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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-2 異世界?

「お前さん、大丈夫かや?」


 崩れ落ちた僕に声を掛けてくるのは、焚き火の近くにいた黒銀色の髪の男性、訛りがあるが言葉は通じる。

 更に奥にいた赤髪の女性も此方に近寄ってきた。

 上がっていた息も整い、速まっていた心拍も落ち着いてきたので、ふぅと一息吐いて立ち上がる。

「あの大きさだと、村人が言っていたこの辺りの(ヌシ)かもな」

 後ろから刀を鞘に納めながら近付いて来る。

「助けていただいて、ありがとうございます」

「なぜこんなところにいるんだ?」

「……よく分かりません。気が付いたら森の中に」

「気が付いたら? なんだそりゃ」

「それまではどこに?」

「仕事帰りで、バス停にいました」

「ばすてい? って何処の事なの?」

「ええっと……田蔵市の田蔵街道の先です」

「は? タクラシ? タクラカイドゥー? 何処なの? それ」

「……え?」


 途中から女性が問い、答えていたのだが、結果がよろしくない。

 多蔵市では無い事は明らかなのだ。

 多蔵市には森が無い。

 そう、森が無い筈なのだ。

 冷静に考えれば考えるほど、有り得ない状況に陥っている事は明らかだった。

 そして、その僕を心配そうに見ている3人。

 その3人の格好が、見た事のない服装に各種の武器も持っていたのだから。

 何か劇の練習かとも思ったが、実際にクマを斬り殺したのを見る限り、あの”刀”()は刃の付いた本物を意味している。


 と、とにかく今、自分の置かれている状況の確認だ。

「ぼ、僕は鷹山朔也(たかやまさくや)と言います。サクヤと呼んでもらえれば」

「サ……サークヤね? ワタシはシーナ・ホゥスカー。シーナで良いわよ」

「わしはターク・マキーヌ。どう呼んでまってもええでな」

「ああ、こいつな、爺さんの何処のだか分からん方言が混ざって聞き取りにくいが、我慢してやってくれ。オレはテリオ・サクームだ。テリオで良い」


「……ここは日本……ですよね」

 一番重要かつ、当り前であろう事を聞いてみる……んだが。

「ニホン? 何処の村だ?」

「いえ、国ですよ、日本国」

「日本国? 此処はテインバーク国だぞ」

 テイン……バーク? なんだって? 日本じゃない? いや、聞いた事もない国名だぞ?

 まさか……いや、そんなの空想の中の話じゃないのか?

 見た事のない髪の色も、染めた物じゃなさそうだし。

 それに何より、嘘を言ってたり芝居をしているような感じは全くしない。

 でも……ここは……異世界(・・・)……なのか?


「おみゃあさん、顔色が悪いじゃん。とりあえず火に当たりゃあ。ぬくとうせにゃ」

「そうね、夜は冷えるわ」

「そうだな、まぁ座れ。丸腰みたいだが、何か食ったんか?」

「え……い、いや。仕事の帰りだったので……何も……」

「そうか。ちょうどいい、熊を捌いて俺たちも少し食うか」

 そうして三人は手際よく、倒した熊を捌いて肉を焼いてくれた。


 分けてもらった肉を食べながら、これからどうしようかと思案する。

 しかし、そうは良い案が出る筈がない。

 情報が著しく欠けているからだ。

 異世界であれば、何故日本語が通じているんだろう。

 まぁ、言葉に困らない分、助かるけど。

 英語だったとしても大学まで出ている身としては何とかなるだろう。

 だが、異世界となると言葉が通じなくてもおかしくはない筈なのに、日本語が通じるとは本当にラッキーとしか言いようがない。

 ……本当に日本じゃないのか? なんて疑問が自然と出てくる。


「そうだ、近くに役所とかないですかね。役所なら何とかしてくれると思うんですが」

「役所? 首都のか? ちょっと距離があるな。近くの村や町の役場でも良ければ連れてってやるが、今日はもう遅い。此処に留まった方が良いだろう。さっきの熊が此処の主であれば近くには他の害獣はいないだろうが、動けば他の害獣が出るかもしれんからな」

「そうね、それに丸腰では何かに襲われたら無事では済まないわよ」

 うんうんとタークさんも頷く。


 お言葉に甘える事にしよう。





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