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ビカットマン  作者: 蟹谷梅次
12 苛烈・2
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 老婆は逮捕された。


 なんだかよくわからない罪状だったが、逮捕されてよかったと思った。


 談話室に連れて行かれて、「どうどう」と宥められていた彼のもとに、志津子がやってきた。


「お兄ちゃんの事、消しちゃわないんですか」

「ああ。消さない」

「でも……」

「理由はふたつ。一つ、君の兄は何も悪くない。妹を守ろうとした結果、あのようなことをしてしまった。それを理解すれば、誰も君の兄に対して嫌な思いなんか抱きやしない。私がそれを許さない。そして二つ。これが大きいな」


 彼は、志津子の頭にポンと手を置き、へたくそに微笑みかけた。


「私は君たちの味方だ」


 そうしていると、「あーっ」という声がした。


「ミスターくんじゃーん!」

「おや、猫野洋子さんではないですか。どうしました」

「母親のお見舞い。ミスターくんは?」

「似た感じです」

「新沼くんもやっほー。君たちいつも一緒にいるね」

「まぁ、いつも一緒にいるんで」

「ね」

「青春っていいね。ミスターくんも青春するんだね」

「私も学生ですので」


 学生がこういう事してんのおかしいよなあ、とあらためて思いながら優心は缶コーヒーを呷った。


『こいつ、異態肉彦じゃなかったらどういう生き方してたんだろう』


 たとえば、はじめから尾島家の子に生まれていたら。


 そういう事を考えてみた。


『とりあえずウチにあがりこんでくることはなかったろうな』

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