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孤独だった。
孤独になった。
自分のせいで孤独になった。
彼らの言うとおりだ、自分はあんなに大切だと言っていた家族を見殺しにして、逃げ出した。
それは、とても卑怯なことだと理解できる。
涙が止まらない。
泣くべきでないことくらい理解できているのに、それでも、もう自分に寄り添ってくれる人が誰もいないとわかるのは、つらかった。
「助けて」と、言ってもらえたのに。
自分は何もせず、ただ突っ立っているだけだった。
嘔吐。
嘔吐。
死にたいのに、死ねない。
自分の身体は異常なまでに頑丈で、死のうとしても、すぐに傷は治るし、首をくくってもただ数日死ぬほど苦しいだけで死ねなかった。
助けてほしい。
もう限界だから、誰でもいいから助けてほしい。
朝飛、優心、頼むからどうか頼むからもう一度だけ手を取ってほしい。
助けてもらったら、もうかかわらないから。
「誰か……」
助けて、とつぶやこうとしたその瞬間だった。
遠くで「たすけて」と聞こえた。
彼の身体は動いた。
いまさら何をしようというのか、とガタガタになった心が叫ぶけれど、彼は「たすけて」という声が聞こえてくるたびに、「いかなくては」という気持ちになった。
あの雨の向こうに。
──〝助けを求められたならば、何も言わずに救うもの〟
彼は走り出していた。
感覚に身を任せて、転びもせずに走り続けて、バラバラに壊れている祠を踏みつけ、細枝で出来たような柵を蹴飛ばした。
そこには不気味な男たちが数十人といて、光る球体を持つ少年を寄って集っていじめていた。
少年は、まるでそれを守るように球体を抱きしめて、地面に蹲っている。その姿を見て、どうしようもなく守りたいと思う。
だから、拳を握る。
だから、拳を振るった。
自分の拳が男の顔面を殴り抜く時、罪悪感だとか、嫌悪感というものがわき上がって、顔が怒りや悲しみに歪む。
いまはもう心を分解することもできなくて、ストレートに感情が顔に出てしまう……誤魔化せない。
今はそれを気にしているときではない。
殴り抜き、最短で少年を助けに行く。
自分にできるそれが、自分のやるべきことだと理解する。
どんなに、辛く、苦しく、惨めで、どんよりと、していても。




