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ビカットマン  作者: 蟹谷梅次
13 夢魘
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 朝飛とはともに夏祭りにもいった。


 普通の人間がしているような、普通の夏を過ごす。


 その夏は、去年や、その前の年の夏なんかよりもよっぽど楽しかった。


 地区の夏祭りのあとも、夏休みの期間にはいるといろいろな祭の行事があるので、一緒にいきたいと思った。


 自分ばかりがこんなに気分を上げてしまって、なんだか恥ずかしいな、とも思いながら。


 普段、隣で一緒に笑ってくれている彼はどう思っているのだろう。


 楽しいと、思ってくれていればいいのだけれど。


 楽しい夏は、ほんとうにたのしい!


 うれしい!


 自分にとって、あまりにも都合が良すぎる世界。


 何気ないことを言い合って、たまにコントのような会話をして、たまに何も話さないままでいて。


 そういう日常があまりにも楽しい。


 そうして、生活しているうちに加賀美優心という他クラスの同級生とも友人になった。


 彼は頭に血が上ると一辺倒になりがちだけれど、その名のとおりに優しい心を持っている善人だった。


 そういう人と友人になれたのも、彼にとってはうれしいことだった。


 次第に、彼の心にひとつの思いがやどりはじめた。


 自分を抜きにして、この二人を見ていると、よく馴染むなあ──というような考えだった。


 優しい朝飛と優しい優心の二人が並んでいるのは、彼にとってとても輝かしい光景だった。


 嫌われ者の自分がこのなかにいていいとは思えなかった。


 次第に彼は二人との接触を避けるようになっていった。


 すると、二人も彼をさけるようになった。


 いつも二人でいる。


 マンガ・アニメ研究部のれんじゅうといるときも、後輩の女子たちと楽しそうに話をしているときも、ふたりはいつもいっしょだった。


 彼は、その光景を見るのがたまらなく好き。


 平和の象徴であるように思えた。


「ああ、これが私の守るべき世界なんだな……」


 そこまでつぶやいて、ふと思う。


 守る?


 なにから?


 …………。 


 まぁ、いいか。


 たのしいんだし、うれしいんだし。


 ある日、家が燃えた。


 彼の家は白いスーツを着た男に放火された。


 全員入院する羽目になったが、幸い命に関わる怪我は、誰もしていなかった。


 この放火事件をきっかけにして、家族を蔑ろにしていた今までのことを恥じた彼は、妹と交流を深め、母を労り、父を敬うようになった。


 そんな彼を、家族も受け入れてくれた。


 新しく再スタートをきった。


 家を再建するまでの間、アパートで暮らすことになったが、それも楽しい思い出にすることができた。


 違和感。


 …………。


 まぁいいか。


 たのしいし。

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