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ということで!
「ついて来てしまったねぇ」
「なんでついて来てんだ、お前……」
「私は愛星友を潰すための活動をしているのでね、気になるんだなぁ。その愛星友にはまっているアホに」
「人の祖父をアホって言うな」
「アホだべじゃ。カルトにハマってアホでないなら何か? 病人?」
「人の祖父を病人って言うな」
彼は少年・林田照太郎の家に来ていた。
祖父との三世帯でのくらし。
照太郎の祖父はリビングにあるソファにどっかりと腰をおろし、茶を啜っていた。
「貴様、愛星友の信者らしいが、どういう腹づもりか?」
「いきなり現れてずいぶんな言い方じゃねぇのかよクソガキ」
「そんなこと、クソジジイに言われたくはないがね。貴様、あのれんじゅうがいったい何をしているか、知らんのか」
「知っているさ。私はこれでもかなり良い立ち位置にいるんだぜ」
「ほ〜お」
「なんでいきなりバチってんだお前ら」
「照太郎、おまえとんでもないものを連れて帰ったなあ」
照太郎の祖父がほとんど笑いながら言った。
「こいつのことわかんの?」
「愛星友にいて、このガキを知らんのはいない。コレは『異態肉彦』……愛星友が信仰する神だ」
「は!?」
「そうだ、私は異態肉彦。だが、れんじゅうの神様になってやるつもりはない」
「わかるさ。たびたび邪魔をしてくるそうじゃないか。私にも『異態肉彦を殺せ!』という指令がたまに来る。来るたび断っているがね」
「断ってる?」
それは、彼にとって意外な言葉だった。
「何故?」
「私はそもそも愛星友を憎んでいる。私はかつて、れんじゅうに妻を殺されているんだ。あの信者が、私の妻にらんぼうをして、それを苦にして限界まで悩んだ妻は自殺してしまった! 東京でだ。私は奴らを殺してしまうために、あの組織に入り込んでいるんだ」
「ほんとうかな」
「なに」
「いい所にいると言ったが、そこまで行くのにかなりの『仕事』をしたはずだ。それは、愛星友の毒を受け入れたということではないか」
「そうとも言う。私はこれまでかなり手を汚したぜ。殺すかい」
「なめるなよ。私が殺すのは怪異だけだ。人間は、あまり痛め付けない」
「あまりか」
「あまり、だ」
しばらくの沈黙。
「ようし、ついてこい。蔵に案内してやる」
「蔵?」
「うち家の裏に蔵あるんだよ。いつもは絶対はいるなって言われてんだけどさ、なにがあんだろう」
「いいものがある」
照太郎の祖父はそう言い、彼を蔵まで連れて行った。
照太郎もその後をついていった。
「この蔵には地下があるんだ。建築のことを一から学んで、自分一人でコツコツ造ったものだから愛星友のれんじゅうにはバレていない、完全秘密の地下室よ」
「ほう」
照太郎の祖父は、召喚霊術で小鬼を召喚すると大きなタンスを持ち上げさせ、そこにある扉を指差した。
三人はその扉の奥に進んでいく。
天井から無造作にぶら下がる電球を灯すと、そこにあるものがあらわになった。
拳銃であった。刀もだ。
それがしこたま備えられてある。
弾もだ。
「こりゃいったいなんだ?」
「愛星友の製造所があるんだ。それを使って、個人的に使うためのものをチマチマと拵えていたんだ。まだれんじゅうにバレていない。お前はこれをどう使う」
「たいして使い勝手もよさそうではないので、まず私は使わない」
「そうかい」
「え、これ使わんの気おかしいわ。じゃあ俺使いたい」
「銃砲刀剣類所持等取締法違反が怖いねぇ」
「バレなきゃオッケーだろ」
「君はかなりアウトな人なんだなあ」
ところかわって、愛星友の新拠点。
めずらしく赤い和装をしたミコトを伴って、木戸は廊下を歩く。
ここ最近の異態肉彦・尾島青空の問題を解決するのに使った金を取り戻すために──あわよくば、追加の活動資金得るために、信者たちになにか偉そうに語ってやろうと考えていたところである。
人の心を掴むのに、特別な霊術などは必要ない。
偉そうに、上から目線で講釈を垂れればいい。
ただそれだけではいけない、というのはある。
時には反対意見にも耳を傾け、その意見を「それも正しい」「しかしそれに関しては」と話を続けてしまえばいい。
大抵バカが相手なので、それさえすれば、相手は「あの人は他とは違う」というふうになる。
それが終わると、今度は次の嫌がらせを考える。
「次はどういたしましょう」
「そうだな、次か。次は何をしようか。だって、夢の中作戦は失敗したんだもんなあ。もうなくないか?」
「では、先生自らが出るというのはどうでしょう」
「私自らが……? しかし、大丈夫かな。相手は自分で否定してはいるものの、うちの神様だろう。神性を持つ奴と戦うのは初めてだし、そもそも『天獄様』がどう言うか」
「じつは天獄様からのお許しは得ていますよ、先生」
「ほんとうに?」
「はい」
「なんか、用意がいいね」
「あなたの右腕ですので」
「ミコトくぅん」
「いきましょう。先生ならば大丈夫です。先生はとても強いのですから、あのような若造などというのは、一捻りにしてしまえることでしょう」
ミコトは少女のような優しげな声色で、そう言った。




