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四月二十八日・木曜日。
岩手県盛岡市・紺屋マンション。
シンスケは、日本に帰ってきてからはじめて休日というのができたので、マンションの自室にシンジを呼んだ。
そこで、シンジに、イグナイターを渡す。
「これは……!?」
「光力増幅点火変身装置イグナイター……それの、二台目だ。もし、私が愛星友と戦っているうちに、何かがあったら、私はお前にビカットマンを引き継いでもらいたいと思っているんだ。このことは、フランスにいた頃から考えていたんだ」
「何かがあったら……!? 何かがあったら、って、それどういう意味だよ。死ぬとか、そういうことか」
「それもあるかもしれない」
シンジはグ……と拳を膝の上で握り締めた。
「それ以上に、私が戦いたくないと意地でも思ってしまうときがあるかもしれない。例えば、私の心が完全に折れきって、人格すらも捨てたり……意識不明の重体に陥ったり、そういうことがあったら、戦うのはお前なんだ」
「何故俺なんだ? もっと適任がいるかも知れないだろ、それこそ日本最悪の祓い屋だとかっていう寒河江ハヂメだとか、飛騨峰志郎だとか、そういう強い祓い屋がいるだろ」
「お前しかいないと思う」
「なんで……!?」
「フランスにいた三年間を考えると、あたりまえのことと思う。おまえは、私の立場で物を言ってくれることが多々あった。それに何か得体のしれない勘の良さというのがある。飛騨峰志郎にも感じたことのある鋭さだ」
買いかぶりすぎじゃないか、とシンジは考える。
「これは私だけの決断ではないんだよ。神戯閃光児もお前には力の一部を分けてもいいと考えているらしいんだ」
「い、や、だ……」
シンジは振り絞るように、頭を伏せ肩を引き上がらせながら声を出して、イグナイターを押し返した。
「お、お前はわからないと思うけれど……俺にとってお前は……ヒーローなんだ。俺はお前が戦わないなら、それでいいと思う。戦えないって言うんなら、それでいいと思う。でも、『だったら俺が戦う!』とはなれない。まるで、『お前じゃなくても別にいい』ってなるみたいで……お、俺は嫌だ……」
「シンジ」
「だから、俺は嫌だ……」
「んん……」
シンジが逃げるように部屋を出ていくのを追いかけもせずに、彼はソファに崩れるように落ちた。
神戯閃光児がシンスケの中で「ふられてしまったね」と言う。
「また私は、なにかやってしまったのか」
『君はコミュニケーションが苦手だからね』
「こういうの、しょっちゅうだ」
『一緒に成長していこう』
「おまえはいつもやさしいな」
『君の背中を見て育つんだもの』
「のたまいなさる……」
『まだ、夜には悪い夢、見るかい?』
「…………」
『尾島くん?』
「あの日から一睡もしてないよ……」




