0-3 行くべき場所
「なんだ、もう起きてたのか」
「あ、はい、おはようございます。あまり寝れなくて。少し体を動かそうと思って」
「お前も剣士なのか?」
「いいえ、以前、剣道を少しかじってた程度です」
「剣、道? 聞いた事が無いな」
テリオさんが声を掛けて近付いてくる。
僕は、既に起きていて、その辺に落ちていた枝で素振りをしていた。
高校の部活で剣道をしていたので、今でも時々こうして素振りをしている。
「ほう、ウチの刀技に少し似ているか」
「?」
「ふむ、少し振るってみろ」
シュ、シュ、とその枝を振るってみる。
「開きすぎだな、もう少し脇を締めてみろ」
シュッシュッシュッ
「うん、そうだな。今度は力を抜いて振るってみろ。難しいか? じゃあ、肘より先の力を入れないように……肘より先が無い物として」
そういえば昔、誰かにそんな事を言われた気がするが、どこの誰だったのかもう覚えてないな。
県大会を突破して全国に行った先輩だったか、と思いながら持った枝を振る。
シャッシャッシャッ
音が変わった。
この感じが面白くなり、感覚を忘れないように無心で振り続けたが、それを見てテリオがニヤリとする。
「朝から稽古? 熱心ね」
「ああ、振るってるのが見えたから、ちょっとな」
シーナさんが呆れた顔をして近付いてくる。
「あなたは剣士なの?」
「いいえ、違います。以前、競技をやってまして」
剣道とかスポーツとかの言葉が通じないと直感して、言葉を選び答える。
「そんな競技があるのね。剣術の競技なんて初めて聞いたわ」
「此奴、鍛えれば面白いかもな」
「あら、テリオが気に入るなんて珍しい。でも本人が付いてくるかは別よ?」
「まあ、サークヤが良ければ……な」
なんだか勝手に話が進んでいく。
「あれま、サークヤを連れてきゃーすか?」
タークさんまでそんな話をするので、僕は慌てて否定する。
「ちょっと待ってください。まだ付いて行くなんて言ってませんよ。とりあえず僕の置かれた状況の確認をしなくちゃ」
「あはははは、分かってるって! まずは役場ね」
ただ、ひとつの道を示してくれた事に僕は感謝した。
三人と共に朝食を済ませ、森の中を下って行くと舗装されていない道があった。
坂を登って行った先に小さな町があるという。
三人も食料補充の為に一緒に行くと言うが、明らかに僕の為だと分かる。
良い人たちだ。
そして、村の入り口まで来たとき、僕は一つの結論に至った。
それは……確実に……異世界に来てしまったんだ、という事。
村に入っても舗装された道路が無い、決定的だろう。
これは現代日本ではありえない。
建物も木造建築であり、且つ現代建築物が全くなかったのだ。
再び膝から崩れ落ちそうになるのを何とか持ちこたえ、三人に向き直る。
「もう、役場は良いです。僕は此処の人間ではない」
そう、分かってしまった、自分は別の世界の人間って事を。
「ここにいても仕方ない。何もできない」
そう、分かってしまった。頼れる人は此処にはいない事を。
「連れて行ってくれませんか、僕を」
そう、直感してしまった。僕はこの人たちに付いて行くべきだと。
「お願いします」




