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老婆は逮捕された。
なんだかよくわからない罪状だったが、逮捕されてよかったと思った。
談話室に連れて行かれて、「どうどう」と宥められていた彼のもとに、志津子がやってきた。
「お兄ちゃんの事、消しちゃわないんですか」
「ああ。消さない」
「でも……」
「理由はふたつ。一つ、君の兄は何も悪くない。妹を守ろうとした結果、あのようなことをしてしまった。それを理解すれば、誰も君の兄に対して嫌な思いなんか抱きやしない。私がそれを許さない。そして二つ。これが大きいな」
彼は、志津子の頭にポンと手を置き、へたくそに微笑みかけた。
「私は君たちの味方だ」
そうしていると、「あーっ」という声がした。
「ミスターくんじゃーん!」
「おや、猫野洋子さんではないですか。どうしました」
「母親のお見舞い。ミスターくんは?」
「似た感じです」
「新沼くんもやっほー。君たちいつも一緒にいるね」
「まぁ、いつも一緒にいるんで」
「ね」
「青春っていいね。ミスターくんも青春するんだね」
「私も学生ですので」
学生がこういう事してんのおかしいよなあ、とあらためて思いながら優心は缶コーヒーを呷った。
『こいつ、異態肉彦じゃなかったらどういう生き方してたんだろう』
たとえば、はじめから尾島家の子に生まれていたら。
そういう事を考えてみた。
『とりあえずウチにあがりこんでくることはなかったろうな』




