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ビカットマン  作者: 蟹谷梅児
15 変身
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58

「おっ。あった」


 彼は盛岡の図書館にいた。


 調べ物をしていて、昔の新聞をあさっていたのだ。


 そして、目的の記事を見つけた。


 北上市での事故をまとめたもので、それは「猪地」という人が轢かれてしまった交通事故である。


 その記事から地名を抜き出して、自前の地図に印をつけていく。


 それから、殺人事件を調べる。


 加賀美優心の親が殺されてしまったという事件で、それの事件現場の住所を調べ、地図に印をつける。


 犯人として捕まった男の名前を調べ、インターネットでその名前を調べると、地方の掲示板サイトに男の住所が掲載されていたので、これは良しと地図に印を付ける。


 それからもいろいろな類似する事件や事故を調べ、地図に次々と印をつけていく。


『これでなにかがわかるのかい?』

『なにもわからないよ、ただやってみたかったからやっていただけなんだ。しかし、見事にバラバラのところでやっていたらしいな』


 北上、花巻、金ヶ崎、奥州、西和賀、紫波、そして盛岡。


 見事にバラバラだった。


「疲れたな、そろそろ出ようか」


 地図を折りたたみ、懐にしまい込んで黄色のコートを羽織ると、彼は新聞をもとあった所に戻して、カウンターで暇そうにしていた司書に「ありがとうございました」と言い、外に出た。


 十二月二日、月曜日。


 もう冬の喉元までさしかかっている。


 風が吹くと彼の前髪が持ち上がった。


『ほんとうにお家帰らなくてもいいの?』

『ああ、いいんだ。私は異態肉彦だ。彼らのもとにいては迷惑だろうし、彼らも私のことを嫌っているのだろうとわかった』

『どうして?』

『私は肝心な時に動かない。そういう情けない奴を好く奴などいないだろう。一般的な〝普通〟を知ればすぐに分かる問題だよ』

『僕は君のこと好きだよ』

『ありがとう。ただ、君と彼らは違う。彼らはもともと普通の人間だったんだ。私のようなのは苦手に違いないよ』

『じゃあ、僕はずっと君のそばにいるよ』

『ありがとう。君がいてくれてよかったよ、閃光児』


 そうして歩き出したところで、「助けて」という声が聞こえた。


 彼はすぐにその声のした方に向かっていく。


 入り組んだ路地裏、不良だろう少年が大きな猿に詰め寄られている。


『あの大猿は愛星友とは無関係の怪異だろうね、しかし彼が危ない! 助けてあげないと!』

『そのとおりだ』


 彼はたちまちビカットマンになって、大猿を上空に蹴り上げた。


「あ、あんたは……!?」

「逃げなさい。ここは私が引き受ける」


 大猿はビカットマンを見据えると、壁を跳ねるようにして襲い掛かってくるが、ビカットマンは拳に光を蓄積させ、大猿の顔面を殴り潰す。


「殴撃」


 大猿が消えるのを確認すると、ビカットマンはすぐに変身を解除した。


『最近はビカットマンの身体の使い方もわかってきた』

『そうだね、弱い怪異なら一撃』


 それじゃあ行こうか、というところで先ほどの不良だろう少年から「待ってくれ!」と声をかけられた。


「なにか」

「さっきのはいったいなんなんだ!? あの大きい化け物は!? それにお前だって……あの赤いやつ! なんだよ!!」

「ハハ。なんだそんな事。なにも、君が気にすることではないんだよ。君は元の生活に戻りなさ〜い」

「いや……気になるだろ……」

「そうかい。仕方ない。ありゃ怪異だ。妖怪だとか幽霊だとかをそう呼ぶらしい。おそらくアレは妖怪のたぐいだね。……ん? しかし、気になってきてしまったぞ、君はなぜあのような怪異に襲われていたんだい。なにか心霊スポットでセックスするだとか、キッショいことでもやってしまったかい?」

「俺を犬かなんかだとか思ってんのか? やるわけねぇだろ。多分、心当たりはあるんだよ、多分。でも」

「ほう! ふむふむ、これは気になる。言ってみなさい」

「俺のじいちゃんがさ、愛星友っていう変なカルトにハマってる」

「ほう、それは」


 いけないことを聞いてしまった。

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