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あの時、彼が消火し助けた少女は身体が動くようになると、発作的に飛び降りて自殺した。少女の両親は泣き叫んでおり、その声を聞いた彼は、俯いたきりしばらくそこから動かなかった。
日々……日々……少年少女が死んでいく。ひとつの高等学校が潰れるほどの人数の少年少女たちが、健全な若い命が潰えていく。
彼にとって、これは耐えられないことだった。
しかし、どこをさがしても木戸寛治という男は見つからないので、彼は焦ったし、相当腹が立っていた。
毎日夜遅くまで休みなく聞き込んでいたり、動き回っていたり……そうしていたけれど、十二月十六日……ここまでしても見つからなかった。
「おい、風邪引くぞ」
「コートは羽織ってる」
「ずっと飯とか食ってないだろ、なんか食いに行こうぜ。あったけーやつ。ラーメンとかさ」
「……」
「あのさぁ〜」
「林田照太郎くん」
「あ?」
「焼肉を食いに行こう」
「え、えぇ〜〜? サイコパスなの……?」
「行こう」
「いや別に、俺は別に良いんだけど。……えぇ〜? こわ……」
怒りだけで動いても、なせるものもなにもない。たらふくに飯を食って、ちゃんと健康に健全になって、しっかりと……地に足をつけて、生きていこう。ちゃんと調べよう。
「家族が死んだすぐあとに、焼肉に連れて行かれたことがある」
「めちゃくちゃ嫌われてたの?」
「ハハ。林田照太郎くん、君が『家族』がひとつきりでないと言ってくれたの、とても嬉しかった。ありがとう」
「おう」
「探そう、木戸寛治を」
「おう。といっても警察だって動いてるだろうし、捜すのは警察に任せるってことも別にいいと思うんだよな。なんか不都合あんの? お前、警察と連携したら?」
「警察は……『お家に帰ろう』と言ってくる可能性もあるので、あまり頼りたくない……」
「家出してんの?」
「かくかくしかじか」
「そりゃお前が悪いわ。ほら、警察行くぞ」
「君警察行ける人間か?」
「あ? しばくぞ」
「未成年喫煙……そして、銃砲刀剣類所持等取締法の違反」
照太郎は懐に拳銃を隠し持っていた。
「バ〜レなきゃ捕まんねって! 良いから警察行くぞ」
「君はあれだな……強すぎるな……変装したいな、変装させてくれ。別に警察自体は良いんだけれど、会いたくない人たちがそこにいるかもしれないので、変なアレがおこりえないように……」
「お前は弱いやつだな。つけ髭とかすんの?」
「髪の毛を……染めます……」
髪の毛を金色に染め、顔の半分を染め、サングラスをかける。
「やんちゃな不審者って感じ。出頭みてぇじゃん。恥ずかしいからネックウォーマーとれよ。グラサンはまだしも」
「私は目の形が良いからバレるかもしれない」
「じゃあ帽子深めにかぶれ。それなら問題ねぇだろ」
「つばの広い帽子をくれ」
どんだけ会いたくねぇんだよ、と呆れながら不審者コーデをキメると、ふたりは警察署に行った。
「ほら来た」
「なんと、飛騨峰さんは勘の良い人だなぁ。そっちの不審者は尾島くんだな?」
「私は、異態肉彦である」
「尾島くんだ。わかるよ、発火事件だろ」
「犯人はおそらく愛星友幹部の木戸寛治だ。なんらかの情報を掴めていたら、どうか教えていただきたいところだが、その様子だとまだか?」
「いま県内全域の防犯カメラだとかを確認して、調べてるところだけど、最近では、その木戸寛治かはわからないけれど……鉈屋のあたりで不審な人物は確認されているよ。見るかい?」
「頼む」
映像の準備が始まって、人払いも行われた。
もし仮に、彼の「会いたくない人たち」が来たとしても、追っ払ってくれるのだそうで、彼は安心したような顔をしていた。
「どうだ?」
「……こいつだ。こいつで間違いない」
「そうか」
「これ以外にはのこっていないのか? 盛岡にはいるのか?」
「そこは今調べている。おそらく猪去のあたりだろうというところまではわかっているのだけれど……確定ではない」
「猪去ってスマっこのところか。確かにあそこ家とか少ないから、隠れるにしたらもってこいかもしれないけどさ」
彼が立ち上がる。
「もう行くのかい」
「ああ。行かせてもらうよ。あとは自分の足で稼ぐのが私のスタイルだからね。……そうだ、私のことあの二人には話さんでくれよ」
「なぜ? 彼らは君をたいそう心配している」
「私と彼らの縁が切れるまで、私は彼らの前には現れないつもりだ。理由は説明しなくても理解できると思うが……」
「そうかい。難しい年ごろだものな」
ふたりは警察を出て猪去に向かった。
いろいろな場所を巡り、木々に囲まれた林の中が怪しいぞというところまでつきとめる。
林の中には小屋があり、彼はその戸を叩く。




