第30話「襲撃2」
## 第30話「襲撃2」
### 【あらすじ】
ついに保護局に乗り込んだ川田たち。
ロボットたちをかわしながら保護局にたどり着くと、鎮圧命令が出るまでの隙をついて充電、スリープ中のロボットを一掃する。
鎮圧命令が出ると、その知らせはジュニアのもとにも届き――
### 【本文】
「保護局への侵入は禁止されています! 直ちに投降してください! 保護局への――」
警告を発するロボットを、飯島が正確に撃ち抜く。
時刻は七時半。保護作業と清掃活動の合間の時間。保護局にいるロボットの大半は銃を所持していたが、川田たちは順調に一階を制圧していった。
『基地から作戦部隊へ。偽装体が、鎮圧命令を受信。警戒せよ。繰り返す。基地から作戦部隊へ――』
(来た――)
川田と、飯島たちが聞いた無線。
それは、ロボットたちが保護局への襲撃を感知し、鎮圧に向かい始めたという知らせ。
隊の緊張感が一気に高まる。
「作戦を第二段階に移行する! 俺と川田で二階を、その後はできる限り最上階を目指す! 三人はここで警戒! ロボットが集まる量で撤退を見極める! 連絡を欠かすな! 車両が破壊されたらその時点でバックアップを手配! 撤退戦に移行、いいな!」
「了解!」
川田の素人目にもわかる見事な指揮。
優秀な警官だったのだろうと川田は頼もしく思いつつ、焦りを感じる。
(この場所……人がいる気配が全くしない)
保護局……もとい役所であるこの建物は、全八階建ての大型施設だ。
近隣の施設を合わせれば、攫って行った子どもたちを収容することも不可能ではないと思ったが――
「この階もスカだ!」
二階は、機械類の備品が収められているばかり。
「……おいおい! なんだよこれ!」
三階は、川田も本物は初めて見るような高性能メンテナンス機器が並ぶフロア。
(もし……ジュニアさんが改造されるなら、ここで――)
「バカッ! 下がれ!」
「うわっ!?」
川田は、飯島に引っ張られ尻餅をつく。
飯島は直後に二発、発砲。
――ロボットがいたのだ。
「隠れていた……わけじゃねえよな」
川田は迂闊な行動を謝りながら、飯島が銃口で示したロボットを確認する。
「これは……メンテナンス用のエンジニアロボットです。鎮圧の命令を受けてもここにいたってことは……このロボットにはその命令を実行する機能が無いということ、だと思います」
「ブリーフィングで言っていた件か」
この作戦前に、川田も参加したブリーフィング。
そこで、川田はロボットたちの危険性についてこう語っていた。
◇◇◇◇◇◇
「まず、最も警戒するべきは、戦闘を前提に作られたロボットです。例えば、警察配備型。これらは、銃を撃つ機能がもともと備わっています。非常に正確に、かつ高い判断力でこちらを脅かしてくるはずです。逆に、他の汎用型が銃を持つと……危険なことに変わりはありませんが、脅威度はかなり低下します」
◇◇◇◇◇◇
「そうですね。原理はそれと一緒です。AIたちは“指示”やプログラムの書き換えはできますが、物理的な機能の実装は……“まだ”できないようです」
「不気味な言い回しだな」
飯島はフロアの捜索を再開しながら言う。
「この施設を見るまでは……いえ、ジュニアさんに機能実装するという行動自体は確認していたので可能なことは理解していましたが……このレベルの機材があるとなると――」
川田は再び、このフロアに置かれた機材に目をやる。
「あると、どうなるんだ」
「例えば、銃を撃つ機能が本来なかった汎用型ロボットに、警察配備型レベルの射撃性能を実装することが可能……かもしれません」
「冗談きついぜ」
飯島も、それが冗談では無いことを理解していた。
「もっとも、それにはそれ相応の基板とパーツが必要です。大量生産……とは、いかないと……思いますけど」
「だといいな。ま、今考えていてもしょうがねえ」
飯島は手を挙げて、捜索完了を示す。
ハンドサインを知らない川田しかいないこの場でやっても仕方のないことだったが、飯島はこのような作法を重んじるタイプらしい。
『警戒部隊より報告! 鎮圧に来たと思われるロボットが多数!』
その時、無線機がけたたましく鳴った。
「状況は!」
『かなり悪いです! もしかすると……手勢が集まるのを待って一気に仕掛けて来た可能性が――』
「車両は捨てろ! バックアップはこっちで呼ぶ! こっちは今三階だ! 適度に応戦しながら上がってこい!」
『了解!!』
「……クソったれ! お前の考える最悪のパターンで来やがったな」
「…………」
川田がブリーフィングで語ったもう一つの内容。それは、AIたちがどのような鎮圧方法で来るか。
――こちらから仕掛ければ、人数、構成、武器、現在位置まで筒抜けになる。
その情報をもとに、AIがどこまで作戦を立ててくるか、それは未知数だった。
準備ができた個体から雑多に襲ってくる可能性も、臨時の指揮系統が立ち上がる可能性もある。
後者が確認できた場合は即時撤退も視野に入っていた。今は、その状況に限りなく近い。
銃声が鳴り始めた。階下で交戦が始まった。
『隊長! 現在一階階段付近で応戦中! 目視で数体の警察配備型を確認!』
「無理するな! 奴らは射撃性能が高い! 無闇に頭出すなよ!」
『了解! もう一点……報告! です! 何か……ロボットたちは“別の何か”とも交戦……している模様!』
「なっ……なんだと!? こんな状況でか!?」
『はい……! 今、一体、警察配備型が撃たれて――あっ!?』
女性隊員の驚いた声が耳をつんざく。
「なんだ!? どうした――!」
『目標です! 目標発見!』
「な、なんだと!?」
飯島に続き、川田も耳を疑った。
――目標発見。
目標とは、すなわち――
「一階に行くぞ!」
「はい!」
飯島と川田は、転がるように階下へ向かった。




