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そして、近くの交番まで子供を届けに行く。
「なに、『贄』だと」
「そうらしい」
「愛星友総帥への贄……か」
「ああ。数日前の愛星友小拠点壊滅のこともある。愛星友と異態家の中でなにかがおこっていて、総帥……というか、教祖のほうもそれを制御できていないので、ここで一発威厳を見せてやろうかという事だと思うが、なにか空気の流れが変わったつもりでいる気がする」
「やべーじゃん」
「やべーんだよ」
「とりあえず、こっちでもいろいろ調べてみるわ。お前その子どうするつもりだ? 家に帰すんならちゃんと警官の格好しろよ」
「わかってるよ」
シンジとの電話を終えて子供の方を見ると、不安そうな顔をしていたので頭を撫でる。どうも交番勤務の警官も話を終えたらしく、「おつかれ様です」とシンスケが言うと、小さく会釈をした。
「それでは、私はこの子を送り届けようかな」
「じゃあ、住所を教えます」
「ありがたい」
子供を家に届けると、その頃にはもうすっかり日が暮れていた。
『なにか危ないことが始まろうとしているのだろうか』
「さぁな。けれど……何が起ころうと、私の目が黒い限りは最悪の事態には陥らせない。どんなにつらくても……やりきろう、閃光児。今は私とお前でビカットマンなんだ」
『うん。……うん! そうだね、みんなを守ろう!』
シンスケは盛岡の紺屋マンションに帰った。
それからすぐに徒歩で愛星友対策本部のほうに向かう。もし敵対者と相対した場合、急に変身をする都合上、オートバイクではなく、徒歩のほうが都合がいいのである。
そうして中津川沿いを歩いている。
これからどうするべきか、とか。
やはり一度いままで愛星友のれんじゅうに目をつけられた人達にもコンタクトをとってみるべきなのだろうか、とか。
しかしなあ新沼朝飛に接触するのはなあ、とか。
そういうことをウダウダと考えながら、とくとくと歩く。
すると、肩がトンとぶつかった。
「あっ、申し訳ない」
「いやこっちこそ……」
目が合う。
あっ、やばい。──シンスケは瞬間的にそう思い、懐に収めていたサングラスを取り出した。
一番会いたくない人だ、と。
「待って」
朝飛は慌ててその腕を掴んだ。
「待って。まだ、滝シンスケにならないで」
「…………」
「……」
「……君は……」
「言いたいこと」
「えっ?」
「ずっとあったんだ。三年も離れ離れで……生まれて初めてできた友達なのに、いきなり離れ離れで、だから毎日言いたいことがたまっていったんだ。だから……言わせてほしいんだよ」
「私は、滝シンスケだ。君の思う、君の知る、誰と思われるのは、私としてもその人としてもきっと嫌なことだと思う。だから、この手を離してくれ」
「青空」
「誰だよ」
「じゃあ、もうはじめましてでいいから、また友達になってくれ……」
「やだよ。……私は君を望んでいない」
「俺が望んでる。友達になりたい。俺友達すくねぇもん。両手で数えられるくらいしかいない。親指が尾島青空で……なら……」
朝飛はその手を離したくなかった。
どうしょうもないくらいに強く握っていた。どうせまた目を離した隙に何処か知らないところへ行ってしまうような気がした。
この男は渡り鳥だから。
シンスケは今すぐ腕を振り払うこともできた。力は目の前の青年なんかよりもよっぽど強かったからだ。
そうすることができなかったのは、何故だろう。
身体が光になっていく。
〝いいじゃないですか! ね! 悪の力でも、いいんです! 悪の力でも人を愛してもいいんです。悪の力でも、人に愛されていいんです〟
「青空」
「…………」
「いつでも待ってる。怪我をしてたら治るまでそばにいるからそのまま来い。ボロボロならボロボロのままそばにいるからそのまま来い。お前が……青空になるって日……女房気取りで待ってる」
シンスケから光が溢れ出した。その光が朝飛を貫き……朝飛は「いってぇ」と小さく跳ねた。
「な、何すんだお前……!?」
「私じゃない……」
『僕でもないよ。新沼くんは大丈夫かい? 身体に異常は?』
「身体は大丈夫か」
「いやとくに変わったところとかは……」
身体をペタペタと触る。腕だとか、脚だとか……そういうところに怪我ができた訳でもない。「お前から見てなんか変わった所ある?」とくるくる目の前で回られる。白いうなじが目についた。
「……いや……」
「なんだったんだよ今の。なんかのメタファー?」
「私をなんだと思ってるんだ……」
まぁいいや、と。
しかし、しばらくして……朝飛は何かに気づいたらしく、自分の股間に触れる。
「下品なことはやめなさい。人前で。不潔な」
「あれ?」
「どうかしたかい」
「チンコなくね?」
「そんなわけないだろよく探せ」
「ねぇって。見てみろよ」
「あれっ、お前チンコなくない?」
だよねッ、ないよねッ……「チンコ」ッ!




