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ビカットマン  作者: 蟹谷梅児
19 安堵
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 しばらくしてから、シンスケはジャケットを雑に着て部屋を出た。


 外に停めていたオートバイクに跨って、多少の無理を利かせるために、尋常維持局の日本工作部に電話を入れて、岩鷲大学に走った。


 なにか動いていないと気が散って、よろしくないことばかり考えてしまうので、いらんことでも何かをしていたほうがいいだろうと考えたのだ。


 工作局は岩鷲大学にたいして、「尾田空明の遠縁の親戚が死んだので、すぐに帰宅させよ」という連絡を入れた。


 空明はそれを聞いて、「遠縁の親戚……?」と頭にはてなマークを浮かべたものだけれど、サングラスをかけたシンスケが迎えに来ると、すぐにそれに従った。


「私が家まで送るよ」

「ありがとうございます」

「どうも」


 駐車場まで行くと、「いますよ」と空明が言う。シンスケは「いる?」とわざとらしく頭をかしげた。


「新沼先輩や、加賀美先輩。ふたりとも、いまいますよ」

「……そうか。そういえば、あの二人は……君の、高校時代からの先輩だったらしいな。いい先輩か?」

「はい。もうひとり、いい先輩がいました」

「そうか」

「あの二人に会いに行かないんですか」

「用事もないんでな」

「あっちは多分、ありますよ」

「ハハ。君をナンパしたんでか? 君を抱けるというのは、ありゃあ嘘だ。私に男を抱く趣味はない。安心しなさいよ」

「わかりますよ、そのくらい。でも、新沼先輩は、わかっていても少しショックを受けたような顔をしていました。あなたの言葉で……自分に対する気持ちというのが……」

「何故?」

「何故って」

「私と彼は、あの日に会ったばかりだろ」


 空明はもうこの事を何も言わなかった。そのかわり、すぐ後ろで「ばか」という少女の声が聞こえてきた。シンスケはその声が妹のものに思えて、瞬間的に振り返った。


「どうしたんですか?」

「いや……いま……いや、うん。ごめんな。なんでもないよ」

「そうですか」


 二人は北上市の田園のなかにある民家に向かった。


 到着すると、ドアチャイムを押した。

 すると、中学生二年生ほどの少年が出てきた。


「猪地光輝くんだな。私は国際特別警察機構直下組織尋常維持局所属、祓い屋・滝シンスケ。こちらは、尾島青空の弟だ」

「えっ……!?」

「君、今日は平日でなかったかな?」

「創立記念日で休みなんですよ。何のようなんです?」

「この尾田空明という青年は、尾島青空のビカットマンのように、姿形を変えることができる。つまり、変身態になれるわけだな。なってみせてやれ、尾田空明くん」

「こ、ここでですか!? い、一応屋外がいいな……」

「何故?」

「いろいろ飛び散るので……」

「ンン。ならそうしなよ」


 空明が青い戦士に変身してみせると、光輝は興奮したように目を輝かせた。


「これは、ビカットマン二号か?」

「えっ、何、二号?」

「いや、違いますよ! 水の力を使うヒーロー……! 僕、考えたことあるんです。バシャットマンだ!」

「えっ、何、バシャットマン?」

「ビカットマンは光の戦士ですけど、バシャットマンは水の戦士なんです! 見ていきますか?」

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