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また、あの夢を見た。
きっとお母さんの記憶。
きっとひとりだけの娘だから、お母さんの記憶を……感じ取ってしまったんだと思う。
あの後のことを思い出すのは辛いと思う。
みんなそれぞれバラバラのところに行ってしまったから。
空波お兄ちゃんは、結局異態家に合流してしまったし……私はそういう世界に触れたくなくて逃げるだけ。
空明もそういうのとは無縁の子供時代を送っていたらしい。
でも、青空だけは違った。異態肉彦とか呼ばれて、背負いたくもない責任を背負わされていた。
私だって、「近所に住んでる」って知ったときは、会いに行ってみたかった。……というより、実際顔は見に行った。
けれど、見ていられなかった。
あんな顔をしているとは思わなかった。まるで何も考えていないような、何も感じていないような顔だった。
けど、違った。
彼は猪地光輝という少年のほうを向いて、「とても優しい子供じゃないか」と小さく言った。
その目がとても輝いていた。
ダメだ、と思った。
その目をする時、人は死ぬんだって思った。
そんな事をいつも考える。
とても優しい少年に成長していた自分の弟に、自分のもう一つの……親からもらった名前のひとつも語れずに……。
私は、ただ……。
……。
諦めてしまった。
あの子に関わりたくないと、本気で思ってしまった。
けれど、私はとても心の弱い人だと思う。新沼くんから「尾島青空」という名前を聞いた時、なぜだかわからないけど、涙が止まらなかった。それに、見ていたいと思った。
二転三転、心が変わっていく。
私の弟は凄いんだ、自分がどんなに傷つこうと、誰かを助けるためなら、自分の嫌なことをやっちゃうんだ。
私の弟は凄いんだ、出会う人みんなに好かれるんだ。
私の弟は凄いんだ、自分が他者に望むのは笑顔だけなんだ。
私の弟はすごいんだ、格好いいんだ。優しいんだ。とっても強くて、格好良くて、優しくて、優しくて強くて、しかも格好いい。
この国の天然記念物。
オオサンショウウオくらい守られるべき人。
超常的な突然変異。
君より優しい人は見たことがない!
……でも、本人はそうは思ってないらしい。
自分のことをいつまでも責めてしまう。自分のことをいつまでも化け物だと思ってしまう。私は人の思考を読んでしまうから、彼を見るたびに、頭が痛かった。
「君は何も悪くない」「大丈夫」……そう言いたかった。
けれど、彼の目が見る見るうちに弱々しくなっていくから、私の言葉一つすら傷つけてしまうかとしれないと思うと、何も言えなかった。
私は、情けない奴だった。




