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零から未来……。
零から?
なんで?
思考の歪みを感じる。
最近はうまく思考を処理できていなかった。
そうする必要も、本来はないのかもしれない。
そうしてしまったので、自分の心は弱く脆くなったのだから。
諦めてはならないことを……再認識。
人を救い、人々の営みを守る……笑顔を守りたい。みんなには幸せでいてほしい。
その願いを実現するためには一体何が必要か?
諦めない心。
ではその心を手に入れるためには?
…………わからない。
どれだけ理屈で物を考えても、理解できない。心というのはどういうふうにして強くすればいいのだろう。
わからない。
理解しているつもりだ。力は自分の望みのためだけに使われるべきではないということを、理解しているつもりで、それを首にぶら下げたことなど一度もなかったつもりだ。
けれど……いまになってようやく、何かが違う、とわかる。
自分の持つ思考回路だとか、思想の根源に、なにかいらないものがある。それをまずすてなければならない。
どうせ身体は再生期間。時間はある。
自分の認識を改めるべきでは? ……そう考える。
シンスケは自分を見つめ直した。
クズ。情けない。弱い。優しくなくて。暴力漢。誰かに愛されたことなどなく、誰かを愛する資格もない。
それがもしかしたら間違っているのかもしれない。いや、確実に間違っているのだろう。もし、間違っていなかったとしても、今この場においてシンスケはこう決める。
「自己を肯定しよう」と。
〝私は優しい〟〝私は情けなくなんかない〟〝私はみんなに愛されている〟〝私はみんなを愛していい〟
もしこの新認識こそ間違ったものだったとしても、「それは違うよ!」という言葉は今後一切無視することにしよう。
自分はこの人生の主人公で。
誰よりもかっこいい。
正義のヒーロー。
とにかく、とにかく、とにかく。
「──……私ってめっちゃかっこいいな……」
「寝起き一発目の言葉キモ……」
シンスケの顔を覗き込んていた朝飛が言う。
どうやらここには朝飛しかいないらしい。
「キモくない。どういう状況か……? シンジは何処か?」
「今出払ってるよ」
そこはおそらく、新沼家なのだろう、と思う。懐かしい匂いを感知した。北上なのかなあ、とも思う。懐かしい空を視認した。
「何故ここに?」
「閃光児だよ。あいつが異態肝徒とかっていう人を呼んで運んでくれたんだ」
「異態肝徒……」
あの女か、とわかる。
「そうか。ありがとう」
「やっぱりやっつけちゃうのか?」
「もうやったよ。少し前に。いまは何月何日?」
「八月十日」
「随分寝てたな……」
「いろんな医者とか、治癒霊術とかってのを持ってる祓い屋を呼んで、治すのにそのくらいかかったんだ。閃光児の神性があったおかげで散らばった脳みそは生きてたし、その他にも、いろいろ……」
「そうか。此処にいるのは君だけか?」
「そうだけど、それがどうかした?」
シンスケは自分の頭を撫でた。髪の毛まで生え揃っている。
「寝てる間、自分の感情を分析して……解釈して、理解した」
「久しぶりの」
「それでようやく、私は私の本当の価値のようなものを理解したよ。私はとても優しくて、強くて、格好いいことが分かった」
「えらいナルシストになっちまったなあ」
「そうだよ私はナルシスト」
そう言って、多少痛む身体を無理やり起こして、立ち上がる。
「ハッピーバースデー。誕生日プレゼントはこの私だ」
しばらく沈黙があってから、朝飛は笑った。
「アハハ。アハハッ、なんだそりゃ。ハハ」
笑って、笑って……朝飛も立ち上がる。
「立ったってことはもう出るんだろ」
「ああ。そうしたいな」
「オートバイクの整備もバッチリ」
「ありがとう。病み上がりのバースデープレゼントのために外出着の準備をしていただきたいな。山だからな、動きやすいようにジーンズパンツ、終わったらこのままツーリングとかいきたいからライダースジャケット。上下白で行こう」
「シャツは?」
「花火の柄がいい。絶対花火」
「なんぼしたって注文が多すぎる」
「あっ、そうだ」
「まだなにか?」
「終わったらみんなで飯とか食いに行こう」
「いいじゃん。今度は消えんなよ」
「消えんよ。消えてたまるか。私は君のものだぜ」
「ナンパ師」
「アッハッハ」




