0-70 「ぶっ潰しによ。」
本日夜にもう一話投稿します。
タークによると、昨日の昼間、皆が仕事している間に街へと情報集めに行ってたらしい。
市場のオッチャンが見たと言っていた周辺で聞き込みを掛けた所、シーナらしき女性が”ヤクザ”風の男達と一緒にいるのは暫く前からだと複数の証言を得たとの事だ。
あの形である、確りと人々の印象に残っていた。
「そんな!成らず者たちにシーナさんが囚われてるって事ですか?」
「いや、そうでもないらしいがや。聞くと連中、荒稼ぎは酷いが筋は通す連中やと。なんぞあって与しとると見た方がええが。」
「むう。初日にシーナが姿を消したのは、闇組織の連中に囚われそうになったからって保安隊で聞いたな。だが、そいつらはシーナが返り討ちにして保安隊に捕らえられた筈だが...。そいつらと関係があるのか、或いは...。」
「「う~ん...。」」
考え込む三人。
「まあ何だ。その目撃情報が市場周辺って言うならこの辺にいるのかも知れんな。」
そう意見を出すテリオにうんうんと頷くタークだったが...。
「ねえ、その女性ってあなた達と同じような服装なのよね...。あんな感じ?」
サミヤがそんな事を言って指を差す。
「ああ、あんな感じの...ってシーナ!?」
「ええっ!ホントだ!シーナさんだ!」「ホンマや!」
通りの先の角を曲がって入って行くところだったが、三人がシーナを見間違う筈はない。
三人が走り出す。
「あっ!ちょっとぉ!!」
サミヤを残して。
三人が、シーナの曲がって行った角へ辿り着く頃には彼女は更に角を曲がる所だった。
「「「シーナ(さん)!!!」」」
三人が叫ぶが、気付かないのかシーナは曲がって行ってしまった。
だが、距離は詰まった筈だ。
その証拠に...。
「「「シーナ(さん)!」」」
「え?あら、皆。どうしたの?そんなに息を切らして。」
三人がズッコケた。
「どうしたも何も、シーナが行方不明だからって探してたんだろ!」
「え、行方不明って...ちゃんと言っておいたじゃない。」
「はあ?言っておいたって...誰に?」
「聞いてないの?アンズ婆ちゃんに来たら伝えておいてねって言っておいたのに。」
「...。聞いてねぇ。」
「聞いてないって...聞いたから、あの鍛冶屋に籠ってたんだと思ってたわ。」
そう、シーナはアンズ婆に行き先を伝えて貰うように頼んでいたのだが、それを口にする前にテリオに懐刀の件で叱られて、すっかり記憶から吹き飛んでいたのだった。
「で、今シーナは何をしているんだ?」
「ちょうど良かったわ。皆ちょっと手を貸して。」
「貸してって、一体何をする気だ?」
そう言ってシーナの前を歩いていた人相の悪い男を見やるテリオに...
「何って、決まってるわ。」
その男達に目配せをするシーナは、ニヤリと深くてドス黒い笑みを浮かべる。
「私を攫おうとした連中の中枢をぶっ潰しによ。」
いつの間にか周りを人相の悪い男の仲間であろう男達が、ある建物を取り囲んでいた。
「おいおい、どっから湧いてきたんだ?」
「ちょっ!シーナ、こりゃどうなっとん。」
「テリオさん、これってどうすれば...。」
顔を引き攣らせたテリオたち三人が警戒するが、その者たちの視線はテリオたちではなくその建物の中だった。
「これから此処へカチ込むのよ。中に攫われた娘たちがいるから気を付けてね。」
「「「ええっ!!」」」
そうシーナが三人に話しているうちに、周りの男達が建物の扉を破り突入していく。
中からは怒号が飛び交っているのが外まで聞こえてくる。
「さあ、私たちも行くわよ。」
「「「えっ!ちょっ!!」」」
飛び込んでいくシーナに続いて入って行くテリオ達。
「おい、シーナ。後で色々と聞かせてもらうが、とりあえずその攫われてる娘たちを助け出せば良いんだな?」
「ホッ!そうよ、たぶんヤッ!地下室だと思ハッ!うわ。」
向かってくる男達を殴り、蹴り倒しながら進むシーナ。
仕方なくシーナに付いて行く三人は、横から後ろから来る敵を鞘に収まった剣や刀、素手で倒していく。
「どれだけいるんだ?こいつら。」
「把握してるだけで30人は集まっている筈よ。...ココね、今日攫われた娘もいる筈だわ。」
薙刀のカバーを外して構え、ドアノブに手を掛けるシーナ。
どうやら油断ならない相手が中にいるようだ。
三人も鞘から得物をいつでも抜けるよう構える。
バンッ!
勢いよく扉を開くシーナだったが、中から剣先が飛び出してきた。
キィン!
シーナがそれを避け、テリオが刀で受ける。
「ほう。避けるだけではなく、受けるとはな。」
中からがたいが良く目付きの悪い男が姿を見せる。
更に...
シュン!キィン!!
もう一本の剣先が振るわれてきたのをサークヤが受けた。
「なんや、これも受けるんか。」
今度は小柄なニヤけ顔の男が出てくる。
入口はこの二人が塞いでしまった。
「...シーナ、こいつら俺たちが始末して良いのか?」
「ええ、頼むわ。中に...わっ!」
ゴキンッ!
中から槍先が飛び出してきたが、これをタークが背負っていた荷物を投げつけて軌道を逸らした。
「ああっ!あかんっ!中に今夜飲もうとしてた酒を入れてやんや!」
「...ターク。助かったけど、台無しだわ。色々と。」
「台無しって...ひでぇ言われようだぎゃ。」
「ふんっ!物を投げつけられたのは初めてなのん。」
中から槍を手にした長身細身の女が姿を現す。
「次から次へと...これで全部...じゃなさそうだな。」
テリオが悪態をつくが早いか、短剣が飛んできたのをシーナが見逃さず叩き落とした。
「ケッケッケ!おもろいな、みんな止められちゃったよぉ。」
奥に目を向ければ細身の男が数本の短剣を手に立っていた。
どうやらこれで全員のようだ。
上の階ではまだ戦闘が続いているようで、様々な音があちこちで響いていた。
「ふん、どうやら腰抜けの保安隊や生ぬるい組織の連中とは違うようだな。楽しませてくれよ?」
テリオと剣を合わせていた男が不気味な笑みを浮かべていた。




