0-69 久し振りの休日と情報
「久し振りの休みだーーーー!!」
包丁研ぎも、あと2~3日で終わりそうだと先が見えてきている。
サークヤにとっては、実に20日振りの休みである。
勿論これまでも半日休みの日はあったが、一日まるっと休みの日は此処で働き出して初であった。
かといって完全なブラック企業よろしく...という訳でもない。
一日の実働時間は日本時間に直せば、午前中に3時間程、午後3時間程であり、且つ4日に一度、午前でも午後でも好きな方を休めるようにしてくれていた。
この20日間の実働時間で計算すると、日本でいう週休2日で一日8時間労働の会社よりも少ない計算だ。
ただ丸一日の休みが貰えなかっただけである...のだが、やはり休みの日は必要だろう。
という事で、サークヤ、テリオ、ターク、サミヤの四人で大通りへと向かった。
オヤジさんはいつも通り、家で酒飲みだ。
タークも一緒に酒を飲もうとしたが、ザルのように飲むと聞いたオヤジさんがお気に入りの酒だから何人たりとも飲ませんっ!とタークを外へと押しやった。
鍛冶の手伝いをしない人間に飲ます酒はない、という考えのようだ。
今日は、この街に着いた時に見る事の出来なかった、東口の通りをゆっくりと回る予定だ。
この通りには市場に近い事もあり、異国の食材や道具、少ないながらも武器まで並んでいた。
異国料理の本格的な店も並んでいたが、四人は主に屋台の異国やが、ジャンクフードを何軒も梯子して楽しみながら他の店も回るのだった。
「これなんか変わってて面白くないですか?」
「いや、それは流石に実戦向きではないだろう。」
「やが、使い方次第やないかや?」
「そうだな...タークならどう使う?」
「う~む、ほうやな。音玉のような使い方を考えたけど、近場への威嚇くりゃあにしかなりゃあせぇへんわ。」
「まあ、元々害獣を追い払う目的だしな。他を探すか。」
「...じゃあ、 僕が買ってっても良いですか?」
三人が検討していたのは、サークヤの言うところの爆竹であった。
「ねぇ。そんな物を買ってどうするの?」
サミヤが首を傾げて聞いてきた。
「ん?面白そうだし、故郷ではこれをお祭りや遊びで使ってたんだ。懐かしく思ってね。」
「へえ、そうなんだ。サークヤさんの故郷ってど「待った、待ったー!(その話はしんといたってー!)」え?」
サークヤの故郷の話を聞こうとしたサミヤを、タークが止めて腕を引っ張ったのだ。
「(詳しゅうないが、サークヤの故郷はもう無いっちゅう話だぎゃ。あまり触れんといたってちょうすか。)」
「ええっ!(本当ですかそれ。)」
「(本人がゆうとったげな。もう帰る事はできひんらしいわ。)」
「(わ、分かりました。)」
「...ええっと。サミヤさん、タークさん。別に良いですよ、聞かれるくらいは。」
「「聞かれてた(とった)!!」」
四人は他にも色々な店を見て回った。
道具屋では、サークヤのブーツを一足買う事が出来、早速テリオとタークが靴の調整をその場で行って靴屋の主人を唸らせた。
食材はどれも美味しそうで目移りするが、日保ちしない物も多いので今日は買わず、出発前に買い込む物のリストアップをしていく。
「そう言えばシーナさんは何処へ行ってしまったんですかねぇ。」
「本当に何処へ行ったやら...。」
「シーナの情報なら一昨日耳にしたがや。」
「「えええええ~~~~!!!」」
あまりの声量に顔を顰めるターク。
「...まあちょい声を落としてくれんかや。一昨日一緒に飲んだオッチャンが市場の人やったんやが...」
タークが言うには、その市場の人が変わった服を着て長い武器と弓を持った女性が市場の近くで異国人らしき男たちを追っていたのを見たという。
それも、以前サークヤたちが聞いた"ヤクザみたいな奴等"と一緒に。
何か大きな争いが起きなければ良いが...と心配する市場のオッチャンからはそれ以上の情報は無かったのだが、別の飲み仲間からは最近異国の為らず者が街中に増えた関係に絡んでるのではないか、という事だった。
確かにこの街へ来た早々にサークヤが、翌夜にテリオとタークが、それぞれ大捕物を演じている。
相手は密入国した異国の成らず者だった。
それ以降、サークヤたちは屋内の仕事と飲み屋への往復以外では殆ど外出していない。
出ても近場ばかりだったので、外の情報はほぼ入らなかった。
「ワシが何もせんと呑んだくれとったと思ったかや。」
プンスカと怒ったような仕種をするタークだが、案の定...。
「飲んでただけですよね。」「呑んでただけだろ。」「飲んでただけね。」
「うがあああああ!ちゃんと情報集めしとったがやーーー!」
「ええっ!」「嘘だっ!!」「偶々でしょ!」
「...そんな風に見とったかや。」
ガックリと項垂れるタークだった。




