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愛星友準幹部・島田金次郎の両腕と両足をもいで、ロープでひとまとめにして持ってきた大きなポリ袋に入れたものをぶら下げて歩いていると、門の前に男がいる。
黄色のジャケット、黒いシャツ、黒いズボン。
それは、異態肉彦……滝シンスケである。どうやら愛星友の拠点を探すために巡回していたところで、この惨劇を目にしたらしい。
「あ、異態肉彦」
「…………」
「ここ、汚くてごめんね。でも、もう片付けたから安心してね」
「…………」
「どうしたの?」
「何者だ、君」
「私は。ハハ。まだ知らなくてもいいよ」
「どうしてここまで……」
「いけないことをしたつもりはないよ」
「……。そうか。……そうか、そうか。……わかったよ。これは……私の思想だものな。君は関係ないものな。わかっているよ、分かっているんだけど……これを、君一人でやったのか? それだけは教えてほしい」
「そうだよ」
「そうか」
シンスケの肉体が黒く染まっていく。じわりじわりと光が溢れ出して、その光が止むと、ビカットマンがいた。ところどころに赤い模様のある「赤のビカットマン」である。
「どうしてかな」
「君、強いだろ。拳ひとつで、人を殺せるほど」
「よく分かったね。ああでも、実力者なら相手の実力も分かっちゃうって言うし、それもある意味当然のことと言えるね。君も相当強いでしょ、きっと普段もね。私も実力者らしいね」
「何故、執拗に傷つける?」
「え? なに?」
「何故、執拗に傷つける」
「だって、こいつら悪いやつだもん」
「拳一つで人を殺せるなら、拳一つで済ませるべきだ」
「それを言うなら君もじゃん」
「なに」
「木戸寛治、たくさん殴って、何回か殺したじゃん。私、あの時の様子見てたんだ。もちろん遠くでね。君がそれを言うのはちがうんじゃないかなって、私は思っちゃうんだけど?」
「確かにそうだ。しかし、このハゲどもは……木戸寛治よりも遥かに弱い。私や君からしてみれば、赤子のようなもののはずだ。どうして、相手に遠慮してやることができない。強いのに」
「でも、痛めつけてやらないと反省できないでしょ」
「程度がある」
ビカットマンが肝徒に寄っていく。肝徒はポリ袋を投げて木の枝にかけると、黒いジャケットを脱いだ。そして、ビカットマンが拳を振り上げた途端に「私は異態肝徒だよ」と誂うように言う。その言葉でビカットマンが揺らいだ。それを隙と見て、肝徒はビカットマンの脇腹に蹴りを叩き込んだ。
「私は、異態肝徒。君と同じ異態家の人間だよ」
「…………」
「何もそんなに動揺しなくてもいいじゃない」
「異態家……初めて見た……」
「尾田空明も異態の人間でしょ」
「彼は……善良な男に育てられた一般人だ」
「じゃあ私も一般人だ」
「貴様は違う。人の命を……人の命とも思わない、人間の屑だ! 猫のゲロ以下の存在だ! それがどうして……一般人だと嘘を吐く! 貴様は醜い化け物だ。貴様も、私も醜い化け物だ……!」
「確かに、それはそうだね」
ビカットマンは立ち上がりながら、青のビカットマンに再変身すると、木々を操り、肝徒を縛り付ける。
「でもさあ、こいつらは……人の事を人とも思わない化け物だ。私たちと同じ化け物だよ。優しくしてやる事なんて本当はないんだよ。君には分からないのかな、私のこの怒りが」
「怒り、だと。異態の人間の分際で」
「君もそうだろ。異態肉彦。……君と私の違いなんて、神として作られたかどうかなんだよ。本質は同じ。……いや、違うのもあるか」
「なに」
「いいかい、異態肉彦。れんじゅうは、子どもの命すら簡単に奪ってしまうんだ。それが自分たちの計画を達成するのに必要な犠牲であれば、涙を流すこともなく使いつぶしてしまうんだ。そんな異常者が寄り集まって、自分たちの行いが間違っていると、どうして気付ける? 気付かせてあげなくちゃならないんだ、そのための拳なんだ」
「しかし」
「誰が好き好んで、人を傷付けるか」




