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七郎仲澄(その1)
また、夕暮れに雨が打ち降っている時分に、寝殿造りの前庭に造られた大きな池の中島に、水が溜まっていて、そこで鳰という水鳥が心寂しく鳴いておりました。その時に、同腹の七郎の兄君である仲澄様が、わたくしの方にいらっしゃって、
池水に 玉藻沈むは 鳰鳥の 思いあまれる 涙なりけり
(池水の玉藻が沈むほど水がましたのは、鳰鳥が恋をして思いあまって泣いた涙なのでしょう。)
そう思われませんか。」と言われるので、なんだか変だと思ってお返事をしませんでした。
この兄君は、一風変わった風流人で、たくさんの方から婿になってくださいと正式に申し込まれているのに、いっこうに耳を貸されないのです。まさか、同じ母から生まれたこのわたくしに思いをかけるなどということは、あってはならないこと。
それにしても、御琴をお教えいたしましょうとこちらに来られては、ともに演奏などをして、わたくしの御殿にばかりいつもおられるのでした。




