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五月八日・月曜日。
花巻市。
愛星友幹部・今川仁司は黄色の和装の少年・ミコトと連れだって異態家の男・異態皮忌の待つ喫茶まで向かっていた。
異態皮忌という男は何を考えているか全くわからない。
今川仁司にとってもとても危険なもので、〝光派〟かもしれないというのは、明らかに危惧するべき問題だった。
少し前に異態肝徒が第三拠点を壊滅させたというニュースを聞いた時、この日に待っていた異態皮忌との面会はどうも偶然のものではないように思えてならなかった。
「先生には霊能異理があるので、大丈夫だと思います」
「そうかな、そうだといいんだがね」
「大丈夫ですよ。がんばりましょう」
異態皮忌は窓辺の席に座って、アイスコーヒーを飲んでいた。そして、店に入ってきた今川仁司とミコトの二人を見つけると、立ち上がって小さく会釈をした。
「数年前に木戸寛治を討ち倒してしまった異態肉彦への処遇に関して、異態家であるあなたの言葉を聞きたいと思ったんです。どうですかな、異態肉彦を殺せますか」
「殺せますよ。私は彼よりも遥かに強い」
「では!」
「はい。殺せますよ」
ミコトは目を細め、それを今川仁司に見られないように、「よかったですね、先生」と口元を隠しながら言う。
「奴が生きている限り、我々は世界のことを手に入れられんのです」
「しかし、そう勢い込まさるな。私にも準備というものが必要だ」
「必要なものがあれば、私の権利でなんでも準備してやるよ」
「それはとてもありがたい。では」
ツウ、と。
今川仁司の両肩に赤く一線が通る。所ところから血が溢れ出すと、徐々に痛みが通るので今川仁司は「え?」と阿呆のような顔をした。
「霊能異理〈座颯〉。私は昔から風や空気を操る霊術が得意だった。そのおかげか、相手の知らないうちに相手の腕を切ってしまえる霊能異理が宿ったのよ」
「何故?」
ミコトがどこからともなく取り出した傘を広げて飛び散る血液を遮りながら言う。
「お前のような得体のしれないものに教えてやる事などない。、それに、もう知っているのだろう。その面ぶりからして」
「気になるじゃありませんか」
「では、貴様の正体から明かせ。貴様は何者か」
「ミコトです」
「違うな。ミコトとは異態に引き取られた頃からの知り合いだが、貴様……そんな面はしていなかったはずだ」
ミコトが笑みを浮かべる。
「なにがしたい、きさま」
「暇潰し」
「……き、さま……どうして弟にちょっかいをかける。わ、私は……木戸寛治が尾島一家を殺したと聞いた時、めまいがした! どうせ貴様が裏で木戸寛治をいい気にさせて、実行に移させたのだろう……!? どうして私の弟を苦しめるか!!」
「異態皮忌」
ミコトが静かに言う。
「店内では静かにしようか」
周囲では、悲鳴が響いていた。




