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「おっ。あった」
彼は盛岡の図書館にいた。
調べ物をしていて、昔の新聞をあさっていたのだ。
そして、目的の記事を見つけた。
北上市での事故をまとめたもので、それは「猪地」という人が轢かれてしまった交通事故である。
その記事から地名を抜き出して、自前の地図に印をつけていく。
それから、殺人事件を調べる。
加賀美優心の親が殺されてしまったという事件で、それの事件現場の住所を調べ、地図に印をつける。
犯人として捕まった男の名前を調べ、インターネットでその名前を調べると、地方の掲示板サイトに男の住所が掲載されていたので、これは良しと地図に印を付ける。
それからもいろいろな類似する事件や事故を調べ、地図に次々と印をつけていく。
『これでなにかがわかるのかい?』
『なにもわからないよ、ただやってみたかったからやっていただけなんだ。しかし、見事にバラバラのところでやっていたらしいな』
北上、花巻、金ヶ崎、奥州、西和賀、紫波、そして盛岡。
見事にバラバラだった。
「疲れたな、そろそろ出ようか」
地図を折りたたみ、懐にしまい込んで黄色のコートを羽織ると、彼は新聞をもとあった所に戻して、カウンターで暇そうにしていた司書に「ありがとうございました」と言い、外に出た。
十二月二日、月曜日。
もう冬の喉元までさしかかっている。
風が吹くと彼の前髪が持ち上がった。
『ほんとうにお家帰らなくてもいいの?』
『ああ、いいんだ。私は異態肉彦だ。彼らのもとにいては迷惑だろうし、彼らも私のことを嫌っているのだろうとわかった』
『どうして?』
『私は肝心な時に動かない。そういう情けない奴を好く奴などいないだろう。一般的な〝普通〟を知ればすぐに分かる問題だよ』
『僕は君のこと好きだよ』
『ありがとう。ただ、君と彼らは違う。彼らはもともと普通の人間だったんだ。私のようなのは苦手に違いないよ』
『じゃあ、僕はずっと君のそばにいるよ』
『ありがとう。君がいてくれてよかったよ、閃光児』
そうして歩き出したところで、「助けて」という声が聞こえた。
彼はすぐにその声のした方に向かっていく。
入り組んだ路地裏、不良だろう少年が大きな猿に詰め寄られている。
『あの大猿は愛星友とは無関係の怪異だろうね、しかし彼が危ない! 助けてあげないと!』
『そのとおりだ』
彼はたちまちビカットマンになって、大猿を上空に蹴り上げた。
「あ、あんたは……!?」
「逃げなさい。ここは私が引き受ける」
大猿はビカットマンを見据えると、壁を跳ねるようにして襲い掛かってくるが、ビカットマンは拳に光を蓄積させ、大猿の顔面を殴り潰す。
「殴撃」
大猿が消えるのを確認すると、ビカットマンはすぐに変身を解除した。
『最近はビカットマンの身体の使い方もわかってきた』
『そうだね、弱い怪異なら一撃』
それじゃあ行こうか、というところで先ほどの不良だろう少年から「待ってくれ!」と声をかけられた。
「なにか」
「さっきのはいったいなんなんだ!? あの大きい化け物は!? それにお前だって……あの赤いやつ! なんだよ!!」
「ハハ。なんだそんな事。なにも、君が気にすることではないんだよ。君は元の生活に戻りなさ〜い」
「いや……気になるだろ……」
「そうかい。仕方ない。ありゃ怪異だ。妖怪だとか幽霊だとかをそう呼ぶらしい。おそらくアレは妖怪のたぐいだね。……ん? しかし、気になってきてしまったぞ、君はなぜあのような怪異に襲われていたんだい。なにか心霊スポットでセックスするだとか、キッショいことでもやってしまったかい?」
「俺を犬かなんかだとか思ってんのか? やるわけねぇだろ。多分、心当たりはあるんだよ、多分。でも」
「ほう! ふむふむ、これは気になる。言ってみなさい」
「俺のじいちゃんがさ、愛星友っていう変なカルトにハマってる」
「ほう、それは」
いけないことを聞いてしまった。




