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ビカットマン  作者: 蟹谷梅児
16 仏国
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 シンスケ、シンジ、マカリア、テレサ。

 この四人はシンスケというクソデカ目標が煽り散らかしてくるというのもあり、互いに高め合うようになっていた。


 訓練生時代の三年間は、おもにこの四人で活動し、ISPOという組織や、そのなかの尋常維持局という組織において、この四人は「バカ四人衆」という名で通っていた。


 卒業が決まり、配属部署も決まったところで、日本から二日遅れて手紙が届いていた。その手紙には「愛星友、活動開始、直ちに帰国せよ」とのみ書かれている。


「シンジ、日本に帰ろう」

「おっ、いいね。丁度ホームシックになってたところなんだよ」

(マカリア)から借りた十万の借金を踏み倒したくて仕方がないってのは、ホームシックとは呼べんよ」

「ハハハ」

「ハハハでなく。まったく、早く準備をしなさい。さっさと逃げるように帰るよ、行く先は盛岡だ」


 祓い屋としての公認資格証を受け取ると、すたこらさっさと帰国の準備を済ませ、空港に向かっていたが、どうやらそれを察知していたらしいマカリアとテレサは空港で待ち伏せをしていた。


 そして、二時間の逃走劇および格闘のもと、二人は五万ずつ失うことになり、シンスケは少し泣く。


「どうしてこんな祝福されるべき旅立ちで大金失わなければならないんだ。私が君たちに何かしたか?」

「私はそれ以上の大金失ってんのよ」

「何かされたしね」

「しみったれた吝ん坊はモテんぜ」

「なぁにが吝ん坊だ! 十万も貸してやりゃあ聖女だろうが!」

「聖女にしては言葉遣いが乱暴だぜ」

「死なすわよ!」


 マカリアは「フランスに二度と来るなよ!!」と叫び、「お前がいるうちゃ来ねぇよ」とシンジが返す。


「俺はまだ実家があるけどお前どうすんの?」

「君にはまだ実家があるだろ」

「居候すんの? やだなぁ、三年間同室じゃん」

「君が私を寂しくならないか、私は心配で心配で」

「冗談じゃねぇよお前〜、お前なんてのね、三年も一緒にいりゃ飽きんだよ。お前マジでうち来るなよ」

「つれないな。そんなに嫌いか? 君たしか二十一歳だろ、いけないな。そんな歳にもなってあれが嫌いこれが嫌いってのは。女にモテないぜ。いいかい、男ってのは来るもの拒まずなんだ。尻の穴かっぽじられる覚悟で、不退転の決意で生きなさい」

「うるせぇぞカス」


 日本に行ったらやることがそれなりにあるなぁ、と考えてみる。


 警察への挨拶もあるし、神戯閃光児も猪地光輝に会いたいというし、シンスケ自身も、そろそろ新沼朝飛や加賀美優心との縁が切れたので遠目でいいので、今どういうふうに過ごしているのかというのを見てみたい。


 訓練生の頃は、何度か国際電話で「二人の声を聞きたいので、こっそり録音したものを聞かせてほしい」と智和に頼んだことがあったが、智和は冷たくて「君の変態趣味に付き合うのは嫌だ」と言って付き合ってはくれなかった。


 どうやら智和は、二人に黙ってフランスへと経ち、それだけならまだしもよく知らん男を相棒と言っているシンスケのことが薄っすらと嫌いになっているらしい。


 そんな子供みたいな駄々を捏ねられても困るんだよなぁ、とシンスケは思いながら智和のご機嫌を取るのは面倒だから、と思いに至る。


 ──まぁどうせ日本警察より尋常維持局所属祓い屋のほうが権力は上だし、いいか。と。


 学生時代はあまり目立たなかったが、シンスケはちゃんとした人たちからはちゃんと嫌われることのできる生粋のカスである。


 二十歳を迎えて、そのカスを主に前面にだせるようになってしまったのである。このように、なんか薄っすら嫌な進化を遂げてしまった彼を止められるものは、誰もいない──!!


「そういえば、お前ってなんか高校時代の友達とかまだ岩手にいんのかな」

「大学生だろうし岩手なんもないから東京とかに行ってると思うが、二人とも心根の部分が根暗だからまだ北上にいる可能性はある」

「お前は人を攻撃しないと気がすまない心の病気なのか?」

「そんなに嫌なこと言ってないだろ」


 北上は今どんなふうになっているんだろう、盛岡はどんなふうになっているんだろう、というところも純粋に気になったりする故郷に哀愁を感じる青年であるので、シンスケは用心深く過去を思い返し、自分の罪を日本につくまでに再認識しておく必要があった。


 神戯閃光児は飛行機の外を見たくて見たくて仕方がないというような調子で、仕方がないので外を見てやることにした。


「会いに行くの?」

「遠巻きに顔は見るが、直接お話とかはしないね」

「なんで? 会いたいんだろ、会えよカス」

「君ね、人はそんなに簡単じゃない。そもそも三年経ってるんだよ。彼らだって大人だし、三年も経ってりゃ各々の生活がある。縁が切れてるんだ、今さら会いに行ってもそりゃ同窓会でしかないだろ」

「お前ってなんなんだろう、薄々わかってはいたけれど、やっぱりお前って人のことがわかんないのか?」

「そういう病気なんだよ。だからなんだ? 間違ったことは言ってないよ。そもそも俺は彼らにとって『一年間だけ一緒にいた同級生』なんだし、そもそもの繋がりが薄いだろ。君は三年間一緒にいたので、お別れとなれば悲しいし、再会できるなら泣いて喜ぶけれど……あの二人はそうじゃない。君、高校時代の友人と会って泣くほど嬉しいか?」

「そんなわけなくね?」


 それはそれで冷たいな、と思いながら「だろ?」と返す。


「つまり、彼らにとって俺というのはそのくらいの存在なんだよ」


 アア、日本が見えてくる。

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