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上野の宮(その1)

 さてまた、上野(かんずけ)の宮という世に忘れられた宮がいらっしゃいました。この皇子は、『ものひがみたまえる皇子』(ひねくれた皇子)だという噂のある皇子です。

「ほんとうに、今、世に栄えている上達部や親王は、みな左大将の藤原の君(正頼)の婿になっている。もうすぐ、われも、婿にするであろう。」と言い、、

「もうすぐ、左大将の屋敷で婿になり、我が住むのに、妻がいては疎まれるだろう。」と言って、これまでいた妻を追い払ってしまったと聞きました。


 こうしてお待ちになっていらっしゃいましたが、姉君たちは、裳着をなさいますと、みな違う方を婿にされました。


 上野の宮は、それでも、

「われを婿の数に入れないなどということはないであろう。」と思い込み、八の君が裳着の儀をなさったと聞き、この方であろうと待っていらっしゃったのですが、左衛門の督(かみ)である藤原忠俊にたまわったと聞き、驚いておっしゃるには、

「奇妙なことだ。左大将は、わが思うことを、まだ行わないのか。」とおっしゃって、たびたび督促の御文を父君に送っていらっしゃるのですが、父君は大笑いをされて御返事はしていらっしゃいません。


「考えてみると、評判の九の宮がいらっしゃるから、この方を妻に望もう。」と言って、わたくしに御文を送って来られましたが、あやし《変な人》と思って、御返事はいたしませんでした。

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