以上、出発する以外の選択肢がなかったのだ。
「……俺たち、地獄落ちですかね」
「……ロボットがいないなら……地獄でもいいです」
「……ハハ」
乾いた笑いが出た。二人には、戦場を共にした仲間を偲ぶ余裕すら残っていなかった。今はただ、会話で気を紛らわせるしかない。
「…………この状況、どう説明しましょう」
「……どうもこうも……私たちだけ生き残ったと……事実を伝えるしか――」
「…………そう、ですね」
「足、大丈夫ですか?」
「どうでしょう……痛みはないですが……感覚がないです」
あまりの出来事と、急がなければという極限の焦りから、川田の足に痛みはなかった。
「でも……多分、折れていると思います」
「えっ?」
真衣が一瞬川田の顔を見る。
川田の額には脂汗が浮いている。
「……今は、痛みを感じてないだけかもです。後が怖いですね」
「急ぎましょう。ジュニアさんも待ってます」
真衣はアクセルを踏む。
次第に、川田は喋らなくなった。代わりに痛みに耐えるうめき声が聞こえる。
真衣は、ひたすら地下基地を目指す。
時折、川田に励ましの声をかけながら――
◇◇◇◇◇◇
「代表」
時は、同じくして――
「何だね」
「……飯島からの連絡が途絶えました」
「…………そうか」
「同行した部隊員も全員、応答がありません」
「全滅か」
「いえ……バンは停止していますが、“彼ら”の乗ってきた車は、こちらに向けて動いております」
「そうか」
「目標を回収できたかはわかりません。ですが、こうなると、サイボーグを手に入れても――」
「かまわん。兵士はまた訓練すれば良いが――希少価値の高いサイボーグはそうもいかん」
「代表……」
「勘違いするな。命を軽視しているわけではない。だが……ロボットから地上を奪還するには、優先順位を間違えるなという話をしている」
「はい……左様でございますね」
地下基地の最下層。
久世慶三と運営委員の男たちが、ジュニアを見る。
すでに意識はない。榊女医が、彼の容体を詳しくチェックしている。
もってあと、数十分の命だった。




