78
しばらくしてから、シンスケはジャケットを雑に着て部屋を出た。
外に停めていたオートバイクに跨って、多少の無理を利かせるために、尋常維持局の日本工作部に電話を入れて、岩鷲大学に走った。
なにか動いていないと気が散って、よろしくないことばかり考えてしまうので、いらんことでも何かをしていたほうがいいだろうと考えたのだ。
工作局は岩鷲大学にたいして、「尾田空明の遠縁の親戚が死んだので、すぐに帰宅させよ」という連絡を入れた。
空明はそれを聞いて、「遠縁の親戚……?」と頭にはてなマークを浮かべたものだけれど、サングラスをかけたシンスケが迎えに来ると、すぐにそれに従った。
「私が家まで送るよ」
「ありがとうございます」
「どうも」
駐車場まで行くと、「いますよ」と空明が言う。シンスケは「いる?」とわざとらしく頭をかしげた。
「新沼先輩や、加賀美先輩。ふたりとも、いまいますよ」
「……そうか。そういえば、あの二人は……君の、高校時代からの先輩だったらしいな。いい先輩か?」
「はい。もうひとり、いい先輩がいました」
「そうか」
「あの二人に会いに行かないんですか」
「用事もないんでな」
「あっちは多分、ありますよ」
「ハハ。君をナンパしたんでか? 君を抱けるというのは、ありゃあ嘘だ。私に男を抱く趣味はない。安心しなさいよ」
「わかりますよ、そのくらい。でも、新沼先輩は、わかっていても少しショックを受けたような顔をしていました。あなたの言葉で……自分に対する気持ちというのが……」
「何故?」
「何故って」
「私と彼は、あの日に会ったばかりだろ」
空明はもうこの事を何も言わなかった。そのかわり、すぐ後ろで「ばか」という少女の声が聞こえてきた。シンスケはその声が妹のものに思えて、瞬間的に振り返った。
「どうしたんですか?」
「いや……いま……いや、うん。ごめんな。なんでもないよ」
「そうですか」
二人は北上市の田園のなかにある民家に向かった。
到着すると、ドアチャイムを押した。
すると、中学生二年生ほどの少年が出てきた。
「猪地光輝くんだな。私は国際特別警察機構直下組織尋常維持局所属、祓い屋・滝シンスケ。こちらは、尾島青空の弟だ」
「えっ……!?」
「君、今日は平日でなかったかな?」
「創立記念日で休みなんですよ。何のようなんです?」
「この尾田空明という青年は、尾島青空のビカットマンのように、姿形を変えることができる。つまり、変身態になれるわけだな。なってみせてやれ、尾田空明くん」
「こ、ここでですか!? い、一応屋外がいいな……」
「何故?」
「いろいろ飛び散るので……」
「ンン。ならそうしなよ」
空明が青い戦士に変身してみせると、光輝は興奮したように目を輝かせた。
「これは、ビカットマン二号か?」
「えっ、何、二号?」
「いや、違いますよ! 水の力を使うヒーロー……! 僕、考えたことあるんです。バシャットマンだ!」
「えっ、何、バシャットマン?」
「ビカットマンは光の戦士ですけど、バシャットマンは水の戦士なんです! 見ていきますか?」




