↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビカットマン  作者: 蟹谷梅児
14 復活
57/103

57

 少年の光る球体が空に飛び上がった。


「ようやく目が覚めたらしいな! 尾島くん!」

「すまなかった、閃光児。いけるか?」

「いけるけど、とりあえず君のなかに入りたいのだけれど……」

「ここは私の夢の中……ということだな」

「おちつかないね。雨、止ませたら?」

「いや、それはまだだ」


 彼は気配を追った。


 雨の中、走り出した!


 ビチャ! ビチャビチャ!


「いったいどこにむかおうというんだい?」

「私の中に怪異があることは確定なのだけれど、どこにいるのか分からないから、取り敢えずいそうなところを巡っている」

「なるほど、」

「いい手、なにかあるか?」

「ごめん、わからない」

「なら、足で稼ごう」


 神戯閃光児は彼のそういうところが好きだった。


 出会った頃からそうだった。


 誰かのために全力を出してしまう。


 なんの躊躇いもなく、人を救ってしまう。


 そういう彼だから、嫌な夢を無理矢理見せられたときは、腸が煮えくり返る気持ちだった。


 この降り注ぐ大豪雨は、神戯閃光児のそういう気持ちも汲んでいるのだろう。


 神戯閃光児と尾島青空はふたりでひとり。


 影響はされてしまう。


「…………」


 彼の心が弱っていることはわかっていた。


 しかし、自分にはどうしょうもないからとほとんど諦めて、ノータッチを貫いてしまっていた。


 彼は大して心のつよい人ではないのを、わかっていたのに。


「尾島くん」

「なにか?」

「ごめんね」

「なにが」

「君のこと、よく見えてなかった」

「そうかい」

「君のこと、特別な人間だと思ってた。力が強くて、僕の身体を気持ちよく使ってくれるから」

「そうかい」

「もう大丈夫、とは言い切れないけれど、それでも僕は君とこれからもビカットマンで有り続けたい。君が僕の力を君の思うように使える日が来るまで、僕は君の拳になる」

「そうか」

「僕は……」

「閃光児」

「……なに?」

「君と私が触れたあの日に、全部語り終えたろ」


 しばらくの沈黙。


「ああ」

「だろ」

「うん」


 身体と身体は深く混じり合っている。


 自分の身に宿った光と彼の心に宿った光が、混じり合った。


「いっしょに、おかしくなっちゃおう」



◆



 雨。


 ザアザアと降り注ぐ雨の中、彼はようやくそれの前に現れた。


 夢の中に現れ、悪夢に変えてしまう怪異。


 怪異は、まっすぐに彼を見据え、逃げようともせず……ただ、笑うばかりだった。


 人の頭蓋骨を身体に纏ったよう見た目。


 尻からはらわたがあふれ出している。


 両者、しばらく見つめ合い……そして、ほとんど同時に動き出した。


「異態肉彦よ死ね」

「やだよ」


 赤が世界全体に広がる!


 次の瞬間──現実世界、真っ赤に染まったモニターから怪異が飛び出してきた。


 それと同時に彼も目を覚まし、大きく息を吸い込み、ビカッという強い輝きとともに姿をビカットマンにした。


 ビカットマンは怪異を窓の方向に蹴飛ばした!


 バリィィ……ィィイイン……。


「尾島!」


 彼はその声に反応もせず、怪異に向かっていく。


 赤い生体装甲に黒いラインが入っている。


「君が私に見せた夢、ナイスだよ」


 ビカットマンは、言う。


「最近忘れかけていたことを思い出すことができた。……そうだ、私は親不孝者で、兄貴としても失格だ。ひとりのうのうと生きて、これからも生き続ける。私は何もできない。私には何もない。思い出させてくれてどうもありがとう。それに、幸せな夢だった。見たいものが見れた。一瞬だけでもだ。だから感謝をしてやる。イエスおよびノーではないことが分かるなら、きっとね。けれど君は、まだ思い出せなかったんだ。私が異態肉彦だということの、ほんとうの意味を。私は異態肉彦だ。尾島青空じゃない。異態肉彦は……神様なんだ。それを忘れた君は、安易に私の心に侵入し、私の心を傷つけた。おかげでもう立ち直れないと思う。私はもう立ち直れないと思う。死にたいほど泣く。二度と君に今日がないようにしてやる」


 ビカットマンは言う。


「蹴撃」


 パチッ、という音がして、次の瞬間、窓ガラスがすべて割れた。


 次に足元にあった彼の影がパッと消えてしまい、風が起こり、閃光。


 閃光の後、光の線が空中に一本綺麗に通り、怪異が爆発した。


「尾島……? 尾島!!」


 朝飛はすぐに、腕に刺さったガラス片も気にせずに、窓から身を乗り出したが、どこにも彼の姿はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。