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ビカットマン  作者: 蟹谷梅児
20 変化
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82

 心で望むものが、どういった物なのかは自分にもわからない。


 ただ、そこにあるものだけが真実とは限らない。


 私のようなものを好きになるはずがない。


 私のような情けないだけの、ただの化け物など。


 それは理解しているつもりだけれど、胸のなかに生まれた卑怯なものが、どういう事を言っているのかを聞くたびに、頭が割れる。


 …………。


 シンスケは変わらないことを選んだ。


 自己肯定感だとか、ネガティブな感情だとか、そういうものでは決してないような、もっと卑屈な考え方である。


 加賀美優心だったらいいな、と思う。


 優心はとても優しい青年で、ずっと朝飛のそばにいたから。


 シンスケからしてみれぱ、優心と朝飛はそっくりそのまま夫婦でいても、親友同士でいても似合うふたりだった。


 だから、自分を抜きにしたストーリーの主人公でいてほしい。


「あいつ彼女おるらしいわ」

「えっ」


 シンジが言った。


 どうやら、調べていたらしい。


「加賀美優心ね。あいつ彼女いるらしい。こっそり見に行ったけどイチャイチャがすぎるわ。おれもぶっちゃけあんまり長時間見てられなかったね。あんなラブラブなカップルあんまりいないから」

「…………そんな……」

「なにショック受けてんだよ」


 シンジは「バカがまた変なことを考えているんだろうなあ」ということを理解しつつ、俯いて、とうとう蹲るシンスケを見おろしていた。


「バカだもんなあ、こいつ」


 だとかなんとか、考えながら。


「なあ、シンスケ」

「なんだい」

「お前、もしかしてビカットマンやめたかったりするか?」

「えっ」

「普通の人間に戻って、普通の人間として生きて、ただ普通のおじいちゃんになって、歳取って死にたいとかそういう事考えてたりするか?」

「…………」


 心の、心の、奥の奥の、ほんとうの奥底に、さらにその奥で。


 確かにふと、思ったことがある。


「私は……」

「了解」


 シンジはシンスケの頭をぐしゃっと撫でてから笑った。


「じゃ、お前がちゃんとやるべきことを終わらせてからだな。愛星友ぶっ潰して、異態家とも決着をつけたらだ。その後は俺がビカットマンになってやる。考えてみたらお前、ずっとそれだもんな」

「前は嫌がってたのに」

「人の心は変わんのよ」


 シンジは笑っていった。


「シンスケ、頑張ろうな」


 みんなは、変わっていけるのに。

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