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上野の宮(その4)

 上野(かんづけ)の宮は、

「わが聖(ひじり)の、このありがたい教えで、願いが成就すれば、ありがたいことです。」とおっしゃいますと、大徳宗慶が、

「何をご心配になられるのでしょう。この願いは、宮の御心からのものでしょう。かなえて差し上げましょう。しかし、そういう宿世のないものならば、少し心もとないのです。男女の仲は、前世の御縁のままで決まるものなのです。」とおっしゃったそうです。上野の宮は、

「そうであるとしても、わが大事の聖の君、この願いをぜひ成就させてください。」とおっしゃって、先ほど聞かれた御燈明の料と、御幣の料を、全て取らせられました。


 また、貧窮している大学寮の学生(がくしょう)が言うには、

「あのですね、漢籍によりますと、得難い女性を得るには、この世にいる貧窮し家に食する物もなく、頼りにする者もない人。また、学問の道においては、職を得て省試を受け、及第して学問料(学資)をいただいて経験を重ね、世のことわりを重ねて順序を守って世に出て行くもの者なのです。そうあるべきであるのに、才能のある者が身を沈め、才能のない者が出世する世の中。このような人の嘆きをのぞいてやれば、願いを持つ者の望みがかなうと、書いてあるのです。まことに、その通りであると思います。」と言ったそうです。上野の皇子は、

「なるほど、そうであるべきだ。たくさんの人が喜ぶことをすれば、わが願いの一つもかなうであろう。」とおっしゃった。そして、学問の道で才能があるのに身を沈めている者を朝廷や博士に推挙されたり、食べ物がない人のために、銭、衣(きぬ)、米を車に積んでほどこされたり、官職につくべき人で身を沈めている者に、わが荘園をお与えになったりされたそうです。

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