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少年の光る球体が空に飛び上がった。
「ようやく目が覚めたらしいな! 尾島くん!」
「すまなかった、閃光児。いけるか?」
「いけるけど、とりあえず君のなかに入りたいのだけれど……」
「ここは私の夢の中……ということだな」
「おちつかないね。雨、止ませたら?」
「いや、それはまだだ」
彼は気配を追った。
雨の中、走り出した!
ビチャ! ビチャビチャ!
「いったいどこにむかおうというんだい?」
「私の中に怪異があることは確定なのだけれど、どこにいるのか分からないから、取り敢えずいそうなところを巡っている」
「なるほど、」
「いい手、なにかあるか?」
「ごめん、わからない」
「なら、足で稼ごう」
神戯閃光児は彼のそういうところが好きだった。
出会った頃からそうだった。
誰かのために全力を出してしまう。
なんの躊躇いもなく、人を救ってしまう。
そういう彼だから、嫌な夢を無理矢理見せられたときは、腸が煮えくり返る気持ちだった。
この降り注ぐ大豪雨は、神戯閃光児のそういう気持ちも汲んでいるのだろう。
神戯閃光児と尾島青空はふたりでひとり。
影響はされてしまう。
「…………」
彼の心が弱っていることはわかっていた。
しかし、自分にはどうしょうもないからとほとんど諦めて、ノータッチを貫いてしまっていた。
彼は大して心のつよい人ではないのを、わかっていたのに。
「尾島くん」
「なにか?」
「ごめんね」
「なにが」
「君のこと、よく見えてなかった」
「そうかい」
「君のこと、特別な人間だと思ってた。力が強くて、僕の身体を気持ちよく使ってくれるから」
「そうかい」
「もう大丈夫、とは言い切れないけれど、それでも僕は君とこれからもビカットマンで有り続けたい。君が僕の力を君の思うように使える日が来るまで、僕は君の拳になる」
「そうか」
「僕は……」
「閃光児」
「……なに?」
「君と私が触れたあの日に、全部語り終えたろ」
しばらくの沈黙。
「ああ」
「だろ」
「うん」
身体と身体は深く混じり合っている。
自分の身に宿った光と彼の心に宿った光が、混じり合った。
「いっしょに、おかしくなっちゃおう」




