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ビカットマン  作者: 蟹谷梅児
23 伴我
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 私の弟はとてもつよいと思う。


 けれど、それ以上に迷う人だとも思う。


 だから、そばにいてあげられる人は、あの子よりも心の強い人がいい。きっと「待ってる」とさえ言ってあげればいいんだ。


 でも、それを言える人は少ないと思う。


 私は、ただ……そのひと言を言うのも無理だ。


 あの子がこの世で涙を流すことをすら、待ってやれなかった私のような人間に、そんな言葉を使う資格はなかった。


 思い出したくない過去はある。


 いろいろな悪意に触れた。


 きっとあの子もそうなのだろうと思う。


 けれど、あの子は誰よりも優しさを忘れなかった。


 それでいいと思う。でも、それじゃ耐えられないときが来たら、思う存分悪人になってもいいよ、と思う。


 君が持つ花束ひとつ、守ってあげたいと思うから。


 お母さんが死んだ時、どう思ったのかな。


 お父さんが死んだ時、妹さんが死んだ時。


 家族が1人もいなくなって、悲しかったよね。


 隣りにいてあげられなくてごめんね。


 私、あなたのそばに駆け寄って、抱きしめてあげたかったけど、私が君のお姉さんだってバレるのが怖かった。


 だから、いけなかった。


 君の事より、自分のことを可愛がる酷いお姉ちゃんでごめん。


 でも立ち直ったよね。……あるいは、立ち直ってないけど、たまたまた出てしまったのかな。


 でもそれは、たぶん新沼くんだとか、加賀美くんのおかげだよね。


 私、加賀美くんのことちょっと嫌いだったんだよ。だって、君のこと傷つけたから。君の嫌がることをできてしまう人だから。


 でも君は加賀美くんのいいところを心の底から信じたね。だからあの子も君を信じたんだと思う。


 優しい人になったね。


 お母さんが望んでいたような、強くて優しい人になった。


 君の瞳が眩しいよ。

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