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ビカットマン  作者: 蟹谷梅児
17 臨戦
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 月の明かりが薄らと出始めると、八畳ほどの管理人小屋に、そこを利用していたグループを集める。


 シンジが到着すると、「逃げられた」「なるほど」と言い合い、聞き込みを開始する。あの怪異の姿を見たのか? あの怪異の声を聞いてしまったのか? などということを、聞くのだ。


「それじゃ、やるか」

「だな」

「私は変身を解除してから行くので、先に入って名簿などを確認していてくれないか?」

「あいよ」


 シンスケは変身を解除すると、神戯閃光児に「私がやるしかないのかな」と訊ねる。神戯閃光児は「尾田空明くんは、あまり強くないので、やはり君と僕の黒の水が必要なんだろうね」と言った。


「だよな」とため息をつく。


 それから汗を拭いて管理人小屋にはいると、呆れたような哀れむような顔をしたシンジが利用者名簿をシンスケに渡す。


 それを見て、その顔の意味を理解した。


 新沼光介……朝飛の父である

 新沼春花……朝飛の母である

 新沼旭………朝飛の兄である

 新沼夏光……朝飛の姉である

 新沼朝飛……ね!

 加賀美優心…朝飛の友人

 尾田空明……朝飛の後輩、友人


「えっ」


 いま一番会いたくない人間大集合!


「えっじゃねぇよ。ほら行くぞ、仕事しなくちゃなあ〜〜〜〜!! 滝シンスケェェ〜〜!!」

「面白がるなバカタレ……!!」


 シンスケはサングラスをかけ、「それでは」と話を始めた。


「私は国際特別警察機構直下組織尋常維持局所属、滝シンスケ。こちらは同じく辺見シンジ。あんた方が目撃した生き物は、『怪異』と言い、つまり妖怪だとか幽霊だとかの類いであるとは思うのだけれど……どのような容姿をしていたかとか、そういうのがわかれば教えてほしいんな」

「声とか聞いちゃったよーって人いたら挙手してや」

「たぶん、声は全員聞いたかな」


 優心が答えた。彼以外が頷く。


「なるほど。何と言っていましたか?」

「あんた知ってんじゃないのか」


 朝飛が言う。


「私も先ほど到着したんでね。悪いけれど聞いてないな」

「そう」

「んん……じゃあ、声を聞いたとき、どんなふうだったか分かるかい? たとえば、体調が悪くなったとか、そういうの。あれば教えてほしい。些細な変化でもいい」

「そういうのはなかった」

「ほんとうに? ほんとうに? そうかい?」

「本当だよ、何疑ってんだお前」

「ハハ。了解。じゃあ次に……」


 空明と目が合う。


「なにか?」

「いや、その……」

「ん?」

「どこかで会った気がしたので……」

「ナンパかい? 申し訳ないけど悲しいね、私は野郎に興味がなくてなあ。ああ、でも……君のようなのは女のカッコさえしてくれりゃあさ……」

「おいコラ。お前……お前……」

「久しぶりの日本人だぜ、ハハ。ハハ。誂うくらい良いだろ」

「フランスでもそうだったじゃん!!」

「茶化すなよ。見なさい、私がせっかく和らげてやろうとした雰囲気が台無しだ! 君何か面白いことをしなよ」

「バーカ。お前もう一生黙ってろ」


 こいつらでやることなくなったし帰すか、ということになって、空明が「僕は残りますよ」と声を発した。


「ダメだ」


 シンスケはそう返す。


「なんでですか、僕は……信じてもらえないかとしれないけれど、変身できるんです。怪異と、融合して……」

「あの青いやつだろ。わかるよ。でもだめだ」

「でも……」

「ダメだ。理解しなさい。ここからは、お仕事の時間なんだから、わかるかい? 君は高校生か大学生……くらいだろ? だから、ダメだ。民間人が関わるような事件じゃない」

「けど!」

「んん〜〜〜面倒くさい! シンジ、やっちまえ!」

「お前さぁ……」

「なに」

「真面目に相手してやれって」

「時間の無駄だろ」

「せめてなんで関わっちゃダメなのかくらい言えって。納得せんだろ。『戦える力がある』と思ってる奴に『君は民間人だから』って言ったって。自分は対抗できると思ってんだから」


 シンジにそう言われ、シンスケは長めのため息の後に、言う。


「わかったよ」

「何故! ダメなのですか〜〜!?」

「尾田空明くんだっけ? 君が弱いからだ」

「僕が……弱い……!?」

「弱いだろ? 君は……そうだなあ、納得できないか。百聞は一見にしかず。外に出よう、変身しなさい」

「…………」

「変身、しなさい」


 空明は変身して小屋の外に出た。シンスケはジャケットを脱ぎ、雑に地面に落とす。


 シンジはそこにいた全員に「見てみようか」と言った。窓から外を眺める。


「キックを撃ってみよう」

「えっ」

「私の身体にだ」

「いや、でも」

「やれ」

「…………」


 空明は、逆らえず……蹴りをシンスケの身体に叩き込む。シンスケは、それを霊術も使わずに防いでしまった。


「じゃあ、次は私の攻撃を防いでみなさい」

「わ、わかりました」


 シンスケは霊術も使わずに軽く空明を蹴る。すると、空明はまるでサッカーボールのように吹っ飛んで行ってしまった。


「わかるかい、君の弱さが。きっと私でもあの怪異には勝てんだろうし……君となると、効きもしない。それは君が一番よーくわかるはずだ。勝てんなあ、勝てんねえ。だから、邪魔になるから、帰れ。な?」

「でも……」


 シンジが小屋の窓を空けて茶化すように言う。


「勝てないならどうするんですか〜」

「そりゃあお前、封印しかないだろう!」

「封印……?」

「私の大得意は結界の構築だ。倒せないなら封印してやればいい。ただそれだけのこと。もっとも、こんなことわざわざ話してやる義理もないんだがね」

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