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ビカットマン  作者: 蟹谷梅次
14 復活
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 拳を振るう。


 殴りつける。


 何処までも強く。


 羽交い締めにされて、顔面を殴りつけられれば、その拳を快く受け入れてやり、ついでに腕にかみついた。


 〝ごめんなさい〟


 背後に回って思い切り蹴りつけ、顔面から倒れたところを蹴飛ばす。


 息が切れたら容赦なく大きく息を吸い込んで、身体が悲鳴を上げるのはガン無視で、とにかくそこにいる敵だけを潰していく。


 〝ごめん〟


 いつかこういう事をしなくても済む世界は来るのかな。


 来てほしいな、きっと来るよね。


 昔から、本当に大昔から自分の身体はどこまでも頑丈だった。


 きっと人間じゃないのだろうなと思ってしまうほどに、傷はすぐに治るし、人に殴られた程度じゃアザにはならない。


 そんなことが、いまは武器になってしまう。


 コンプレックスが武器になってしまう!!


 これはもう、絶望以上の絶望だ!


 いま、自分の心が痛み、泣き出していることも理解できてしまった。


 誰かを救いたい。


 今、まさにここで感じた心が、本音であるように、意地でも本音にしてみせる。


 過去は消えない。


 自分ばかりが生き残り、自分はのうのうと生きていて、家族を見捨てた醜い男。


 過去は消えてくれない。


 それでいい。


 自分は罪人でいい。


 けれど、この胸の中に渦巻く苦しみや、そういったたぐいの感情をほかの誰かに味わってほしくないと思うこの心は本物である。


 涙を拭い、大きく息を吸い込んで、震える脚を無理やり動かし、飛び蹴りを食らわせて。


 パンチ、キック。


 パンチ、キック!


 パンチ、キック!!


 どのように殴れば……どのように蹴れば……よりつよいダメージを相手に与えることができるのか、理解していく。


 身体が戦うためだけの暴力兵器になっていく。


 絶望が希望を伴って、現実を凌駕していく。


 刃物を突き刺されても、拳銃で撃たれても……痛いだけだから……身体は意地でも動かし続ける。


 痛く、辛く、悲しくて。


 痛む、辛い、パンチとキック。


 心など捨ててしまえばいい。


 壊れた先から切り捨てて、いつでも身体だけは動くようにしないとならない。


 自分がいつまでも被食者でいられるのは、贅沢である。

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