↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類保護区  作者: プロテイン長田
第4章「地下基地へ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/45

第20話「儚い夢」

## 第20話「儚い夢」


### 【あらすじ】


 ラジオで耳にした“地下基地”の手がかりは、川田の記憶の中にあった。


 反AI活動家の“久世慶三”。


 その邸宅の地下に、それがあると予想した川田は記憶を頼りにその場所に向かうが、待ち受けていたのはロボットの大群。


 ロボットの正確な射撃でタイヤを撃たれ、車は木に激突し――


### 【本文】


「う、うーん……な、なんなんだ……」


 車が木に衝突した衝撃で、澪が目を覚ました。


「っ〜!?」


 直後、眼前に広がる衝撃的な状況に、声にならない悲鳴をあげる。


「大丈夫。きっと助かるから」


 真衣は、自身の恐怖を押し殺して、澪に言う。


『武器を捨て、投降しろ』


 その後、車を取り囲むロボットの一体が、車内の川田たちにそう呼びかけた。


「…………真田さん」


 相手からの想定外の呼びかけに我に返った川田は、真衣に呼びかける。


「銃」


 そう言われて真衣は、思い出したように後部座席に置かれた銃に目をやった。


(おかしい……真田さんの情報では、ルールに違反した人間は問答無用で殺されるはず。この状況はどう考えても不法侵入。車でロボットを壊そうともした。なのに……これはどういうことだ?)


『武器はそれだけか』


 次の呼びかけに、川田は恐る恐る持っていた銃を取り出した。


 一瞬ロボットたちに緊張が走った気がしたが、弾切れであることに気づいてか、すぐに同じ質問が投げかけられる。


『武器はそれだけか』


 川田は頷く。


『ドアを開けろ。お前たちを拘束する』


(拘束……? やっぱり妙だ。それにこの喋り方……まるで人間と喋っているような――)


 そう川田が考えていた直後。


 ――バリィン!!!


「うわっ!?」


 ロボットの一体が、肘で車の窓を割った。


 飛散したガラスから身を守るように、川田が身を翻した。


『確保しろ!』


 その一声で、ロボットたちが一斉に襲いかかる。


「ま、待て!! 俺たちは――」


 川田の抵抗も虚しく、車から引き摺り出され、地面に押さえつけられた。


「ぐっ!!」


 川田の視界に、同じく組み伏せられた真衣が映る。


「おっさん!! 真衣さん!!」


 悲痛な叫びを上げるのは澪。完全にパニックになっており、暴れ始めてしまった。


「嫌だ!! 死にたくないっ! パパ! ママ! 助け――」


『子供の声が外にいる連中に聞かれたらまずい。黙らせろ』


「あっ……! おい待て!」


 一瞬の出来事だった。


 ロボットの一体が、武器を持ち替え、その引き金を澪に向かって引いた。


 直後、澪の体が力無く地面に倒れた。


「………………嘘だろ」


 信じがたい光景だった。


「…………どうして」


 川田は、地面に押さえつけられながら、言う。


「澪は……保護の対象じゃないのか!? どうして――」


『聞き分けのない男だ。こいつも黙らせろ』


 川田の意識は、そこで途絶えた。


「澪ちゃん……? 川田さ……ん……?」


 真衣は、動かなくなった二人を視界に収めた。


 ピクリとも動かない。


「…………あぁ。こんな、結末ですか。私たちも」


 真衣の目から、光が消えた。


『抵抗しなければ、危害は加えない。大人しく連行されろ』


 ロボットがそう言った。


 その瞬間。


『隊長! この女っ!』


 ロボットの一体が叫ぶ。


 それを聞いてか、もしくは言われるまでもなかったのか。“隊長”と呼ばれたロボットは真衣の口に手を突っ込んだ。


「がぁっ!?」


『何考えてるんだこのバカはっ! 撃て!』


 隊長の指示で、真衣にも引き金が引かれた。


 松の木の林、その一本道。


 バンパーがへこんだ古めかしい車と、その脇に大勢のロボット。


 囲われるように、三人の人間が倒れていた。


◇◇◇◇◇◇


 川田拓。


 しがない企業のサラリーマンだ。


 メインの商材はAIを搭載した多種多様な製品たち。


 売れそうな商品を企画して、販売。


 飽和した市場に新たな製品で勝負を仕掛ける、やりがいのある仕事だった。


 年収もそこそこで、妻の杏奈と出会い、子宝にも恵まれた。


 何一つ不自由のない生活。


 それが、いつまでも続くと思っていた。


 ――川田は、夢を見ていた。


 それは、かつて存在していた。暖かい家庭の一幕。


 川田が疲れて帰宅すると、杏奈が出迎え、夕飯を温めてくれる。その間に川田は寝室で寝ている娘の千花を眺め、その成長と健康を心から願う。


 リビングで食事を済ませると、杏奈は寝室に戻り、川田はシャワーを浴びる。


 そうしてゆっくり過ごした後、川田も杏奈と千花の隣で眠りにつくのだ。


 そう。また、目が覚めたら一日が始まる。


 もうすぐ、千花の誕生日が近い。


 プレゼントは、何にしようか――


◇◇◇◇◇◇


 夢の続きは、儚く消えた。


 川田が目を覚ますと、見慣れない石膏ボードの天井が広がった。


 ベッドに寝かされている。


 薄手のカーテンに囲まれた空間には、薄っすらと薬品のような香りがした。


「…………生きてる。のか」


 記憶を辿る。


 ロボットに取り囲まれ、車から引き摺り出された。


 目の前で、澪が――


 そこまで思い出して、川田は勢いよく起き上がった。


「っ……!」


 激しい頭痛。


 吐き気も襲ってきた。


「うっ……おぇ……」


 ベッドの脇のラックに丁寧に置かれていた洗面器に嘔吐する。


「……ぺっ……クソ……なんなんだ……」


 口の中に残った不快な吐瀉物を吐き出すと、川田はゆっくりと起き上がる。


 足側のカーテンを開けると、ここが医務室のような部屋であることがわかった。川田が寝かされていたベッドとは別に、何台ものベッドがあることがカーテン越しに見える。


「……もう起きたんだ」


 声がした。


 ギョッとして川田が振り返ると、そこには、白衣姿の眼鏡をかけた女性が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。