0-68 酒飲みの集まる店
四人が貿易都市ミルバエルに来てから15日、3週間が経った。
その間、タークもシーナも行方が分からないままだ。
タークは自ら身を隠していると分かっているのだが、シーナが見つからない事をテリオとサークヤは心配していた。
「ちょっと、心当たりを探してくる。あとはよろしくな。」
そう言ってテリオが出て行った。
サークヤは未だ減らない包丁の山の前で涙目になりながら見送った。
テリオが戻ってきたのはそれから3日後だった。
タークを連れて。
「また増えたっ!!」
「喜べ、サミヤ。こいつは呑むぞ。」
「いや、もういいわ。充分元は取れてるし。」
「なんや?ワシは邪魔モンかや!!」
「じゃあ、あんたも鍛冶出来るの?」
「...いや、ワシは出来ひんがや。」
やっぱり邪魔者ね、と言われガックリとするタークだった。
「タークさんは一体何処に行ってたんですか?」
「アザミさんの所に隠れていた。そこでも食っちゃ寝の生活をしてたらしく、とっとと連れ帰ってくれと言われたよ。」
里出身者の家だ、とサークヤにだけ教えたテリオの顔には哀愁が漂っていた。
「あとな、シーナだが、アンズ婆の所に一時居たそうだ。何やら仕事が入ったと言って出て行ったそうだが、行き先までは分からなかった。」
「ええっ!シーナさんが?無事なんでしょうか?」
「分からん。が、シーナならきっと無事だろう。」
自分に言い聞かすようにそう呟くテリオは、やっぱりシーナの事が心配なのだろう。
その顔が物語っている。
因みに以前、懐刀の研ぎを持ち込んだのはアンズ婆だった。
しこたま怒られてしゅんとしたが、テリオが研ぎ直した事で家族が吃驚する程の笑顔を見せたと言う。
保安隊の方も既にテリオがタークを出頭させてきたというが、かなりコッテリと絞られたようだ。
それもそうだろう、最初に因縁を付けたのはタークなのだから。
タークはサークヤの事を知りたいが為の行動だと言い張ったが、テリオは只の言い逃れだとばっさり切り捨てた。
しかし、それを聞いたサークヤは、喧嘩の原因の一端に自分が関わっていると、タークとテリオに詫びるのだった。
真面目過ぎるぞサークヤ。
「ちゅうか、なんややつれてりゃせんか?サークヤ。」
「え?そうですか?タークさん。」
「あ~、サークヤは最近忙しくてな。」
「...テリオはそうでもないがや。」
「...いや、忙しいぞ俺だって。」
「テリオさんっ!僕の目を見て言えますかそれっ!!」
サークヤの悲痛な叫びだった。
「...ホント、よく呑むわね。」
「此奴は底なしだからな。」
「此処では暴れないで下さいよっ!」
既に余所の席にまで侵攻して他の客と飲みまくっているターク。
「ほうよ、ほんでよ、ワシが表へ出やぁって言ったったんやがー!ほうしたらずっこい奴っちゃで後ろからド突いてきたもんやからそっから殴り合いの・・・・・・」
サークヤの声を完全無視して3週間の騒動を得意気に話し続けるターク。
「あ~、ありゃ全っ然堪えてないな。」
保安隊ではたっぷり半日は絞られていたそうで、付き合ったテリオも巻き添えになったと愚痴っていた。
「面白ぇ兄ちゃんだなぁ!まあ、一杯やんな!おい、店長!酒だ、酒をもっともってこい!」
「がはははは!こりゃうめぇ酒だがや!おっちゃんもじゃんじゃん飲みゃあ!」
完全に余所の客と出来上がっているタークに皆の冷たい目が刺さるのだが、本人はどこ行く風である。
「ねえ、大酒呑みってこの人の事だよね。確かに大酒呑みだけど...何て言うか...蟒蛇もここまで行くとザルね。」
「「はぁ~~~~~~。」」
溜息しか出ない面々だった。
「ちょっと、お客さん大丈夫?ちゃんと帰れる?」
「れぇじょ~う゛、ひゃんとけぇれるっへぇ~!」
「...大丈夫じゃなさそうなんだけどなぁ...。途中で寝ちゃわないでよ!」
「れぇじょ~う゛、しゃみゃひゃん、おや~すみ。うぃっく!」
「おやすみなさい。また来てね。」
「やっと帰ったね。今日も売上更新したんじゃない?」
「主にお酒でね。料理でお客さん集まってたのに、いつの間にか大酒飲みばかりになっちゃって...店長が奥でつまんないって拗ねてたわ。」
「「あ~~~。」」
「さて、帰りましょうか...って、あの人は大丈夫なの?」
奥の席で残っている酒をかき集めてまだ呑んでいるタークを指さす。
「ああ、あれでも一人で帰る事も出来る。底なしなんだ。」
「...それはある意味凄いけど...褒めたくはないわね。」
店長も含めて皆でうんうんと頷く。
翌日から更に大酒呑みの集まる店として賑わい、食事メインであるサークヤたちの居所が無くなって行くのだった。
「もっと料理作らせろーーーー!!」




