第7話:街道の伏兵、灰獣の群れ
赤土の断崖が迫る狭隘な街道に響き渡る、凍てつくような遠吠え!
待ち伏せていた無数の四足歩行灰獣(灰狼型)が、疾走する重装軍用馬車へ雪崩を打って襲いかかる!
屋根上を縦横無尽に駆けるフェリの二丁拳銃乱射!
影から死角を断つシエルの暗殺術、そしてエレナが短杖で紡ぐ水の防護結界!
激闘が巻き起こる中、仲間を狙う鋭い牙を前に、カナタが父の形見『不知火』を初めて実戦で抜き放つ──!!
──ウォォォォォォォォォンッッッ!!!!
凍てつくような咆哮が、赤土の断崖に幾重にも反響し、鼓膜を劈く。
それは生命が上げる声ではなかった。冷気を帯びた白灰の粒子が擦れ合い、大気の熱を貪り喰らうような、不気味で金属質な飢餓の叫び。
切り立った両岸の岩肌から、鉛色の砂煙を巻き上げて黒い泥の塊が雪崩のように滑り落ちてくる。
否、泥ではない。
四つん這いで岩を蹴立てる獣の群れだ。
全身を覆うのは黒灰色の腐食した筋肉と、皮膚を突き破って外側に剥き出しになった白骨の肋骨。頭部には冷たく爛々と白光を放つ灰の『核』が埋め込まれている。
「灰獣の群れ……! こんなにたくさん……!」
馬車の小窓から身を乗り出したカナタの喉から、掠れた声が漏れ出た。
視界を埋め尽くす異形の数は、優に三十を下らない。四足歩行の狼を思わせるその灰燼種たちは、通常の獣なら即死する高所から断崖を跳び下り、衝撃を灰の霧に変えて霧散させながら、一直線に街道へと殺到してくる。
「チッ、待ち伏せとは小賢しい真似を! だがな、この程度の小細工で第7小隊の足を止められると思うなよッ!」
御者台で四頭の重装巨馬の手綱を握るクロードが、獰猛な笑みを浮かべて長鞭を振り抜いた。
パァンッ、と大気を切り裂く炸裂音が轟く。
鞭の切っ先から迸った漆黒の熱気──微小な黒炎の波動が四頭の軍馬の背中を撫でた瞬間、巨馬たちが嘶き、蹄から青白い火花を散らして加速した。
ガガガガガッ、ゴォォォォッ!!
装甲馬車が地響きを立てて跳ね上がり、街道の白灰を猛烈な勢いで巻き上げながら爆走する。
だが、飢えた灰狼たちの脚力は異常だった。時速五十キロを超えて疾走する馬車の両脇へ、まるで影のように張り付き、剥き出しの牙から死の冷気を滴らせながら距離を詰めてくる。
「屋根を開けろ! 側面からも上からも来るぞ! おいお前ら、一匹たりとも車輪に噛みつかせるんじゃねえぞッ!!」
クロードの怒号が吹き荒れる風を裂いて届く。
「言われなくても分かってるにゃあぁぁっ!」
弾かれたように跳躍したのは、青髪の少女フェリだった。
彼女は客室の天井に設けられた円形ハッチの掛け金を蹴り開けると、吹き込んできた灰の混じる突風をものともせず、天幕の屋根上へと身を躍り出させた。
ガタンッ、と揺れる屋根の上。
立っていることすら困難な高速移動のさなか、フェリは猫獣人特有の驚異的な平衡感覚を発揮し、低く身を沈めて両足を装甲板の溝へと噛み合わせた。
腰の両ホルスターから引き抜かれたのは、鈍色に光る大型の連発魔導拳銃──二丁拳銃。
「ふざけた顔してアタイたちの昼飯の邪魔すんじゃないにゃ! 灰のクズ肉にしてやるにゃ!」
青い三角耳がピーンと垂直に張り詰め、興奮と闘志で青いふさふさの尻尾がボワッと二倍近くに膨らみ、空気をビュンビュンと唸らせる。
カチャリ、と両手の撃鉄が同時に起こされた。
──ドバァァンッ! ドババババァンッッ!!
鼓膜を震わせる銃声が連射された。
フェリの放つ弾丸はただの鉛玉ではない。銃身の内部で圧縮されたアウラを纏う徹甲魔導弾だ。
崖の上から屋根めがけて跳躍してきた三体の灰狼。その眉間に輝く白い核へ向けて、寸分の狂いもなく光条が突き刺さる。
ギュルルルッ、バアンッ!
空中で頭部を撃ち砕かれた灰狼が、甲高い悲鳴を上げて黒煙を吹きながら吹き飛んだ。
着地と同時に身を翻し、フェリは背後から迫る別の個体へ向けて、背中越しに銃口を向けて引き金を引く。
アクロバティックな身体の捻り。跳躍、旋回、そして零距離射撃。
強風の中で青髪を激しくなびかせながら、彼女は屋根の上を舞うように駆け巡り、次々と跳びかかってくる灰獣の頭部を正確に撃ち抜いていく。
「ははっ! 手応えありだにゃ! ……って、チッ! 下から回り込んできてるにゃ!?」
フェリが舌打ちを漏らした。
屋根への跳躍が阻まれたと見るや、灰狼たちは即座に狙いを変えていた。
群れの半分以上が街道の左右へと散開し、馬車の車軸や、前方を走る四頭の巨馬の足首を狙って低空から滑り込んできたのだ。
馬が一頭でも脚を折られれば、この速度では馬車ごと横転し、全員が崖下へ叩きつけられて圧殺される。
「させません……! この馬車は、絶対に通します!」
車窓から半身を乗り出したのはエレナだった。
柔らかなハニーブラウンの髪を風に乱しながら、彼女の穏やかな眼差しは、戦場の空気を吸った瞬間に怜悧な魔導士のものへと研ぎ澄まされていた。
胸元のハーネスから、一本の細身の杖が引き抜かれる。
白革の持ち手、先端に輝く湖水色の魔導水晶──『医療用短杖』だ。
キィィィィン……ッ!
エレナが短杖を虚空で円を描くように優雅に振るうと、水晶から溢れ出した澄明な水色の光が、濃密な魔導の奔流となって大気中に溶け出した。
「巡る清流、命を守護する揺りかごとなれ──『水輪の障壁』!」
ザザァァァッ!
荒涼たる灰の荒野に、突如として澄み渡る激流の音が轟いた。
馬車の車輪の周囲、そして前方を疾走する四頭の巨馬の足元を包み込むように、半透明の巨大な水流の防護帯が渦を巻いて展開される。
ギャゥッ!?
巨馬の足首に噛みつこうと飛び込んだ灰狼が、高速回転する水の渦に激突した。
触れた瞬間に冷気を相殺され、強烈な水圧の反発力によって弾き飛ばされた灰狼は、街道の赤土に叩きつけられて骨を砕く。
灰狼たちが吐き出す死の凍結ブレスも、エレナの短杖が維持する清流の障壁に触れた端からジュウジュウと蒸発し、車輪に触れることすら叶わない。
「すごい……! 馬車全体を魔導で守ってる……!」
カナタはその光景に目を見張った。
エレナの額にはかすかに汗が浮かんでいる。細い短杖の先端を微細に震わせ、激しい揺れの中で障壁の水圧と流速を完璧に制御し続けているのだ。
「カナタ君、感心している暇はありませんよ! 障壁の死角──車体の後方と床下です!」
エレナの鋭い指摘が飛ぶ。
激流の障壁は前方と側面を完璧に守っているが、水流の推進力を保つ都合上、馬車の真後ろ──巻き上がる土煙の中だけはどうしても膜が薄くなる。
そこへ、群れの中でも一際すばしこい三体の灰狼が、低く身を伏せて滑り込んできていた。
装甲板のわずかな隙間に黒泥の爪を引っかけ、車体後部へよじ登ろうとしている。
「……任せて」
怜悧で静謐な声が、カナタの耳元を通り抜けた。
銀白髪を高い位置でポニーテールに束ねた影──シエルだ。
彼女は窓枠に手をかけると、疾走する馬車から飛び降りるかのような無謀な身のこなしで、外壁のわずかな窪みへと身を滑り込ませた。
バッ、と夜天紺の忍び装束がはためく。
シエルは靴底に仕込まれた特殊な鉤爪を装甲板の継ぎ目に深く突き立て、真横に吹き荒れる突風の中で、まるで壁に張り付くヤモリのように重力を無視して静止した。
シャッ、シャッ!
袖口から滑り出た二本の鋭利なクナイが、彼女の細い指の間に挟まれる。
シエルの青い双眸が、後方からよじ登ろうとする灰狼の頭部を冷酷に射抜いた。
「影縫い──『穿孔牙』」
ピシュッ!
音もなく放たれたクナイが、大気を切り裂いて一直線に飛翔した。
狙いは肉体ではない。眉間の『絶対零度の核』の、わずか数ミリの継ぎ目。
カツンッ! と硬質な音が響いた瞬間、クナイの柄に巻かれた黒い霊符が青黒い燐光を放ち、灰狼の影を地面ごと縫い止めた。
ギャウッ……!?
急激に運動エネルギーを奪われた灰狼の身体が、馬車の速度についていけずに引き剥がされ、後方の地面へと激しく叩きつけられる。核を正確に砕かれた個体は、悲鳴を上げる間もなく黒い煤となって霧散していった。
「シエルさん、すごいです……!」
車窓からその神業を目撃したカナタが思わず叫ぶと、装甲板に張り付いていたシエルが、すっとカナタの方を振り返った。
陶器のように整った美貌には、相変わらず一片の感情も浮かんでいない。
だが──銀白のポニーテールの隙間から伸びた長いエルフ耳が、カナタの賞賛の声を受けた瞬間、ピコッ、ピコピコッ、と小刻みに、誇らしげに上下へ跳ね上がった。
(あ、また耳が動いてる……!)
こんな命のやり取りの最中だというのに、その愛らしい仕草にカナタの胸の緊張がふっと緩みかけた──その時だった。
「──カナタ、上じゃッ! ボヤボヤしておるでないわ愚か者ッ!!」
首元に巻きついていたコハクが、カナタの鼓膜が破れんばかりの金切り声を上げた。
純白の毛並みが一瞬で針のように逆立ち、首筋に鋭い爪が食い込む。
「えっ……!?」
見上げた瞬間、カナタの視界が凍りついた。
峡谷の頭上、街道を跨ぐように突き出た赤土の天然の岩橋。
その岩陰から、群れのどれよりも一回り巨大な、筋骨隆々の巨躯を持つ変異灰狼が、音もなく空へと躍り出ていたのだ。
狙いは──馬車の天幕の上で、二丁拳銃の弾倉を交換しようとしていたフェリの無防備な背中!
「フェリちゃん、上ですッ!」
下からエレナが叫ぶ。
「にゃっ……!?」
フェリが青い三角耳を跳ね上げて見上げた時には、すでに手遅れだった。
両手の拳銃からは空の弾倉が滑り落ちた直後。両手は塞がり、回避しようにも屋根の足場は狭すぎる。
頭上から急降下してくる巨狼の影が、巨大な死の顎を開き、フェリの華奢な身体を丸呑みにせんと迫っていた。
牙から滴る絶対零度の冷気が、フェリの青い前髪を凍てつかせて白く染め上げる。
(間に合わない……!?)
カナタの網膜に、その光景がスローモーションのように焼き付いた。
心臓が早鐘を打つ。
昨夜の光景が脳裏を激しく明滅した。
火の海に包まれた故郷の村。
自分の目の前で、冷たい灰の塊となって崩れ去った父の笑顔。
無力だった自分。何もできずに、ただ守られることしかできなかったあの夜の絶望。
(嫌だ……!)
恐怖で膝が震えた。手足の先が氷のように冷たくなった。
戦うのが怖い。死ぬのが怖い。
灰燼種の放つ冷気が、魂の芯まで凍りつかせようと這い上がってくる。
けれど──。
さっき、揺れる車内でエレナが分けてくれた特製スープの温もりが、まだカナタの胃の底に残っていた。
フェリの屈託のない笑顔が。シエルのピコピコと動くエルフ耳が。
『私たちは小隊です。一人で全てを背負う必要はないんですよ』という、エレナの優しい言葉が、耳の奥で木霊した。
「妾の主たる者が、竦んでおるでないわ! 行け、カナタッ! そなたの白銀は、あんな汚らわしい灰に呑まれはせぬッ!!」
首元のコハクが、神獣の誇りを込めてカナタの背中を力任せに前へと押し出した。
「──っ、うああああああっ!!」
思考よりも先に、身体が動いていた。
カナタは客室の窓枠に足をかけると、爆発的な力で床を蹴りつけた。
狭い車内から、吹き荒れる白灰の嵐の中へ、弾丸のように身体を投げ出す。
「カナタ君ッ!?」
エレナの悲鳴のような呼声が背後を過ぎ去る。
馬車の側面装甲を足場にして、もう一歩。
重力に抗い、疾走する風を突き破って、カナタは屋根の上へと跳び上がった。
フェリの背後、巨狼の牙が彼女の首筋に届くまで、あとわずか三十センチ。
カナタの右手が、腰の漆黒の鞘──『不知火』の柄へと吸い付くように伸びた。
(吸って、吐いて、丹田に落とす……!)
今朝、クロードと交わした稽古の感覚。
父ソウマと毎朝繰り返した、丸太を割る時の呼吸法。
冷え切っていたカナタの胸の奥底で、小さな、けれど決して消えない白銀の火種がカッと激しく熱を帯びた。
心臓から全身の血管へ向けて、純白の熱量が奔流となって駆け巡る。
──カチリ。
親指の腹が、不知火の三日月の鍔をわずかに押し上げた。
鯉口が切られる。
冴え渡る澄んだ金属音が、戦場の喧騒をすべて切り裂いて響き渡った。
「──フェリさんに、触るなッッ!!」
ヒュンッッ!
黒漆の鞘から、白銀の刀身が抜き放たれた。
下段から上段へ向けて、空気を切り裂く鋭利な弧を描く。
朝の稽古で掴みかけた『熾衣』の萌芽──まだ薄く、不完全ではあるが、紛れもない純白の輝きが不知火の刃を包み込んでいた。
ギィィィィィンッッッッ!!!!
大気を震わせる硬質な激突音が炸裂した。
巨狼の鋼鉄をも噛み砕く巨牙と、カナタが両手で振り抜いた不知火の白銀刃が、空中で真っ向から激突する。
火花が激しく散り、周囲の白灰を吹き飛ばした。
「ぐっ……、うおおおおおっっ!!」
凄まじい質量と突進力が、不知火の刀身を通じてカナタの両腕に圧し掛かる。
手首が軋み、足元の屋根の装甲板がメリメリと凹んだ。
だが、カナタの足は一歩も退かなかった。
下腹部に力を込め、薪割りの呼吸を維持したまま、丹田の白銀の熱を刀身へと注ぎ込む。
不知火の刃に灯った白銀の燐光が、巨狼の牙に触れた瞬間──ジュウゥゥッ! と激しい蒸発音が上がった。
触れるものすべてを腐食させ灰に変えるはずの灰燼種の冷気が、カナタの白銀に触れた端から光の煙となって消滅していく。
「グルアァァッ!?」
巨狼の瞳に宿る白い核が、痛打に耐えかねたように激しく明滅した。
その一瞬の怯みを、カナタは見逃さなかった。
「はあああぁぁっ!」
渾身の力で太刀を押し上げ、巨狼の巨躯を力任せに弾き飛ばす。
バランスを崩した巨狼は、屋根の上にドスンと無様に転がり落ちた。
「カ、カナタ……!?」
背後で新しい弾倉を装填し終えたフェリが、丸く見開いた瞳でカナタの背中を見つめていた。
華奢な少年の背中。
昨夜王都に来たばかりで、朝の訓練でも緊張していたはずの少年が、今、抜き身の太刀を正眼に構え、自分の前に立ちはだかって守ってくれている。
フェリの青い三角耳がピクピクと小刻みに震え、青い尻尾が感情を追いつかせられないように揺れていた。
「フェリさん、怪我はありませんか!?」
カナタは太刀の切っ先を倒れた巨狼に向けたまま、息を乱して振り返った。
「あ、アタイは平気だにゃ! ……バカ、無茶しすぎだにゃ! 新兵のくせに、カッコつけやがって……!」
フェリは照れ隠しに叫びながらも、即座に両手の拳銃の銃口を起き上がろうとする巨狼へと向けた。
「でも……助かったにゃ、カナタ!」
「カッカッカ! 見事じゃカナタ! よい太刀筋であったぞ!」
カナタの首元で、コハクが誇らしげに金色の瞳を輝かせて喉を鳴らす。
「さあ、隙だらけじゃ! その獣の首を叩き落としてやるのじゃ!」
「はいっ!」
カナタが不知火を握り直した、その時だった。
──ズズゥゥゥゥゥン……ッ!!
地響きが走った。
馬車の走行による揺れではない。
街道の大地そのものが、まるで巨大な杭を打ち込まれたかのように底から揺れ動いたのだ。
「……ッ!? なんだ、この揺れは……!?」
フェリが屋根の上でバランスを崩しかけ、シエルが素早く馬車の屋根上へと身を躍らせてカナタたちの横に着地した。
シエルの長いエルフ耳が、これまでにないほどピンと張り詰め、硬直している。
「……下方、街道前方。……異常な極冷気反応」
シエルの冷たい声に、緊迫の色が混じっていた。
「小型の群れではない。……この群れの統率個体」
前方の赤土の峡谷。
立ち込める白灰と土煙の奥から、ズシィン……ズシィン……と、大地を砕く重々しい足音が近づいてくる。
煙を割って現れたのは、通常の灰狼の三倍を超える巨躯だった。
立ち上がれば四メートルを超えるであろう、変異灰熊型の大型灰燼種。
その全身は、幾重にも重なり合った頑丈な灰岩の甲殻で覆われ、剥き出しの胸部の中央には、バスケットボール大の禍々しい絶対零度の核が、不気味な白光を放ちながら脈打っていた。
グルルルルルルァァァァッ……!!
大型灰獣が巨腕を振り下ろすと、街道の巨岩が軽々と粉々に粉砕され、疾走する馬車の進路を完全に塞ぐように立ち塞がった。
「止まれないにゃ! このまま突っ込んだら馬車ごと大破するにゃ!」
フェリが悲鳴を上げる。
だが──。
御者台から、けたたましい笑い声が峡谷の空へと轟いた。
「ハッ! ようやく本命のお出ましじゃねえか!」
手綱を左手一本で固定したクロードが、立ち上がった。
男の筋骨隆々の右手が、背中に背負った身の丈ほどもある巨大な大太刀の柄へと掛けられる。
鋭い双眸の奥に灯ったのは、灰の冷気を根こそぎ焼き尽くすような、禍々しくも圧倒的な暴力の光──十星天刃・第7席『黒炎』の輝きだった。
「カナタ、よく凌いだ! てめえの初太刀、後ろからしっかり見せてもらったぞ!」
クロードが大太刀をゆっくりと引き抜く。
鞘から擦れ出る金属音とともに、刀身からドス黒い不滅の炎がボッと噴き上がった。
「道は俺がこじ開ける! カナタ、フェリ、シエル──そのデカブツの核の息の根は、お前らで止めろッ!!」
黒炎の大太刀が、赤土の峡谷の空を真紅と漆黒に染め上げた。
第7話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
赤土の峡谷で繰り広げられた、第7小隊の疾走迎撃戦!
フェリのアクロバティックな二丁拳銃乱射、エレナの『医療用短杖』による水の防護障壁、シエルの影縫い暗殺術、そして仲間を守るために恐怖を乗り越えて不知火を抜き放ったカナタ!
カナタの白銀の太刀筋がフェリを救い、小隊としての絆がまた一段と深まりました。
しかし、行く手を塞ぐように現れたのは、巨岩をも粉砕する大型の変異灰熊!
第8話は師匠クロードの圧倒的な黒炎の武威、そしてカナタの実戦初となる『白銀の熾衣』による大型灰獣の撃破!
どうぞお楽しみに!




