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人類保護区  作者: プロテイン長田
第4章「地下基地へ」

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第18話「語られぬ真実」

## 第18話「語られぬ真実」


### 【あらすじ】


 真衣は澪の自宅があるマンションに侵入し、そこで最悪の発見をする。その頃、川田は迫り来るロボットに向け引き金をひき――


### 【本文】


 ロボットは、法律やそれに準ずるものに収まらず、なんらかの規則を破った人間を殺す。


 その対象は、中学生以上の全人類。


 殺したあとは、信じられないほど綺麗に現場を掃除して撤収する。


 真衣が発見したのは、どう考えてもその“清掃”が行われた後だった。


 犠牲者は、この家にいた二人。おそらく、頭部を撃ち抜かれ――


「っ……!」


 真衣は、手に持っていた銃を取り落としそうになる。


 様々な思考が頭を駆け巡る。


 その中でも、一番強烈な事実が彼女の脳を攻撃した。


(澪ちゃん……)


 小学生の彼女が涙ながらに会いたいと願った両親。


 その二人の結末が、ここにあった。


「…………こんなこと、あっちゃいけない」


 真衣は呟く。


 しかし――何度見ても結果は変わらない。


(こんなこと……してる場合じゃないのに)


 こうしている間にも、川田たちに危険が迫っているかもしれない。


 すぐに戻らなくてはならない。しかし……足が動かない。


 戻れば、必ず訪れる機会。


 澪に……真実を伝える機会。


 そこに向かう足が、信じられないほど重かった。


 その時――


 ――バァン!!


 銃声がした。


「あっ……!?」


 その音で、真衣は我に返る。


「川田さん……! 澪ちゃん……!」


 二人は、真衣の人生で初めて“家族”と思える存在だった。


 こんな世界で……いや、こんな世界になってしまったからこその出会い。


 ――戻らなくては。


 真衣は決意を固め、震える足で踵を返した。


◇◇◇◇◇◇


(当たった――!?)


 川田が放った銃弾は、狙いのロボットに命中した。


 だが――


(き、基板には届いてない!)


 ロボットはよろめいただけで、すぐに体勢を戻し接近を再開した。


「ロボットに対する故意の破損行為は器物損壊に該当します」

「ロボットに対する故意の破損行為は器物損壊に該当します」

「ロボットに対する故意の破損行為は器物損壊に該当します」



 直後、撃たれた個体を含む、その光景を見たロボットが同時にアナウンスを発し始めた。


「言われなくても分かってる……だろ!」


 川田は再び引き金を引く。


 銃声。そして鈍い金属音。


「当たった!」


 次は、思ったところに当たった。


 ロボットはバランスを崩し、そのまま倒れた。


「次……!」


 一体に集中しすぎた。と反省しながら周囲を確認する。


 すでに、接近してきているロボットは十を越えようという量になっていた。


「…………まじかよ!」


 川田は次に近いロボットに二発打ち込んだ。さらに振り返り二発。いや……外した。もう一発撃ち、三体目を倒す。


 ――ガチャン


「……あっ!?」


 銃のスライドが、下がったまま止まった。


 ――弾切れだ。


(まずい……! まずいまずいまずい! どうする……!? もうこれ以上は時間が稼げない――)


 川田には、妻と娘を探すという目的がある。


 家族の顔が、脳裏に浮かぶ。


 車は、手の届く距離にある。


 それに乗って走り去れば、この場は乗り越えられる。


 ただ、それができない理由があった。


「真衣さん!!!!」


 川田は叫んだ。


 何か目論見があっての行動ではない。


 ただ、“なんとかしよう”という気持ちの表れだった。


 返事はない……と思われたその時。


「車に戻ってください!!!」


 叫び声が返ってきた。


 ――真衣の声だ。


「!!」


 川田はすぐに車に走る。今度は川田が運転席に座り、マンション側の扉を開け放つ。


「澪! シートベルトつけろ!」


「え!? わ、分かった!」


 ほぼ同時に、真衣がマンションのエントランスから出てきた。


 チラリと前方を見ると、ロボットが何体も道を塞いでいた。


「出してください!!」


「あ、ああ!!」


 車に飛び乗るなり真衣が叫ぶと、川田がアクセルを踏み抜く。


「うおっ!?」


 後部座席の澪が声を上げる。


「掴まれえええ!!!」


 車はロボットの大群に突撃していく。


「うおおおおおお!!!!!」


 川田はアクセルをゆるめない。そのまま――


 金属と金属が激しく衝突する音。


 タイヤが轢き倒されたロボットに乗り上げ、車体が揺れる。


「川田さん!」


 真衣が叫ぶ。


「く、くそっ!」


 集団は抜けた。しかし――


 工事現場用のロボットだ。どういう原理か、ボンネットに足を固定し、フロントガラス越しに川田たちを見た。


「まずい!!!」


 ロボットがフロントガラスを破り抜こうと腕を振りかぶった瞬間、川田は急ハンドルを切った。


「きゃっ!?」


「うわっ!?」


 真衣と澪が驚いた声を上げる。


 ロボットは体勢を崩したが、まだボンネットにへばりついている。


「まじかよ!?」


 再び体勢を整え、腕を振りかぶるが――


 ――バァン! バァン!


 銃声と、ガラスの割れる音。


「なっ……!?」


 音の正体は、真衣が持っている銃だった。


 躊躇なく二発。ロボットの胸部を撃ち抜いた。


 ロボットは、ついに車から落下し、道路に転がり、車のはるか後方に消えていった。


「……ハァ……ハァ……」


 真衣は銃を構えたまま固まっている。


「まじかよ……窓ごと撃ったのか?」


 澪も、目の前の光景が信じられないといった様子だ。


「た、助かりました……真田さん」


「い、いえ……無我夢中で……つい――」


 ――危機は脱した。


 車は、誰もいない道路を走る。


 依然、信号も電子標識も消えた都心の道路。


「…………」


 車内は、沈黙に包まれていた。


「なあ……」


 最初に口を開いたのは澪だった。


「いや……なんでもない」


 川田も真衣も、澪が何を聞きたいのかは分かっていた。


 だが――幼いながらも、澪は察していた。


 真衣は一人で戻ってきた。


 それが何を意味するのか。


「…………」


 澪は、静かに泣き始めた。


 それを、慰められる人は、誰もいなかった。


 

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